陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

136君

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アケボノ

オタル④

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「食った~!」
「もうお腹いっぱいやねんけど。」

私たちはジンギスカンを全部食べきった。この自由散策の時間は3時間。時間があるようで意外とないのだ。

「もう私、大阪でジンギスカン食べられへんかも。」
「それな。ここのジンギスカン美味すぎる。解凍と生の違いか。」

途中から言葉もなくなって、ただ食べることに集中していたくらい美味しかった。

 お代を割り勘で払って、店を出る。すると、向かいの店からきいたちが出てきた。

「よっ。」
「ん。」

久志が声をかけても、きいはそう言うだけだ。明らかにおかしい。

 気まずい空気が流れる。私だって2人のこんな姿見たくない。

「ねぇねぇ久志。とりあえずお腹空かせるためにガラス見に行きたいねんけど。」

とりあえず適当に口実をつけて、きいに聞こえるようにそう言う。すると、久志にはその狙いが伝わったのか、小さく頷いた。

「きいもついてきてや。杏の分のお土産買うん忘れてたから。合格祝い的なやつ。」

久志はきいを誘う。幼馴染の距離感で。

「そうだね。私も買いに行こ。ごめんみんな。ちょっとついてきて。」
「もち。」
「元々行く気やったもんね。」

何とかして誘うことができた。でも、本番はここからだ。

 坂の下の方にあったガラス店に入る。そこには色とりどりのガラス工芸品が置いてあった。

「お酒入れる系が多めやな。」
「そりゃあ、俺らみたいに高校生だけでここ来るほうが珍しいやろ。」
「でも、こっち側結構置物系あるよ。」

きいが指さしたのは、ちょうど私たちが見ている列の1つ隣の列。そこには色々な動物の置物が。

「何にする?」
「無難に猫か?」
「いや、真奈ちゃんは犬派やったはず。」

そうして話し合っていると、3人の視線が一つの置物に。

『折り鶴』

それは折り鶴の置物だった。何故かピンと来たのだ。これは当たりだって。

「3人で出し合ってこれにするか。」
「そだね。ひい…君もそれでOK?」
「あぁ、その方があいつらも喜ぶだろうよ。」

今日初めて聞いた『ひい君』って呼び方。でも、少し躊躇いがあるように感じる。

「じゃあ、真奈ちゃんは青で杏は赤かな?」
「なんで?」
「水着の色。俺が覚えてるのそれくらいだから。」

久志は折り鶴を2つ持って、レジに並ぶ。その隣にきいが並んだ。

「渡しに行くの、私も行っていい?」

不安な細い声。

「もちろん。その方が俺も嬉しい。」

久志は優しく微笑む。そして、きいもいつものように笑った。
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