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本編

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 ジーンはそのまま見向きもせずに立ち去り、エドワルドはリラを促しその場から移動をする。

 その後ろを歩くレベッカを連れて、エドワルドに用意された休憩室へと向かい、中へと入る。ここには、エドワルドが許可した者しか入れないし、他の休憩室からは遠く離れている為、間違えて入った等の言い訳は許されないし、腕の立つ王宮騎士も控えている。

 その上、防音も優れている為、情事にふけってもその最中にバレる事はないが、見るからに若いレベッカの前でする気は起きない。キスぐらいまでなら、いくらでもするが。

 それに、結婚した後ならばレベッカに席を外させれば良いだけだが、未婚だと言うのにレベッカに席を外させ、こんな場所で味見等をした場合、それこそリラの身持ちが悪いと思わせてしまうような物だ。匂いが残れば勿論、香水を振り撒いても怪しまれる事だろう。何より、エドワルドは、喩え騎士であろうとリラの匂いを嗅がせる気はない。

 喩えジーンとリラの仲の良さに、嫉妬して居ようともだ。


「そう言えば、その荷物は?」


 レベッカの手にある大きな荷物を見て声を掛ける。


「これですか?一応ドレス一式と、メイク道具です。後、公爵様の衣服も。以前に一度、激昂げっこうした令嬢がリラお嬢様に飲み物を掛けようとした事がありまして、勿論リラお嬢様は回避なさったのですが、それ以来、念の為に持ち込んでおります。と言ってもリラお嬢様は身軽で、ある程度の護身術も習われておいでなので、使う事はありませんでしたが」

「さすがにそんな事にはならないと思うが……私のまで揃えてくれたのか」

「リラお嬢様のご指示です。万が一巻き込まれて被害に合われでもしたら大変だからと」


 エドワルドは、ジーンの物を用意したのだろうと思っていた。


「さっ……サイズはクルルフォーン邸に問い合わせをしましたので、大丈夫な筈ですわ!その……いつも贈り物をして頂いているので、わたくしからもと思いまして……。うっ、受け取って頂けますか?」


 家を出てはいけないと言われていた為、使用人達に頼んで、エドワルドがいつも仕立てている仕立て屋の場所まで聞いて、仕立て屋を連れて来て貰ったのだ。

 色々と注文を付け、そして出来上がったのが昨日の朝、リラの手元に届いたばかりだ。


「……見せて頂いても?」


 頬をほんのり染めたリラの頷きを確認してから、服を受け取る。

(うん、良い趣味だ。それは良いが、誰も何も突っ込まなかったのか?家族以外に服を贈るのは、男女問わず意味深な言葉が隠されている事を。彼女は知っているのか?その意味を)


「有難うリラ嬢、大切に着させて頂きます」


 エドワルドは、リラに意味を教えずお礼だけを言い、笑顔を見せる。勿論、よこしまな事を想像ながら。

 その意味を教えれば、返してと言って来そうなので、エドワルドは黙っている事にした。
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