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チャプター2:タブル・カラー・ティーブレイクウォー

ブラザー・アンド・ブラザー・アンド・レディー

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再誕歴7700年ノーベンバー24日。
ベルモンド伯爵領の隣領セルデン侯爵領。
セルデン侯爵邸のセルデン侯爵の執務室に呼び出された息子二人。
兄のジョンと弟のジャン。
兄は勇ましく弟は眼鏡をかけている。
殆ど双子の様に見えるが顔立ちが違う。
ジョンの付き人グレゴリオとジャンの付き人フランクも在室している。

「そろそろ年の瀬だ、 季節も夏になろうとしている
今年の報告を聞こうか」
「はい、 グレゴリー」
「ハイ」

グレゴリオが報告書をジョンに渡す。

「えー・・・領内の税収は平均して変化がありません
コロシアムの売り上げが微減しましたが
管理責任者に補填させて利益は前年度分と同じ分だけ出させました」
「管理責任者に出させた、 か、 中々に良い」
「うーん、 それは如何でしょうか?」

ジャンが口を挟む。

「領内の経営や税の徴収は上手く行っている様に見えますが
現状維持は死ぬと赤の女王も言っています※1」


※1:イギリスの女王が言った言葉で
「その場にとどまるためには、全力で走り続けなければならない」と言う言葉を指して
赤の女王仮説と言う。


「それに引き換え、 フランク!!」
「はい」

フランクが紙を拡げる。
そこにはグラフやら何やらが記載されていた。

「私の担当の資産の運用は投資額を3倍に増やす事に成功しました」
「3倍だと!?」

ジョンが食い入るように資料を見る。

「株式投資!! この山師※2 が!!」


※2:投機的な事業で金儲けを企てる者。


「父上!! こんな方法で得た金に何の意味がありましょうか!!
不確実で博打を打っているのと同じです!!」
「いやいや兄上、 こちらとしても情報をきちんと把握し
考えた上で株の売買をしているのですよ
それに兄上の領地経営も博打ですよ
明日、 隕石が落ちて来たらどうします?※3」


※3:暴論だが備えなければならない問題である。


「貴様ッ!!」
「見苦しいわ!!」

息子二人を一喝するセルデン。

「貴様等に領地経営と税の徴収、 投資をそれぞれ任せているのは
何方が我が後継に相応しいかを判断する為だ
我が侯爵家では長子だの生まれた順で後継を決めるなんて前時代的な事はしない
見苦しい言い訳をする前に結果を出せ!!」

セルデンは金貨袋を出す。

「貴様等が治めた収益からの貴様等の取り分だ」
「ん」
「おい」
「「はい」」

それぞれフランクとグレゴリオが金貨袋を受取り各々の付き従えているジャンとジョンに渡す。

「・・・・・」

腹立たしそうに見るジョン。
ジャンの袋は自分よりも三倍は大きい。

「それでは父上、 兄上、 私はこれで」

ジャンはスタスタとフランクを連れて部屋から出て行った。

「せかせかと独楽鼠※4 の様に働きおって・・・!!」


※4:先天的な三半器官奇形で平衡感覚に異常がありくるくると回り
回った際の遠心力で速度の増した尻尾を激突させ獲物を狩る鼠。
積極的に動き回るので忙しなく働くと言う意味の言葉にもなっている。


「ジョンよ、 お前はジャンを嫌っている様だが」
「当たり前じゃ無いですか!! セルデン侯爵家は代々武人の家柄!!
あんな商人の様な男が次期当主になるのは御先祖に申し訳が立たない!!」
「奴もあのナリで武人よ、 但し奴が振るうのは剣では無く金と算盤だがな」
「金で戦場に立てますか!?」
「落ち着け、 奴は報酬を全て投資に次ぎ込んでいる
我が領地を開拓して新しい街を作りそこで利益を得ている
まさに自然を相手に戦をするが如くだ」
「しかし!!」
「くどい、 文句があるなら奴よりも稼げ」

もう話しは終わりだと手を払う。※5


※5:あっち行けのジェスチャー


「っ!!」

ジョンはグレゴリオと部屋を出た。

「ぐぐぐ・・・あの商人擬きめ・・・小賢しい真似を・・・」
「でもジョンサマ、 カネが無ければコマリますよ」
「必要以上の金を稼ぐのはみっともないだろうが!!※6」


※6:貴族の中では慎ましく不労所得で暮らすのが理想とされるが
昨今は事業拡大を行う貴族も少なくはない。


「うーん、 でもボスにカネ納めないと・・・」
「ちぃー・・・じゃあ如何しろってんだ・・・」
「副業の決闘者やります?」

ジョンは決闘者の資格も持っている、 格付けはC級。
しかしながら格付けの等級の更新査定を行っていない為
実際はB級に迫るとされている。

「決闘してもなぁ・・・決闘代行はそんなぽんぽんある訳じゃない
コロシアムで戦うと言う手も有るがあまり稼ぎが良くない」
「じゃあ投資?」
「それではジャンと変わらんだろうが、 考えて物言えグレゴリー」
「むー・・・思いつきませんネ」
「全くだ・・・何か情報は無いのか・・・」
「あ、 ソウダ、 新聞読みましょう」
「天才か貴様」

ジョンとグレゴリーは新聞を読み漁った。

「ふむふむ・・・如何やらベルモンド伯爵領でのICBCの破壊の傷跡が癒えた様だな」
「それってカネモウケに繋がります?」
「ベルモンド伯爵領か・・・」

遠い目をするジョン。

「あそこのサン令嬢は難儀な性格でな」
「ナンギナセイカク?」
「気難しい奴だ、 あんまり関わり合いたくない
そんな娘だから嫁の貰い手は少ない、 いや無いだろう」
「女なんて手に余る位がチョウドイイですよ」
「いや、 この娘はマジでそういうレベルじゃない
昔から嫌いなタイプだったが最近そういうのも悪くないと思うようになってな」
「・・・・・はぁ、 まぁ、 それは・・・うん・・・」

女性の好みとかを急に語られてもグレゴリオは困る。

「だから俺はサン令嬢と婚姻を結ぼうと思う」
「ふぁ!? そんな事したらギャクにお金かかりますよ!?」
「落ち着け、 ベルモンド伯爵と父上は余り仲が良くない
だからこそ子世代の俺達が婚姻して何とか和解に導けば金を稼ぐ以上の功績になるだろう」
「そうなんですか? 俺には良く分からんです」
「そうなの、 俺はとりあえずベルモンド伯爵領に向かう事にする」
「ちょ、 ちょっと待った、 ベルモンド伯爵とボスは仲が悪いならワカの身が危ないのでは?」
「心配は要らん、 ベルモンド伯爵の木端騎士程度では俺を倒せん」
「むぅ・・・では如何やってケッコンするつもりです?」
「適当に因縁付けて決闘を申し込んで勝って嫁にする」

なんと完璧な理論武装!!

「俺も付いて行きますか?」
「要らん要らん、 適当に付き人を連れて行く事にするよ」
「オキヲツケテイッテラッシャイマセー」
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