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本編

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 アウラ地方の防衛戦は、どちらかと言えばあまり有名では無い。何故ならその当時、防衛戦が起こった数日後に、大規模な戦闘がもう一度起こったからだ。この国の多くの貴族はその戦闘の方が印象的だった為、アウラ地方の防衛戦を知らない者達が多い。

 勿論、王族ならきっちり把握している史実だが、騎士家系の子息なら未だしも、学院等通わない令嬢が知っているのはとても珍しい事だった。

 この国では、男は王立学院に通うが、女は家庭教師を雇い、勉学よりも花嫁修業と言った事に力を注ぐのが一般的だ。

(取り柄が無い所の話では無いのだがな。エヴァンス家が隠したがるのも頷ける。多分、他国の王族に嫁がせても文句の出ない、利用価値の高い令嬢だ。ジーン殿が仲の悪い振りをしてまで守っていたのも当然だ。だが、彼女は私の物だ。誰にも利用させないし、誰だろうと奪わせない)

 エドワルドの、リラに対する執着は増すばかりだ。


「ああ、陛下が会場入りをしたようだ。リラ嬢、行こう。アレクシス陛下兄上と会ってくれるね?」

「勿論ですわ」


 エドワルドはリラを連れて兄王のいる場所へと向かう。


「陛下、結婚をお許し下さり有難う御座います。こちらが私の婚約者でリラ=エヴァンス侯爵令嬢です」

「初めまして国王陛下。ジルギリス=エヴァンス侯爵の娘、リラ=エヴァンスと申します。以後お見知り置きを」

「ああ、君がエヴァンス侯爵令嬢か。ご存知の通り、私がアレクシス=ディーラン、この国の国王であり、そこにいるエドワルドの兄だ。その……急な縁談で悪かったと思うが、これも貴族の務めと諦めてくれ」


 エドワルドの脅しに屈した後ろめたさもあるのだろう、リラから少し目を逸らすアレクシス。


「わたくしは、エドワルド様で良かったと思っていますが」


(他国に嫁げなんて言われていたら、お父様や兄様……マーウおじ様がとんでもない行動に出そうですもの。国内で良かったと思うべきですわね)

 無表情のまま、一人納得しているリラだが、無表情であるが故に、何を考えているのか分かり難い。本心なのか、上辺なのか、アレクシスには推し測る事は出来ない。


「大丈夫です、陛下。私は何が有ってもリラ嬢を逃がしませんし、譲る気もありませんから」


 にっこり言い切るエドワルドを見て、この前と言い、誰なんだお前は?!と、本気で思うアレクシス。


「私のリラ嬢に手を出そうとする者達は、私が地獄を見せてやります。邪魔者達は、一人も残さず消しますから、安心して下さいね」


 後半はリラに、甘く優しい笑顔を向けながら言うエドワルドに再度アレクシスは思う。

(本当に誰だ?!お前……?!!)



*****

 ※アレクシス陛下、エドワルドの変貌振りにドン引きしてます(笑)
 そして、周りにいた他国の王族含む貴族達も、同じ心境だと思います!
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