氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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本編

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「……エドワルド殿がそう仰るのなら、反対はしませんよ。お勧めは出来ませんが」
[訳=エドワルド殿が本気なら、多少がっついても構わないが、まだ子供は作るな。純潔は一応守ってくれ]


 エドワルドはジーンの言いたい事を正しく読み取り、リラはジーンが婚約の最終確認をしているだけだと思っている。

(ジーン殿から、ある程度のお許しが貰えたのは喜ばしいな。ならば帰りの馬車で、少しぐらい味見をしても良いだろうか?さすがに行きはドレスが乱れてしまうし、彼女の蕩けた後の色香を、欠片だろうと他の男に晒してしまうのは嫌だから、我慢をしていたのだ。そうと決まれば、面倒事もやる気が出る。邪魔者達を早々黙らせ見せ付けて、リラ嬢との時間を楽しもう)

(わたくしが、平凡過ぎるからお兄様が心配して下さっているのね)

 リラはジーンが別の意味を含めているとは思わずに、普通に納得している状態だ。

 勿論ジーンは、リラがそう捉えると解っていての言動だが。


「リラ、呉々くれぐれもエドワルド殿の迷惑にならないように。エヴァンス家の名を汚さぬよう、言動を慎め」
[訳=リラ、エドワルド殿に全てを任せてはいけないよ、勘違い女共は完膚無きよう叩き潰しなさい。ただし、エヴァンス家の名を貶められないように王族や公爵相手は程々にね]

「分かっておりますわ、お兄様。ですが、礼儀を知らぬ者にまで、礼儀を尽くすような事をすれば、エヴァンス家その物が見下されてしまいます。それで宜しいのですわよね?」
[訳=分かっておりますわ、お兄様。ですが、いくら王族や公爵であっても、エドワルド様やエヴァンス家を貶めたりする方には礼儀を思い出して頂きます。それで宜しいのですわよね?]

「いいだろう、精々頑張るといい。私は手を貸さないからな」
[訳=勿論良いよ、後始末は任せなさい。私は夜会中は、ずっと見守っているから]


 ジーンとリラは無表情で淡々と言い合うが、二人は互いの解釈を、一言一句間違えずに正確に読み取る。さすが、恋情は無いものの、想い合う兄妹だ。

 エドワルドは、二人の家での仲の良さを見せ付けられているから、正しい解釈を完璧とまではいかないが読み取れている。しかし、他の者達には、嫌味の応酬としか聞こえない発言だろう。

(これは確かに、仲が悪いと誤解するだろうな。二人の本来の関係性を知らなければ、これが見せ掛けとは誰も思うまい。私でさえ、外での二人の言い合いを見た事が無かった為に、見せ掛けじゃないかと疑えたのだ。これを最初に見ていれば、もしかしたら仲が良いのかも知れないなんて、欠片も思わなかったかも知れない)

 それ程に、二人の雰囲気が険悪に感じてしまうのだ。

(ある意味羨ましい。互いを信頼していなければ、疑惑を持たれ、ここまで言い合えないだろうから)

 エドワルドは少し、疎外感を感じて羨ましくなった。
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