子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神

文字の大きさ
470 / 480

壮年期 44

しおりを挟む
「…誰だ?」

「時間が無いので用件を手短に。現在構築中の最終防衛戦ではセリィア軍を止められず首都防衛戦になると予想します。なので今の内に陛下や要人達はヴェルヘルム方面の城砦に避難した方がよろしいかと、進言申し上げます」

「…なんだと…?」


部屋の中に居たおっさんは分身の俺を見て怪訝そうに尋ねるが分身の俺が無視して警告を告げると険しい顔になった。


「信じる信じない、迅速に行動に移す移さない等の判断は陛下にお任せせざるを得ません。とりあえず自分は警告や注意はしましたので、これで失礼します」

「待て。誰だお前は?」

「ラスタの貴族、クライン辺境伯を名乗る者です。貴重なお時間を奪ってしまい、申し訳ございませんでした」


分身の俺が事務的に話して退室しようとするとおっさんは引き留めて確認するように尋ね、分身の俺は軽く自己紹介した後に嫌味のような謝罪をして返事を聞く前にさっさと部屋から出る。


「ありがとう」

「…70秒。5分どころか一分と少しで終わったようだな」


退室してお礼を言うと数を数えていた兵が秒数を教えてくれた。


「待て!」

「陛下?いかがなさいましたか?」

「もしやこの者が何か無礼を…?」


おっさんが追いかけてくるように制止の言葉を言いながらドアを開けると兵の一人が不思議そうに尋ね、もう一人の兵は分身の俺を見ながら尋ねる。


「今の話はなんだ?なぜ、セリィアの軍がこの首都まで攻めて来ると?」

「…その話は少々お時間をいただく事になりますので、またお時間がある時にいたしましょう。手遅れになる前になるべく早く決断を下してくれると幸いです」


おっさんの確認に分身の俺は嫌味のように日を改める事と思わせ振りな事を返して会釈した。


「…分かった。時間を取ろう、入ってくれ」

「分かりました。国王陛下の心遣い、感謝申し上げます」


おっさんは目を瞑って数秒考えると部屋の中に招き入れ、分身の俺は社交辞令のようなお堅いお礼を言って再度部屋の中に入る。


「…ではもう一度申し上げます。あくまで私見ではありますが…最終防衛戦でセリィア軍に勝利する可能性は低く、首都防衛戦になると予想しています」

「…なぜそう言える?根拠はあるのだろうな?」


椅子に座ってさっきの発言を言い直すとおっさんは厳しい顔で問い詰めるように聞いてきた。


「はっきりとした明確な根拠は示せませんが…セリィア方面の防衛戦には自分達も援軍として赴きました。その時の状況は不利な形勢で徐々に劣勢になり、負けると予想した結果、実際に敗北しています」

「…なるほど。クライン辺境伯の噂はこちらにも届いているが…その手腕を持ってしてもどうにもならんか」


分身の俺の発言におっさんはテーブルの上で両手を組んで目を瞑って呟き、何故か分身の俺に責任を擦りつけるかのような事を言い始める。


「そうですね。兵をお貸しいただければどうとでも出来ましたが『アーデンにはアーデンのやり方がある』と言われたらいかに自分とて手出し出来ませんので…どうにもなりませんでした」

