氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

文字の大きさ
94 / 805
本編

42

しおりを挟む
「……エドワルド殿がそう仰るのなら、反対はしませんよ。お勧めは出来ませんが」
[訳=エドワルド殿が本気なら、多少がっついても構わないが、まだ子供は作るな。純潔は一応守ってくれ]


 エドワルドはジーンの言いたい事を正しく読み取り、リラはジーンが婚約の最終確認をしているだけだと思っている。

(ジーン殿から、ある程度のお許しが貰えたのは喜ばしいな。ならば帰りの馬車で、少しぐらい味見をしても良いだろうか?さすがに行きはドレスが乱れてしまうし、彼女の蕩けた後の色香を、欠片だろうと他の男に晒してしまうのは嫌だから、我慢をしていたのだ。そうと決まれば、面倒事もやる気が出る。邪魔者達を早々黙らせ見せ付けて、リラ嬢との時間を楽しもう)

(わたくしが、平凡過ぎるからお兄様が心配して下さっているのね)

 リラはジーンが別の意味を含めているとは思わずに、普通に納得している状態だ。

 勿論ジーンは、リラがそう捉えると解っていての言動だが。


「リラ、呉々くれぐれもエドワルド殿の迷惑にならないように。エヴァンス家の名を汚さぬよう、言動を慎め」
[訳=リラ、エドワルド殿に全てを任せてはいけないよ、勘違い女共は完膚無きよう叩き潰しなさい。ただし、エヴァンス家の名を貶められないように王族や公爵相手は程々にね]

「分かっておりますわ、お兄様。ですが、礼儀を知らぬ者にまで、礼儀を尽くすような事をすれば、エヴァンス家その物が見下されてしまいます。それで宜しいのですわよね?」
[訳=分かっておりますわ、お兄様。ですが、いくら王族や公爵であっても、エドワルド様やエヴァンス家を貶めたりする方には礼儀を思い出して頂きます。それで宜しいのですわよね?]

「いいだろう、精々頑張るといい。私は手を貸さないからな」
[訳=勿論良いよ、後始末は任せなさい。私は夜会中は、ずっと見守っているから]


 ジーンとリラは無表情で淡々と言い合うが、二人は互いの解釈を、一言一句間違えずに正確に読み取る。さすが、恋情は無いものの、想い合う兄妹だ。

 エドワルドは、二人の家での仲の良さを見せ付けられているから、正しい解釈を完璧とまではいかないが読み取れている。しかし、他の者達には、嫌味の応酬としか聞こえない発言だろう。

(これは確かに、仲が悪いと誤解するだろうな。二人の本来の関係性を知らなければ、これが見せ掛けとは誰も思うまい。私でさえ、外での二人の言い合いを見た事が無かった為に、見せ掛けじゃないかと疑えたのだ。これを最初に見ていれば、もしかしたら仲が良いのかも知れないなんて、欠片も思わなかったかも知れない)

 それ程に、二人の雰囲気が険悪に感じてしまうのだ。

(ある意味羨ましい。互いを信頼していなければ、疑惑を持たれ、ここまで言い合えないだろうから)

 エドワルドは少し、疎外感を感じて羨ましくなった。
しおりを挟む
感想 2,440

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...