氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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本編

108

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 リラが貴族名鑑を取り出すと、透かさずエドワルドは奪うようにそれを持つ。


「確かに貴族名鑑は重いですが、わたくしでも運ぶ事は出来ますよ?」

「私を客人扱いしなくても良いよ。半年後には夫婦になっているのだから」


 その言葉に、リラは驚く。


「はっ、半年ですか?!えっ、あの、ですが、普通は一年以上先になります、よ、ね?」

「そうですね。通常ならばそうですが、私達の結婚は王命になるので、最短半年で結婚出来ます。本当は、結婚許可証が有るので、直ぐにでも結婚、といきたい所ですが、下位の貴族なら未だしも、私は公爵ですからね。どう急いでも、半年は掛かってしまいます。私としては、それでも長いと思ってしまいますから、リラが嫌でも、これは譲れないよ」


 リラは、少し考えながらも言葉を紡ぐ。


「……わたくし、嫌ではありません。それ程までにエドワルド様がわたくしを望んで下さると言う事でしょう?だから、嬉しいです」


 本当に嬉しそうに笑うリラが可愛くて堪らない。押し倒したくなる程に。


「良かった。では、サロンに戻ってブラックリストの者達を教えて頂けますか?」


 二人切りは理性が持たない気がするので、早々サロンへと向かう。

 ソファーに並んでリラの説明を聞きながら、心底驚く。何せリラはページ数まで口にしているのだ。

 貴族名鑑は、毎年同じページとは限らない。亡くなられる者もいれば、デビューで追加される者もいる。その為毎年更新される物だから、ページ数で覚える事は出来ないのだ。

 それなのに、リラは名前の次にページ数を言い、それが一度も間違える事無く、その上でその者の経歴、ブラックリストにされた理由等を説明するのだ。


「もしかして、リラは毎年貴族名鑑を覚え直しているの?」

「?覚え直すと言うのは少し違いますわ?わたくし、今までに出た貴族名鑑を年代順に覚えていってるだけですから。年代とページ数を言って頂ければ、誰が載っているのかお教え出来ますわよ?」


 リラは首を傾げながらも当然のように言う。


「ああ、リラ嬢ちゃんのそれ、エヴァンス家の中で時折産まれる類いらしいぞ?個々に寄って違うらしいが、リラ嬢ちゃんは記憶能力がすこぶる高いらしい」


(これは……余計他所に出したく無いだろう……。利用価値が高過ぎる……)

 エドワルドは思わず眉間に皺を寄せていた。
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