「…それは結果論に過ぎないのでは無いか?終わった後であればいかようにでも言えよう」


分身の俺がイラッときて嫌味を交えて反論するとおっさんは更にムカつく事を返してきた。


「…ヴェルヘルム方面での防衛戦の報告書はお読みになりましたか?」

「いや、まだだ。国境の外まで追い払ったという報告は聞いたが見ての通り忙しくてな、読む暇が無い」


分身の俺の確認におっさんは否定した後にテーブルの上に積まれている書類を指しながらため息を吐く。


「そうですか…話を戻しますと、首都防衛戦に移行しますと避難も難しくなります。なので今の内に国王陛下や要人達はヴェルヘルム方面の城砦に避難した方がよろしいかと」

「…馬鹿な。国王が真っ先に避難するなどありえぬ」


分身の俺はマジかよ…と思いつつも適当に流して再度提案するもおっさんは拒否する。


「では家族や要人達だけでも避難させた方がよろしいのでは?もし自分の予想が外れて最終防衛線で食い止められるようであれば、その時に呼び戻せば良いだけですし」

「…ふむ…ソレは一理ある。が、そう簡単にいく問題ではないのだ」


分身の俺が内容を少し修正して確認するとおっさんが少し考えて肯定的な反応をするも難色を示す。


「…分かりました。判断は国王陛下に委ねるしかありませんので…お時間いただきありがとうございます。では自分はこれで失礼します」

「クライン辺境伯、助言いただき感謝申し上げる。しかし直ぐに判断出来る問題ではないゆえ、決断までには少々時間がかかりそうだ」


俺にとってはどうせ他国の問題でどうなろうとも自国には一切関係無いので適当に話を切り上げて終わろうとすると…


おっさんが会釈するように頭を軽く下げてお礼の言葉を返し、言い訳するような感じの事を言い始めた。


「…手遅れにならない事を祈ります。では」


分身の俺はどうでも良いと思いつつも外面には出さずに当たり障りの無い事を返して退室する。
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

追放された荷物持ち、スキル【アイテムボックス・無限】で辺境スローライフを始めます

黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティーで「荷物持ち」として蔑まれ、全ての責任を押し付けられて追放された青年レオ。彼が持つスキル【アイテムボックス】は、誰もが「ゴミスキル」と笑うものだった。 しかし、そのスキルには「容量無限」「時間停止」「解析・分解」「合成・創造」というとんでもない力が秘められていたのだ。 全てを失い、流れ着いた辺境の村。そこで彼は、自分を犠牲にする生き方をやめ、自らの力で幸せなスローライフを掴み取ることを決意する。 超高品質なポーション、快適な家具、美味しい料理、果ては巨大な井戸や城壁まで!? 万能すぎる生産スキルで、心優しい仲間たちと共に寂れた村を豊かに発展させていく。 一方、彼を追放した勇者パーティーは、荷物持ちを失ったことで急速に崩壊していく。 「今からでもレオを連れ戻すべきだ!」 ――もう遅い。彼はもう、君たちのための便利な道具じゃない。 これは、不遇だった青年が最高の仲間たちと出会い、世界一の生産職として成り上がり、幸せなスローライフを手に入れる物語。そして、傲慢な勇者たちが自業自得の末路を辿る、痛快な「ざまぁ」ストーリー!

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

出来損ないと追放された俺、神様から貰った『絶対農域』スキルで農業始めたら、奇跡の作物が育ちすぎて聖女様や女騎士、王族まで押しかけてきた

黒崎隼人
ファンタジー
★☆★完結保証★☆☆ 毎日朝7時更新! 「お前のような魔力無しの出来損ないは、もはや我が家の者ではない!」 過労死した俺が転生したのは、魔力が全ての貴族社会で『出来損ない』と蔑まれる三男、カイ。実家から追放され、与えられたのは魔物も寄り付かない不毛の荒れ地だった。 絶望の淵で手にしたのは、神様からの贈り物『絶対農域(ゴッド・フィールド)』というチートスキル! どんな作物も一瞬で育ち、その実は奇跡の効果を発揮する!? 伝説のもふもふ聖獣を相棒に、気ままな農業スローライフを始めようとしただけなのに…「このトマト、聖水以上の治癒効果が!?」「彼の作る小麦を食べたらレベルが上がった!」なんて噂が広まって、聖女様や女騎士、果ては王族までが俺の畑に押しかけてきて――!? 追放した実家が手のひらを返してきても、もう遅い! 最強農業スキルで辺境から世界を救う!? 爽快成り上がりファンタジー、ここに開幕!

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

処理中です...