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「グルルルル…!」
魔物は体力が回復したからか立ち上がり臨戦体勢のように低く構えてなおも警戒しながら唸った。
「…グルフゥ…」
だが食べ物を与えてくれた彼女に免じて…なのか、魔物はソッポ向くと山を下りるように走り去る。
「……ふぅ…なんとか戦いは避けられた、が…」
青年は緊張を解き剣を鞘に納め彼女に向き直った。
「?」
「君は馬鹿か!?あんな魔物を回復させるなんて…!表示を見ただろう!?Lv28だぞ!?」
そして詰め寄るように怒鳴る。
「それも、森の暗殺者とも言われるアセスウルフだぞ!?」
「へー…そんなのが…Lv28って強いね」
「~~!!…っく…!分かってるのか!?アレを逃したと言う事はまた新しい犠牲者が増えるんだぞ!?くそっ…!無視してでもトドメを刺すべきだった…!俺はもう騎士失格だ…!」
青年は彼女に怒鳴るだけ怒鳴ったと思えば近くの木を殴って落ち込む。
「まあまあ…お互いに料理で助かった仲なんだから…同じ穴の狢?痛み分け?ってやつじゃん」
「なんだソレは…?…もちろん助けてもらった事には感謝しているが…」
「平等!そう、お互いに回復できて助かったんだからフェアだったっしょ?」
彼女はさっきの言い回しに不満を感じてたのか思いついたように青年に問う。
「魔物相手にフェアに戦ってどうする…」
「もし、アレでヤられてたとしても…ソレはソレで良いじゃん」
「…は…?」
彼女の発言に青年が心底理解できない…みたいな声を出した。
「アレでヤられてたら、自分の行いが間違ってた…って事っしょ?自分の行いが正しければ生き残り、間違えれば死ぬ…ソレが世界の真理だと思ってるけど?」
青年は彼女の言葉を聞いて何か言おうとして口を開くが、結局閉じる。
「間違った事をして生き残るよりは間違った事をして死んだ方が、世の中にちゃんとした正義があるんだ…と思わない?」
更に彼女は笑ったまま続けた。
「…君は…歳の割にしっかりとした考えがあるんだね、さっきまでの自分が少し恥ずかしいよ…」
「まあ、もう80年近く生きてるからね」
「…はっ?」
彼女の何気ない一言に青年の表情が固まる。
「ちょ、ちょっと待ってくれ…君、何歳なんだ?」
「ん~?…正確な歳は忘れたけど…80前後って所かな?」
「は…はあああああ!!?」
…森に青年の絶叫が響き渡った。
「は、80って…!どう見ても14、5の少女にしか見えないが…!」
「アンチエイジングってやつ?食材は同じなのに、調理法で食べた時の効果が違うって面白いよな」
「…まさか、料理によって若返りや若さを保っているのか…?」
ありえない…!と青年は愕然とした表情をしながら聞いてくる。
「ああ、あと…一応話し方で分かってると思うけど…俺、男だよ?今は女の身体だけど」
「…は…はああああ!!?」
青年の本日二度目の声を枯らさんばりの絶叫が森に響き渡った。
「お、男!?女の身体…!?確かに話し方は変だと思っていたが…!もう何が何だが…!」
立て続けの予期せぬ情報に青年は完全にパニックに陥っている。
「性別が変わる効果の料理を半信半疑で食べたら本当に…しかもその食材、希少なやつらしくてね…もうここ3年ぐらいはずっとこんな姿」
「…料理にそんな効果が…?と言うか料理に効果がある事自体初めて知ったんだが…」
諦めたようにため息を吐きながら説明した彼女に、ようやく理解が追いついたのか青年が元に戻った。
「『料理』のスキルを会得したら料理に効果が付与されるらしいよ?今まで集めた情報を統合すると…だから本当かどうか分からないけど」
彼女は青年が置いたざるを拾い背負った籠に山菜を入れながら説明する。
「…『料理』のスキルか、聞いた事が無いが…一応調べてみよう」
「はいはい、じゃあ帰った帰った…あの魔物も居なくなったんだから護衛も必要ないっしょ」
シッシッ…と彼女は青年を追い払うように手を振った。
「そうだな、では俺はコレで…助けてくれて感謝する」
青年は彼女に頭を下げて踵を返し去っていく。
「…はあ…魔物に騎士って…なんだったんだ…?」
家の中に入ると彼女は籠を下ろして疲れたようにベッドに座り込む。
そしてそのまま横に倒れるようにして眠る。
