陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

136君

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ミカヅキ

揺られて

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 涙はもう枯れた。目が潤んで見えなかった景色も、いつのまにか田んぼばかりに変わっていて、電車も縦揺れから横揺れに変わっていく。風になびく黄金色の稲穂が手を振って私を迎えているようで…少し寂しい。

「次は東小浜、東小浜です。」

少しずつ民家が多くなってきて、小浜市街地が近くなってきたのが分かる。ローカル線の横揺れは1歩ずつ都会から離れていく歩みのように、私を遠い所へ誘うのか。はたまた、私はそういう存在なのか。

「次は小浜、小浜です。」

次で逃避行も終わりだ。過去の私からの逃避行。今の私には何も残ってないから、もうどうなってもいい。ただお母さんと2人でこの街で過ごすだけ。それが償いになるのなら…

「あれ?」

枯らしたはずの涙が落ちてくる。もう夢を見る時間は過ぎたと分かっているのに、体がそれを拒んでいる。

「私、なんて情けないんだろう。」

せめてお母さんに会うまでには泣き止んどかないと。

 そんな私の思いは速攻で無駄になった。

「あっ、ちょっと待っとって。梅ソフトもうすぐ出来上がるから。」

道の駅の待合場所にある小さな飲食スペースで待っていたお母さんは、いつも通りマイペースだった。軽くウェーブのかかった茶色く長い髪の毛は、少しずつ白い線が混じり始めていて、それでも綺麗だ。

「久しぶり、お母さん。」
「久しぶりね、桜。元気にしてた?」

有田杠葉(ゆずりは)。私のお母さんだ。いつもマイペースで何考えてるか分からないこともあるけれど、子供のことを第一に考えてくれる。私はお母さんのことを誇りに思っている。

「お母さんが送ってくれてるお金のお陰で楽しく過ごせたよ。」
「そう、なら良かった。」

私が住んでいる所を教えた唯一の親族。だから、葉書が届いた。

「やっぱり…ね。」
「うん。ごめんなさい。」
「いいのよ。誰にだってできないことくらいあるんやから。」
「うん。」

逃げてきた私をそんなに美化しないで欲しい。私はただ弱いだけ。そう思ってここまでやってきた。みんなに嘘をついて。

「ごめんなさい。」

なんてちっぽけな言葉はいくらでも空を飛んでいるのに、意味を持たせようとして、失敗する。私は馬鹿だ。
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