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アケボノ

オタル③

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「昨日の晩、きいとお土産買いに行ってん。」
「なんかそんなこと言ってたね。んで?」
「『ひい君のことが好きだった』って言われてん。」
「きい、嘘ついてるね。」

心の奥底が少しモヤッとしたが、元々知っていたことだ。私の方が少し早かっただけ。だからいずれぶつかる問題だった。

「俺もそれが分かってん。きいのことは何となく分かるから。だから、本当のことを言わせた。」

久志の表情からは後悔の感情が読み取れる。そんなに後悔するくらいだったら、嘘を指摘しなければよかったのに。

 でも、きいのことだ。今まで久志に嘘なんかついてこなかったんだろう。きいはそんな子だ。

「それでフッて、どう接したらいいか分からないと。」

そう言うと久志は小さく頷く。きいは私にとっても大切な友達だ。久志にとっては何だろう?幼馴染?それだけやったらこんなに悩まないよね。じゃあ…

 なるほど。私も最近、久志の思考が読めるようになってきた。幼馴染なんだ。だから、このままギスギスしたままでいたくないと。

「久志はどうしたいん?」

これはめちゃくちゃ簡単な問題だ。てか、ほぼテンプレ。だから、私はこの立場をしないといけない。

「俺は…」

久志は少し考える。まだ自分の気持ちに折り合いがついていないんだろう。でも、これは本人たちの意思に任せるべきなんだ。

「きいとは仲良くしたい。一緒に喋って、遊びに行って、そんで幼馴染をしたい。」

久志は優しく微笑む。久志がそう答えることは知っていた。

「じゃあ今まで通りでええんちゃう?」

久志がしたいことだから、私がとやかく言う筋合いはない。久志はそこまで重いって感じじゃない。私は…分からない。でも、そんなに嫌な気持ちではない。別に仲良くしてくれていいし、久志のことを信じている。

「そうだな…そうしてみる。」

 タイミングよくお兄さんが七輪を持ってきた。

「おまたせしました!食べ比べとナポリ2つ。お肉はこっちはレアで食べて大丈夫だから。」
「レア!?」
「大丈夫なんですか!?」

お兄さんがさも当たり前のように言うから、少し心配になって聞いてみる。そうしたらお兄さんは笑って言った。

「うちの店は羊を丸ごと一頭買いしてるから。しかも新鮮やし。やから希少部位も入ってるから、よく味わって食べてな。そんで、こっちのカルビはちょっと長めに。脂落ちた方が美味しいから。美味しい物食べて、悩み事は全部忘れて。」

そう言ってお兄さんは厨房に戻って行った。

 食べるより先に始まるのは撮影タイムだ。ナポリを持ち上げて、電気のほうに。するとキラキラと輝いた。

「センスあるなぁ。後で送って。」
「久志も肉の写真頼んだで。」

久志は肉の写真を撮っていたので、それを送ってくれるように頼んだ。

「じゃあ焼くか。」
「だね。」
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