魔物は体力が回復したからか立ち上がり臨戦体勢のように低く構えてなおも警戒しながら唸った。
「…グルフゥ…」
だが食べ物を与えてくれた彼女に免じて…なのか、魔物はソッポ向くと山を下りるように走り去る。
「……ふぅ…なんとか戦いは避けられた、が…」
青年は緊張を解き剣を鞘に納め彼女に向き直った。
「?」
「君は馬鹿か!?あんな魔物を回復させるなんて…!表示を見ただろう!?Lv28だぞ!?」
そして詰め寄るように怒鳴る。
「それも、森の暗殺者とも言われるアセスウルフだぞ!?」
「へー…そんなのが…Lv28って強いね」
「~~!!…っく…!分かってるのか!?アレを逃したと言う事はまた新しい犠牲者が増えるんだぞ!?くそっ…!無視してでもトドメを刺すべきだった…!俺はもう騎士失格だ…!」
青年は彼女に怒鳴るだけ怒鳴ったと思えば近くの木を殴って落ち込む。
「まあまあ…お互いに料理で助かった仲なんだから…同じ穴の狢?痛み分け?ってやつじゃん」
「なんだソレは…?…もちろん助けてもらった事には感謝しているが…」
「平等!そう、お互いに回復できて助かったんだからフェアだったっしょ?」
彼女はさっきの言い回しに不満を感じてたのか思いついたように青年に問う。
「魔物相手にフェアに戦ってどうする…」
「もし、アレでヤられてたとしても…ソレはソレで良いじゃん」
「…は…?」
彼女の発言に青年が心底理解できない…みたいな声を出した。
「アレでヤられてたら、自分の行いが間違ってた…って事っしょ?自分の行いが正しければ生き残り、間違えれば死ぬ…ソレが世界の真理だと思ってるけど?」
青年は彼女の言葉を聞いて何か言おうとして口を開くが、結局閉じる。
「間違った事をして生き残るよりは間違った事をして死んだ方が、世の中にちゃんとした正義があるんだ…と思わない?」
更に彼女は笑ったまま続けた。
「…君は…歳の割にしっかりとした考えがあるんだね、さっきまでの自分が少し恥ずかしいよ…」
「まあ、もう80年近く生きてるからね」
「…はっ?」
彼女の何気ない一言に青年の表情が固まる。
「ちょ、ちょっと待ってくれ…君、何歳なんだ?」
「ん~?…正確な歳は忘れたけど…80前後って所かな?」
「は…はあああああ!!?」
…森に青年の絶叫が響き渡った。
「は、80って…!どう見ても14、5の少女にしか見えないが…!」
「アンチエイジングってやつ?食材は同じなのに、調理法で食べた時の効果が違うって面白いよな」
「…まさか、料理によって若返りや若さを保っているのか…?」
ありえない…!と青年は愕然とした表情をしながら聞いてくる。
「ああ、あと…一応話し方で分かってると思うけど…俺、男だよ?今は女の身体だけど」
「…は…はああああ!!?」
青年の本日二度目の声を枯らさんばりの絶叫が森に響き渡った。
「お、男!?女の身体…!?確かに話し方は変だと思っていたが…!もう何が何だが…!」
立て続けの予期せぬ情報に青年は完全にパニックに陥っている。
「性別が変わる効果の料理を半信半疑で食べたら本当に…しかもその食材、希少なやつらしくてね…もうここ3年ぐらいはずっとこんな姿」
「…料理にそんな効果が…?と言うか料理に効果がある事自体初めて知ったんだが…」
諦めたようにため息を吐きながら説明した彼女に、ようやく理解が追いついたのか青年が元に戻った。
「『料理』のスキルを会得したら料理に効果が付与されるらしいよ?今まで集めた情報を統合すると…だから本当かどうか分からないけど」
彼女は青年が置いたざるを拾い背負った籠に山菜を入れながら説明する。
「…『料理』のスキルか、聞いた事が無いが…一応調べてみよう」
「はいはい、じゃあ帰った帰った…あの魔物も居なくなったんだから護衛も必要ないっしょ」
シッシッ…と彼女は青年を追い払うように手を振った。
「そうだな、では俺はコレで…助けてくれて感謝する」
青年は彼女に頭を下げて踵を返し去っていく。
「…はあ…魔物に騎士って…なんだったんだ…?」
家の中に入ると彼女は籠を下ろして疲れたようにベッドに座り込む。
そしてそのまま横に倒れるようにして眠る。
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