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自宅に帰って、俺は先にお風呂に入って、ゆっくり湯に浸かる。
久しぶりに大泣きして、疲れたのか、頭がボンヤリしてしまった。
無差別な差別だ。
篤志と一緒に生きて行く事を選べば、ずっと冷やかされたり、心ない言葉を向けられることは、多くなるだろう。
引き返すならば、今しかない。
でも、俺は篤志を愛している。
ずっと好きで、やっと隣に並べるようになったというのに、今更、悩むの?
俺からこの感情を捨てたら、生きる意欲も捨ててしまうかもしれない。
人の心ない言葉より、篤志から『愛している』と言われた方が俺は何でもできる予感がする。
お風呂の扉をノックされて、扉が開けられる。
「寝てるんじゃないか?」
「起きてるよ」
「どうする?菜都美は俺が入れるか?」
「俺が入れるよ、連れてきて」
「無理はするなよ」
「うん」
扉が閉まって、菜都美の嫌がる声が聞こえる。
お風呂は好きみたいだけれど、服を脱がされるのが嫌みたいだ。
俺はお風呂に水を足して、少しぬるくする。
「よろしく、お姫様をお連れしました」と言いながら、篤志は扉を開ける。
「菜都美、大好きなお風呂だよ」
俺は菜都美を抱いて、お湯を掛けて、先に洗ってしまう。
「可愛いね」
「ウックン、ウックン、うーうー」
今日は暑かったので、汗もかいている。
可愛い、帽子もプレゼントしなくちゃね。
石鹸も流して、湯船に入ると、菜都美は浮遊感を楽しんでいる。
「菜都美、パパって呼んで」
「あうーうーうー」
「そろそろ出ような」
バスタオルで身体を包むと、お風呂の扉を叩く。
直ぐに、篤志が立っていた。
「お姫様をよろしく」
「はいよ」
篤志は菜都美を抱きしめた。
「あっちゃんもお風呂入る?」
「はいるよ」
「俺は出るよ」
俺は洗い場で身体を拭くと脱衣所で下着とTシャツを着た。リビングに行くと、菜都美が足の指を吸っていた。
可愛い姿に、俺の心も癒やされる。
篤志はミルクを作っていた。
台所にいる篤志の横に並ぶ。
「ありがとう」
「今日は暑いから、少しいつもより冷ました方がいいのか?」
「熱すぎると、菜都美は飲まないよ」
「そうだったんだな?温度の管理は難しいな?」
「冷やしすぎると、下痢するし、温度は気をつけてる。下痢すると、機嫌も悪いし」
「真は、昔から細かな事に気が回る。大雑把な俺とは、正反対だよな」
「俺は神経質なだけ。ちょっとのことですごく気にするから」
俺は篤志からミルクをもらうと、菜都美のところに行く。
「菜都美。可愛いね。パパがミルクをあげよう」
菜都美は両手と両足を上げている。
抱っこしての合図だけれど、菜都美の腹筋はかなりありそうだ。
哺乳瓶を口元に近づけると、口を開く。
今日は機嫌が良さそうだ。
俺は菜都美を抱っこすると、ミルクを飲ます。
なんか静かだと思ったら、篤志がスマホで録画をしている。
可愛いくて、小さい時は、あっという間に過ぎてしまうのだろう。
記念に残してもいいと思う。
兄ちゃんや菜々美さんだったら、毎日でも写真や動画を撮ってあげていると思う。
「菜都美、可愛いね」
「あいあいあい・・・」
背中をさすると、可愛いゲップをする。
まだ撮影しているから、菜都美を畳の上に寝かせる。
「アイアイウーうー」
俺は哺乳瓶を洗って、消毒液につける。
「真!」
振り返ると、篤志が手を振っていた。
俺も手を振り返す。
「ちょっと貸して」
俺は素早く篤志の元に行くと、篤志のスマホを借りて、イケメンな顔を撮影した。
「菜都美のもう一人のパパだよ」
篤志は嬉しそうに笑った。
「早くパパと呼んでくれよ」
最後はお姫様の菜都美の姿を写す。
菜都美は手で足を持って、足の指を舐めている。
「ご機嫌です」
俺はスマホを篤志に返した。
篤志はスマホの録画を消した。
「真は嫌がると思ったけれど、写しても怒らないんだな?」
「将来、菜都美に見せるなら、幸せだったと思える映像にしたいと思っただけだよ」
篤志はスマホで俺を写した。
「俺、写真とか嫌いだから、今度写したら、後で消すからね」
「菜都美と一緒にしか写らないつもりか?」
「俺、自分の顔が好きじゃないんだ。女顔で、いつも馬鹿にされる」
「俺は真が好きだよ。その顔も、性格も」
「あっちゃんのこと好きだけど・・・はぁ」
菜都美が畳の上で寝ている。
リビングに畳んである布団を伸ばして、そっと菜都美を寝かして、綿毛布をかけておく。
「真、今のうちに、大切なことしておこう」
「大切な事って?」
「結婚の証明書を検索しようよ」
「ああ」
俺は赤面した。
篤志の事だから、抱き合おうと言うと思ったのだ。
俺の頭、腐ってやがる。
部屋の端に寄せてあるテーブルに並んで座った。
篤志が俺のノートパソコンを持ってきて、ニコニコ笑っている。
仕方なく、パソコンを立ち上げて、もらってきた用紙を見て、進んで行く。
書き込む頁が出てきて、俺は篤志の前にノートパソコンを置いた。
「俺はママなんだろう?パパが書けば?」
「おう、それもそうだな」と言って、書き込みの蘭を埋めていく。
全て書き込んだ後に、ノートパソコンを俺の方に向ける。
俺は間違いがないか確かめていく。
菜都美の欄が複雑だ。
俺の子ではあるが、俺は未婚だし、何と書くのが正しいのだろう。
篤志は俺の子と書いている。
俺の子でいいのかな?
