幼馴染みの彼と彼

綾月百花   

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 篤志が帰ってこないので、先に寝ることにした。

 菜都美をベビーベッドに寝かせて、俺も篤志のダブルベッドに横になった。

 時刻は0時。

 いきなり残業させられているのか?

 就職説明では、残業はないと聞いていたのに。

 どんな仕事をしているのだろう。

 スマホを見ても連絡もない。

 昼間に寝ていたのを気遣っているのかもしれない。

 菜都美が次に起きるのは、2時か3時頃か?

 早く寝ようと、ベッドの中に入った。

 その時、玄関が開く音がした。

 俺は起き上がって、リビングに出て行った。

 一言「お帰り。お疲れ様でした」と言うつもりだった。


「お帰り」


 篤志は伊達眼鏡をテーブルに乱暴に置いて、ネクタイを緩めていた。

 少し苛々しているようだった。

 俺の声が聞こえていない。


「全くいい加減にしろよ」


 冷蔵庫を開けて、菜都美のミネラルウォーターをそのまま口をつけてのんだ。

 不潔だ。

 菜都美が病気になってしまうかもしれない。


「あっちゃん、ミネラルウォーターはグラスに入れて飲んで」


 篤志が振り返って、俺を見た。


「起きてたのか?」


「音がしたから、見に来たんだ。帰ってきたのかと思って」

「起こして、すまない」

「まだ起きてたから、それより、ミネラルウォーターは菜都美のミルクを」

「ああ、分かった。すまない」


 篤志は冷蔵庫を閉めると、グラスを出して、ミネラルウォーターを注いだ。

 一度口に付けた物をしまっても、不潔だ。


「お酒飲んでるの?」

 アルコールの匂いがする。

 菜都美に何かあると心配だから、禁酒すると言っていたのに?


「社長の自宅に拉致られた。食事は食べたか?」

「昼間はありがとう。夕食は食べる物がなかったから、食べなかった。明日から、ネットスーパーを利用するよ」

「それはいいけど、腹は減ってないのか?」

「もう寝るし。実験に夢中だった頃は、食べるのも忘れていたから、そんときと同じだよ」

「すまない」

「いいって」

「社長、なんだって?」

「―――――飲み相手が欲しかったんだと思うよ」


 目が泳いでいた。 

 俺に嘘をついても分かるのに。

 俺に言えない事なんだな?


「ああ、そういえば、社長が三ヶ月、特別休暇を与えると言っていた。保育園は、会社の保育園に預ければいいって」

「三ヶ月も?」

「今は保育園がいっぱいだから、新生児は見られないって言ってた」

「助かるけど、いいのかな?」

「社長が言ったんだ。甘えればいいよ」

「ありがとうございますって、言っておいて」

「もう言っておいた。もう寝ろよ。俺は風呂に入って、後で、もう一度、水飲むから。新しいのを入れておくよ」

「うん、ありがとう。おやすみ」


 篤志は、自分の部屋に入っていった。

 スーツを脱ぐのだろう。

 俺は寝室に戻って、ベッドに入る前に菜都美の顔を見た。

 静かに眠っている。

 今のうちに寝よう。

 それにしても3ヶ月も特別休暇をくれるのは、菜都美の為だよな?

 俺の事、雇わなければよかったとか思っていることはないよね?

 不安だよ。

 素直に喜べない。

 俺、神経質になっているだけだよな? 


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