上 下
159 / 805
本編

107

しおりを挟む
「エドワルド殿なら解るだろうけど、そんな家柄だから、王族との縁談は極力持ち込ませないようにしていたんだよ。まさか、あんな風に元王子のエドワルド殿が、縁談を持って来るとは思って無かったからね」

「ずっと、絶対にリラ嬢を手に入れる為に、どうすれば確実に縁談を成立させるか考えていましたが、上位貴族であり、陛下の臣下であるなら、絶対に誰も断れない方法、王命にするしか無かったのですよ。他の方法だと、ジーン殿に断られる可能性が少しでも有ったので避けました。エヴァンス家に、こういう役割があったとは知りませんでしたが、他の方法だと断られる可能性が高かったと言う事なので、王命にして良かったと心底思いましたよ」


 まぁ、そうまでしてリラを手に入れたかったみたいなので、例外として許されたのだ。もし、これが利用する為とかで有れば、エドワルドは暗殺されていたかも知れない。このリラ大好きな兄の手で。


「ううっ、嬉しいです。エドワルド様」


 真っ赤な顔をエドワルドに擦り付けるリラは、猫がスリスリと寄り付いてる様な感じに思えて堪らない。

(猫好きと言う訳では無いが、この猫なら是非持ち帰りたい!!)


「リラが可愛過ぎるのは知ってるけど、持ち帰っちゃ駄目だからね?」


 悶えてるエドワルドを見て、取り敢えずジーンは突っ込んでおく。エドワルドがリラを持ち帰らないように。


「それとさっきも言ったように、夕食までの時間の間に、リラはエヴァンス家がブラックリストに入れてる人物を、上位から順に、エドワルド殿に教えて差し上げなさい。名前だけより顔も分かれば覚え易いからね」

「分かりましたわ兄様。エドワルド様、我が家の図書室に少しだけ寄らせて下さい。貴族名鑑は全てそこに保管されているのです」


 リラはエドワルドを連れて図書室へと向かう事にした。

 その図書室は、エドワルドにとって、興味深い本で埋め尽くされていた。

(凄いな、ここは。王立図書館には無く、それでも読みたかった本が、多数ある。王立図書館では、その貴重さ故に、閲覧制限が掛かる類いの物ばかりだ)

 リラが本を熱心に眺めるエドワルドを見て、エドワルドに声を掛ける。


「貸し出しは出来ませんが、エドワルド様なら直ぐに許可が出ますよ。ここは、父様か兄様が許可を出した者ならば出入り自由ですから。……でも、本ばかりで無く、少しはわたくしの方も構って下さいね?」


 リラはそう言うが、エドワルドがリラを放置し続ける事は無いだろう。

(本よりも興味を涌かせる対象だと言う事を、未だにリラは理解していないのだな。まぁ、その内気付く事になるだろう)


「私は本よりも、リラの方が魅力的ですから。ここに来る時は、当然リラも、一緒にいてくれますよね?」


 エドワルドがそう言うと、リラは嬉しそうに笑った。
しおりを挟む
感想 2,440

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

初恋の兄嫁を優先する私の旦那様へ。惨めな思いをあとどのくらい我慢したらいいですか。

梅雨の人
恋愛
ハーゲンシュタイン公爵の娘ローズは王命で第二王子サミュエルの婚約者となった。 王命でなければ誰もサミュエルの婚約者になろうとする高位貴族の令嬢が現れなかったからだ。 第一王子ウィリアムの婚約者となったブリアナに一目ぼれしてしまったサミュエルは、駄目だと分かっていても次第に互いの距離を近くしていったためだった。 常識のある周囲の冷ややかな視線にも気が付かない愚鈍なサミュエルと義姉ブリアナ。 ローズへの必要最低限の役目はかろうじて行っていたサミュエルだったが、常にその視線の先にはブリアナがいた。 みじめな婚約者時代を経てサミュエルと結婚し、さらに思いがけず王妃になってしまったローズはただひたすらその不遇の境遇を耐えた。 そんな中でもサミュエルが時折見せる優しさに、ローズは胸を高鳴らせてしまうのだった。 しかし、サミュエルとブリアナの愚かな言動がローズを深く傷つけ続け、遂にサミュエルは己の行動を深く後悔することになる―――。

冷徹義兄の密やかな熱愛

橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。 普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。 ※王道ヒーローではありません

夫の書斎から渡されなかった恋文を見つけた話

束原ミヤコ
恋愛
フリージアはある日、夫であるエルバ公爵クライヴの書斎の机から、渡されなかった恋文を見つけた。 クライヴには想い人がいるという噂があった。 それは、隣国に嫁いだ姫サフィアである。 晩餐会で親し気に話す二人の様子を見たフリージアは、妻でいることが耐えられなくなり離縁してもらうことを決めるが――。

継母の品格 〜 行き遅れ令嬢は、辺境伯と愛娘に溺愛される 〜

出口もぐら
恋愛
【短編】巷で流行りの婚約破棄。  令嬢リリーも例外ではなかった。家柄、剣と共に生きる彼女は「女性らしさ」に欠けるという理由から、婚約破棄を突き付けられる。  彼女の手は研鑽の証でもある、肉刺や擦り傷がある。それを隠すため、いつもレースの手袋をしている。別にそれを恥じたこともなければ、婚約破棄を悲しむほど脆弱ではない。 「行き遅れた令嬢」こればかりはどうしようもない、と諦めていた。  しかし、そこへ辺境伯から婚約の申し出が――。その辺境伯には娘がいた。 「分かりましたわ!これは契約結婚!この小さなお姫様を私にお守りするようにと仰せですのね」  少しばかり天然、快活令嬢の継母ライフ。 ■この作品は「小説家になろう」にも投稿しています。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

処理中です...