後は、滞りなく書かれている。
互いの連絡先も間違ってはいない。
俺は篤志の方にノートパソコンを向けた。
篤志は俺の手を握ると、一緒にエンターキーを押した。
宣誓をするのは片方でいいみたいなので、篤志の名前が書かれていた。
「今日は祝いだ。なんか注文するか?」
「俺が作るよ。この辺りで注文で来るものはピザくらいだよ。腹一杯食べたら、幾らになるか分からない。だったら、その金額で肉が買える。菜都美が寝てるから、風呂入っておいでよ。あっちゃんが風呂から出たら、買い物に行ってくる。帰ったら、もう一度、風呂に入るから、湯は抜かないで」
「分かった」
そう言うと、篤志は楽しげに風呂場に向かった。
「結婚か」
嬉し恥ずかしい。
自然に笑顔が浮かんできた。
菜都美の隣に横になって、愛らしい顔を見続けた。
兄ちゃんと菜々美さんには悪いけれど、今が幸せだと思った。
久しぶりに大泣きして、疲れたのか、頭がボンヤリしてしまった。
無差別な差別だ。
篤志と一緒に生きて行く事を選べば、ずっと冷やかされたり、心ない言葉を向けられることは、多くなるだろう。
引き返すならば、今しかない。
でも、俺は篤志を愛している。
ずっと好きで、やっと隣に並べるようになったというのに、今更、悩むの?
俺からこの感情を捨てたら、生きる意欲も捨ててしまうかもしれない。
人の心ない言葉より、篤志から『愛している』と言われた方が俺は何でもできる予感がする。
お風呂の扉をノックされて、扉が開けられる。
「寝てるんじゃないか?」
「起きてるよ」
「どうする?菜都美は俺が入れるか?」
「俺が入れるよ、連れてきて」
「無理はするなよ」
「うん」
扉が閉まって、菜都美の嫌がる声が聞こえる。
お風呂は好きみたいだけれど、服を脱がされるのが嫌みたいだ。
俺はお風呂に水を足して、少しぬるくする。
「よろしく、お姫様をお連れしました」と言いながら、篤志は扉を開ける。
「菜都美、大好きなお風呂だよ」
俺は菜都美を抱いて、お湯を掛けて、先に洗ってしまう。
「可愛いね」
「ウックン、ウックン、うーうー」
今日は暑かったので、汗もかいている。
可愛い、帽子もプレゼントしなくちゃね。
石鹸も流して、湯船に入ると、菜都美は浮遊感を楽しんでいる。
「菜都美、パパって呼んで」
「あうーうーうー」
「そろそろ出ような」
バスタオルで身体を包むと、お風呂の扉を叩く。
直ぐに、篤志が立っていた。
「お姫様をよろしく」
「はいよ」
篤志は菜都美を抱きしめた。
「あっちゃんもお風呂入る?」
「はいるよ」
「俺は出るよ」
俺は洗い場で身体を拭くと脱衣所で下着とTシャツを着た。リビングに行くと、菜都美が足の指を吸っていた。
可愛い姿に、俺の心も癒やされる。
篤志はミルクを作っていた。
台所にいる篤志の横に並ぶ。
「ありがとう」
「今日は暑いから、少しいつもより冷ました方がいいのか?」
「熱すぎると、菜都美は飲まないよ」
「そうだったんだな?温度の管理は難しいな?」
「冷やしすぎると、下痢するし、温度は気をつけてる。下痢すると、機嫌も悪いし」
「真は、昔から細かな事に気が回る。大雑把な俺とは、正反対だよな」
「俺は神経質なだけ。ちょっとのことですごく気にするから」
俺は篤志からミルクをもらうと、菜都美のところに行く。
「菜都美。可愛いね。パパがミルクをあげよう」
菜都美は両手と両足を上げている。
抱っこしての合図だけれど、菜都美の腹筋はかなりありそうだ。
哺乳瓶を口元に近づけると、口を開く。
