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本編

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「それと……リラの夫になる事が確定してるから言うけど、エヴァンス家は他家と違い、特殊な家柄なんだよ。これは国王にしか知られていない事だけど、実はエヴァンス領は、ディーランこの国から独立出来るぐらいの資金と体制を、昔から持っているんだ。その為、屑や馬鹿が王位を継ぐようなら、この国から独立して、敵国として立ちはだかると言う誓約を、歴代の国王陛下と交わしている。だから、国王陛下は知ってるから、エヴァンス家の者達の怒りは買いたく無いんだよ。それなのに、こんな縁談を持ち込んで来たから驚いたけどね。エヴァンス家は王家の見張り役と言った家柄なのになぁって」


 ジーンの言葉に驚くエドワルド。


「持ち込んだのがエドワルド殿だったから、知らなくて当然だけど、エヴァンス家はそういう家柄なんだよ。公爵がこの座に就いてないのは、身内だからと判断が狂ってはいけないから。国王陛下にしか知られていないのは、エヴァンス家を利用しようとする輩が出て来ないようにしてる為。因みに王子の立場では王太子でも教えられず、戴冠した後に歴代の国王との誓約書の名前の後にサインをさせられて知るんだ。だからこっちは極力他家に出さないように厳選に厳選を重ねた婿を取ろうとしていたってのに、とんだ番狂わせだよ。王家が望むなんて、こちらを懐柔しようとしての行動かとまで疑ったぐらいだからね」

「……それは……申し訳なかった」

「まぁ、エドワルド殿を見ていれば、心底リラに惚れ込んだってだけみたいだったから、少し様子見はさせて貰っていたけれど、バラした方がエドワルド殿の負担も減らせそうだからね。エヴァンス家の本来の役割は、王家の見張りと、王家に仇なす屑や馬鹿の清掃。エヴァンス家の者達は、子供の頃からそう教えられているからね」


 ふと、エドワルドは抱き締めたままのリラを見る。


「リラもそう教えられていたのか?」

「わたくしは女ですから、役目は与えられていませんが、役割を知ったのは七才の誕生日です。兄様のサポートぐらいはしたいと、頑張って本を読んでいったのですが、逆に本の魅力に取り付かれてしまいました」


 照れたように、はにかむリラが無性に可愛い。リラの本好きは、ここが原点だ。

(っっ~~~!!!可愛過ぎるっ!!このリラが手に入るなら、片棒を担いだとしても構わない!絶対に手離せないのだから、今更だ!寧ろ、私がエヴァンス侯爵令嬢と言った時の兄上の複雑そうな表情の意味がよく解った。あれは悪評高いと言うだけでなく、エヴァンス家の裏を知っていたからだ!)

 結婚出来なければリラを拐うとまで言った時、アレクシスが物凄く怯えていた理由も、エドワルドは悟った。



*****

 ※実は、7のジーン視点で、ジーンが、どこまで気付いてる?や、何の思惑だ、と思っていたのは、この役割にエドワルドが気付いたのかも知れないと焦った為です。
 エドワルドはそこまで気付いてる所か、単にリラにベタ惚れしてただけですが、ジーンは唐突過ぎる縁談に相当焦ったようです。
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