幼馴染みの彼と彼

綾月百花   

文字の大きさ
12 / 67

12

しおりを挟む
 なんと便利で素晴らしい。

 買い物に行かなくても、食料が手に入る。

 今朝は朝食がなくて、コンビニに篤志がサラダとおにぎりを買いに行ってくれた。

 朝は忙しいのに。

 明日から、朝食を作ってあげられる。

 お米もある。

 キッチンを探したけれど、米びつがそもそもない。

 小さな鍋が一つ。

 フライパンすらない。

 炊飯器はあったから、それを使うことにした。 

 早速、お鍋とフライパンはネット購入する。

 今日はできる物で食事を作る。

 昼に菜都美のお風呂を済ませて、洗濯もしてしまう。

 髪を切ろうか迷って、菜都美が混乱するかもしれないので、結局、長く伸びたボサボサの髪のまま放置した。

 菜都美を抱っこしていると、俺の顔を見ている。


「菜都美、パパだよ」


 初めて、自分の事をパパと教えた。

 女じゃないから、ママじゃない。だからパパにした。

 篤志に相談したら、きっと俺のことはママと呼ばせると言うかもしれないけれど、菜都美が保育園に入ったり、小学校に入ったりしたときに、混乱することは教えない方がいいと思う。

 俺や篤志がゲイであることは、自分達で分かっていればいい。

 世間の目や中傷を受けるのは、自分達だけでいい。

 菜都美は関係ないことだ。

 俺も篤志もパパでいい。

 そう思ったのだ。

 菜都美が俺達がゲイである事で虐められたら、その時は俺は胸を張って戦う。きっと篤志も一緒に戦ってくれると思う。

 俺は与えられた時間、菜都美を大切に育てる覚悟を持った。そして、実行している。

 菜都美は毎日すくすく育っていく。

 子供の成長は早い。

 篤志は外食が多くて、帰宅も遅い。

 最初の話では、残業は殆どないという話だったけれど。

 セックスは以前よりしなくなった。だけど、抱き合った時は昔より激しくなった。

 菜都美を俺の部屋で寝かせて、寝室で抱き合って、終わると俺は菜都美の部屋に戻る感じだ。

 最初に夕食を作って待っていた日、篤志はまた外食してきた。

 帰宅も0時頃で。

 翌朝、夕食は要らないと言われた。

 そんなに忙しい仕事をしているのか?

 大学の研究と仕事はずいぶん違う事をするのだろうか?

 俺はまだ仕事場に足も運んでいないし、話し相手も菜都美と篤志しかいない。

 その篤志とも、会話らしい会話もしていない。

 俺、寂しいよ。

 篤志は寂しくないのかな?

 待っている時間が長くて、鬱になりそうだよ。

 一人のご飯も、美味しく感じない。

 久しぶりに、外出した。

 菜都美の一ヶ月検診だ。

 菜都美は正常に発達していると言われた。

 やっと一緒にお風呂に入れる。

 ベビーバスは片付けられる。

 ベビーカーを押して、外で買い物をしているとき、篤志の姿を見た。

 声を掛けようとしたら、篤志の隣に知らない女性がいた。

 俺はその姿を見て、ベビーカーを押して後を着いていった。

 仕事中なのに、どうして会社の外で女性と歩いているの?

 とっても親密そうで、俺の入る隙間も見つけられない。

 女性は、篤志の腕に捕まり、会話をしているようだった。

 笑顔が可愛い人だった。

 二人はホテル街に行き、何の躊躇いもなくホテルの中に入って行った。

 俺は呆然とその様子を見て、胸が苦しくなった。

 篤志の本命は、俺じゃなかったってこと?

 俺はずっと篤志を好きで、信じていた。

 お互いにゲイで、この先、ずっと一緒に生活を共にしていくものだと思っていた。

 一緒にご飯を食べなくなって、約一ヶ月経つ。

 菜都美がいるから、俺のこと嫌いになったの?

 俺は菜都美とマンションに戻った。

 今日のこと見なかったことにした方がいいの?

 聞いたら、関係が変わるの?

 俺は悩んで、ボイスレコーダーを取り出した。

 長時間録音できる物だから、明日もホテルに出かけるなら相手との関係も知れるはずだと思った。

 その日も帰宅は0時頃だった。

 篤志はお風呂に入るために着替えに、自室に戻った。

 篤志はお洒落で、毎日、スーツを着替えている。

 どのスーツを着るのかも賭けだった。

 スーツの内ポケットにボイスレコーダーを忍ばせた。

 こんな事をしている自分が嫌いだ。

 大好きな篤志を信じられないなんて、篤志を裏切っているようだ。

 翌日、篤志はまた0時頃に帰ってきた。

 着替えに自室に入り、お風呂に入った時、俺は篤志のスーツのポケットに忍ばせたボイスレコーダーを取り出して、自室に戻った。

 篤志はシャワー派だからお風呂の時間は短い。

 俺が風呂に入っても、湯は流しておいてくれと言う。

 篤志は菜都美とお風呂に入ってみたくないのだろうか?

 一緒に暮らしていた頃は、一緒に風呂にも入ってじゃれ合っていたのに。

 離れていた二年の間に、篤志は変わったの?

 どうして毎日0時頃に帰ってくるの?

 俺と話しもしたくなくなったの?

 聞きたいけれど、返事が怖い。

 ボイスレコーダーを聞きたいけれど、篤志が寝てからしか聞けない。

 俺は部屋の電気を消して、布団に横になっている。

 扉が開いて、篤志は部屋に入ってきて、俺の腕を掴んだ。


「痛いよ」

「来いよ。今日は抱きたい」

「今日は嫌だ」


 俺は始めて篤志の言葉に逆らった。

 拒絶したのは、初めてかもしれない。

 篤志は俺の手を離すと、部屋から出て行った。

 もう、篤志との関係は終わるのかもしれないと思った。

 録音しておいたボイスレコーダーは、怖くて結局聞けなかった。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】抱っこからはじまる恋

  *  ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。 ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら! 完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

【完結】毎日きみに恋してる

藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました! 応援ありがとうございました! ******************* その日、澤下壱月は王子様に恋をした―― 高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。 見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。 けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。 けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど―― このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。

俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした

たっこ
BL
【加筆修正済】  7話完結の短編です。  中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。  二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。 「優、迎えに来たぞ」  でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。  

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

処理中です...