今日は機嫌が良さそうだ。
俺は菜都美を抱っこすると、ミルクを飲ます。
なんか静かだと思ったら、篤志がスマホで録画をしている。
可愛いくて、小さい時は、あっという間に過ぎてしまうのだろう。
記念に残してもいいと思う。
兄ちゃんや菜々美さんだったら、毎日でも写真や動画を撮ってあげていると思う。
「菜都美、可愛いね」
「あいあいあい・・・」
背中をさすると、可愛いゲップをする。
まだ撮影しているから、菜都美を畳の上に寝かせる。
「アイアイウーうー」
俺は哺乳瓶を洗って、消毒液につける。
「真!」
振り返ると、篤志が手を振っていた。
俺も手を振り返す。
「ちょっと貸して」
俺は素早く篤志の元に行くと、篤志のスマホを借りて、イケメンな顔を撮影した。
「菜都美のもう一人のパパだよ」
篤志は嬉しそうに笑った。
「早くパパと呼んでくれよ」
最後はお姫様の菜都美の姿を写す。
菜都美は手で足を持って、足の指を舐めている。
「ご機嫌です」
俺はスマホを篤志に返した。
篤志はスマホの録画を消した。
「真は嫌がると思ったけれど、写しても怒らないんだな?」
「将来、菜都美に見せるなら、幸せだったと思える映像にしたいと思っただけだよ」
篤志はスマホで俺を写した。
「俺、写真とか嫌いだから、今度写したら、後で消すからね」
「菜都美と一緒にしか写らないつもりか?」
「俺、自分の顔が好きじゃないんだ。女顔で、いつも馬鹿にされる」
「俺は真が好きだよ。その顔も、性格も」
「あっちゃんのこと好きだけど・・・はぁ」
菜都美が畳の上で寝ている。
リビングに畳んである布団を伸ばして、そっと菜都美を寝かして、綿毛布をかけておく。
「真、今のうちに、大切なことしておこう」
「大切な事って?」
「結婚の証明書を検索しようよ」
「ああ」
俺は赤面した。
篤志の事だから、抱き合おうと言うと思ったのだ。
俺の頭、腐ってやがる。
部屋の端に寄せてあるテーブルに並んで座った。
篤志が俺のノートパソコンを持ってきて、ニコニコ笑っている。
仕方なく、パソコンを立ち上げて、もらってきた用紙を見て、進んで行く。
書き込む頁が出てきて、俺は篤志の前にノートパソコンを置いた。
「俺はママなんだろう?パパが書けば?」
「おう、それもそうだな」と言って、書き込みの蘭を埋めていく。
全て書き込んだ後に、ノートパソコンを俺の方に向ける。
俺は間違いがないか確かめていく。
菜都美の欄が複雑だ。
俺の子ではあるが、俺は未婚だし、何と書くのが正しいのだろう。
篤志は俺の子と書いている。
俺の子でいいのかな?
後は、滞りなく書かれている。
互いの連絡先も間違ってはいない。
俺は篤志の方にノートパソコンを向けた。
篤志は俺の手を握ると、一緒にエンターキーを押した。
宣誓をするのは片方でいいみたいなので、篤志の名前が書かれていた。
「今日は祝いだ。なんか注文するか?」
「俺が作るよ。この辺りで注文で来るものはピザくらいだよ。腹一杯食べたら、幾らになるか分からない。だったら、その金額で肉が買える。菜都美が寝てるから、風呂入っておいでよ。あっちゃんが風呂から出たら、買い物に行ってくる。帰ったら、もう一度、風呂に入るから、湯は抜かないで」
「分かった」
そう言うと、篤志は楽しげに風呂場に向かった。
「結婚か」
嬉し恥ずかしい。
自然に笑顔が浮かんできた。
菜都美の隣に横になって、愛らしい顔を見続けた。
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