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ミカヅキ

ゼロになった日

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 学校に戻ると、後夜祭はもう終わっていて、生徒たちはグラウンドからいなくなっていた。教室の明かりがついているから、HRでもしているのだろう。

 それでも、正門の前には5つの影があった。

「ひい君。どうやった?」

悲しそうにそう聞いてくるきい。俺はただ、横に首を振るだけだった。それからは誰も喋らないまま、俺たちはそれぞれの教室に戻っていく。

「すみません、遅れました。」
「話は聞いてる。トイレで着替えてこい。」
「はい。」

普段は遅刻を許さない田辺先生も、今日はなんだか優しかった。思ったよりも俺が沈んで戻ってきたからか。

 トイレで汗がたっぷりの染み込んだTシャツを脱ぐ。未だに明かりのつかないトイレは、俺にとってはいい場所だ。俺はただ無言で着替えるだけ。鏡とか窓とかに写る自分は見たくない。どんな顔をしているかなんて知りたくない。

 虚ろな心のまま、終礼連絡を聞く。何を言っているのかも分からないただのひらがなの羅列が脳に飛び交って、そして綺麗に流れていく。

「きりつ」

というのだけが分かって、立ち上がって、礼をした。

 今日は誰とも帰らなかった。何かが違うから。何故かは分からない。けど、何かが俺の心を閉ざしているそんな気がした。

 慣れ親しんだ道を独りで歩いて、家の前に着く。杏は先に帰っているだろうか。おそらく帰っているな。部屋の電気もついているし。

「ただいまぁー」
「おかえり、バカ兄、桜さん?桜さんは?」

杏は不思議そうに尋ねてくる。本当のことを言うか、それとも嘘をつくか。いや、そんなの分からない。間違ってしまった俺に正解がどうのこうのを語る権利はない。

「さぁ…(俺が知りたいくらいだ。)」

けど、俺の心は嘘をつかないって決めたようだ。

「ケンカ?」
「いや。」
「ならいいや。」

杏はリビングに俺のカバンを持っていく。

「何があったかは詳しくは聞かないけど、いつか聞かせてね。」
「あぁ、そうする。悪ぃな。」
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