469 / 480
壮年期 43
しおりを挟む
…それから二週間後。
アーデンのセリィア方面で交戦していた味方の軍勢が敗れたとの報告が。
なので分身の俺は兵の指揮権を一時的に譲渡するよう交渉したが失敗に終わる。
「…もうこの国はダメだね」
「『まだ最終防衛線が残っている』と言われても今の様子では…」
…宿屋で分身の俺の報告を聞くと分身の二人は呆れて諦めたような反応を見せた。
「まあとりあえずお偉いさん辺りには今から避難するよう呼びかけてみるか。首都防衛戦になったら避難も難しくなるだろうし」
「でも今の状況で聞き入れてくれるのかい?そもそも情報が伝わらないんじゃ?」
分身の俺は最悪の展開に備えて今の内に対策を取る事を告げると分身の女性が否定的な感じで返してくる。
「多少強引にでも直接会って話してみるしかないね」
「…大丈夫ですか?」
「へーきへーき。現状かなり危ないところまで来てるんだからもはやどう思われても知ったこっちゃ無いし、政府に俺の無礼や失礼を報告されたとて今の状況なら仕方ない…って行動の正当性を認めてくれるでしょ」
「だといいんですが…」
分身の俺がそう返すと分身のお姉さんは心配したように確認し、分身の俺の楽観的な返答に微妙な顔をしながら呟いた。
「そもそも最初から素直に俺に兵を貸してくれればこんな事態に陥ってないから。ニャルガッズの前例もあるし」
「「…確かに」」
分身の俺の発言に分身の二人は少し考えて同時に納得する。
「じゃ、とりあえず俺は王様に話をしに行くから」
「…そんな友達に会いに行くような気軽さで…?」
「まああんたなら心配いらないか」
分身の俺が行動の予定を告げて立ち上がると分身のお姉さんがなんとも言えないような顔で呟き、分身の女性は笑って返す。
ーーー
「…なにかご用ですか?」
「ちょっと急用が出来て。今すぐ陛下に話す事があるんだけど…」
「陛下に?」
「少々お待ちください」
城に行くと門の前の兵に用件を尋ねられ、分身の俺が嘘ではないけど本当でもない…微妙な感じのでまかせを言うと兵の一人が不思議そうな顔をして別の兵が確認しに行く。
「…お待たせしました。陛下は今お忙しいようで、代理の者が対応いたしますので…中でお待ち下さい」
「ご苦労さん」
5分ほどで戻って来た兵が報告して門を開けてくれ、分身の俺は労いの言葉をかけて門を潜って中庭へと入った。
「…部屋へと案内いたします」
「よろしく」
…中庭を歩いているとメイドのような女性が小走りで駆け寄り、声をかけてくるので分身の俺はそのまま女性に案内されるがまま後をついて行く。
「ところで陛下は執務室にいるの?」
「あ、はい。今の時間であれば執務中のはずです」
「へー。城の中に執務室ねぇ…」
「王座の間と同じ階にあります」
分身の俺の問いに女性は肯定して答え、場所を聞こうかどうか迷って呟くと普通に場所を教えてくれる。
「その執務室に案内してくれない?陛下に直接話したい事があって」
「えっ!?それは…」
分身の俺が頼むと女性は驚いた後に断るような雰囲気で呟く。
「まあ無理なら自分で探すからいいよ。代理の人に話しても国王陛下までちゃんと伝わるかどうか分からないから直接話したいんだよね」
「あっ…!」
分身の俺は適当な感じで返して理由を話し、勝手に城内を歩き回って階段を探す事にした。
「…すみませーん、執務室ってどこです?ちょっと迷っちゃって」
「執務室、ですか?上の階の東側ですよ」
「ありがとうございます」
階段を登った後に掃除中のメイドの女に声をかけて尋ねると不思議そうにしながらも場所を教えてくれ、分身の俺はお礼を言ってその場から離れる。
…そして更に階段を登って東側に行くと部屋の前に兵士が二人立っている場所を発見。
「すみません、ココって執務室ですか?」
「そうですが…今は陛下がいらっしゃるので、許可の無い者は入れませんよ?」
分身の俺が尋ねると甲冑を着けた近衛兵であろう兵の一人は不思議そうな顔で肯定して注意するように返す。
「あー、じゃあ急用というか、陛下に今すぐに知らせないといけない事があるんでソレを伝えてもらえます?」
「…分かりました。陛下、今伝令のような者が来ておりますが…」
分身の俺の用件を聞いて兵はドアをノックした後にドアを少し開いて報告するように確認を取った。
「伝令だと?今忙しいから後にしてくれ!」
「申し訳ございませんが、お引き取り下さい」
「5分もかからないと思いますので、あと一回お願いします。これで無理なら諦めますんで。本当に早急に伝えないといけないんですよ」
おっさんのような声での返答が聞こえると兵はドアを閉めて入室を拒否するが分身の俺は乱暴な手段は取りたくないので再度頼み込んだ。
「…陛下。5分もかからずに早急にお伝えしなければ、と仰ってますが…」
「…分かった。今から5分カウントしろ」
「はっ!どうぞ」
「ありがとうございます」
兵の嫌そうな顔での報告に許可が降り、もう一人の兵が指折り数え始めるとドアが開くので分身の俺はお礼を言いながら入室する。
アーデンのセリィア方面で交戦していた味方の軍勢が敗れたとの報告が。
なので分身の俺は兵の指揮権を一時的に譲渡するよう交渉したが失敗に終わる。
「…もうこの国はダメだね」
「『まだ最終防衛線が残っている』と言われても今の様子では…」
…宿屋で分身の俺の報告を聞くと分身の二人は呆れて諦めたような反応を見せた。
「まあとりあえずお偉いさん辺りには今から避難するよう呼びかけてみるか。首都防衛戦になったら避難も難しくなるだろうし」
「でも今の状況で聞き入れてくれるのかい?そもそも情報が伝わらないんじゃ?」
分身の俺は最悪の展開に備えて今の内に対策を取る事を告げると分身の女性が否定的な感じで返してくる。
「多少強引にでも直接会って話してみるしかないね」
「…大丈夫ですか?」
「へーきへーき。現状かなり危ないところまで来てるんだからもはやどう思われても知ったこっちゃ無いし、政府に俺の無礼や失礼を報告されたとて今の状況なら仕方ない…って行動の正当性を認めてくれるでしょ」
「だといいんですが…」
分身の俺がそう返すと分身のお姉さんは心配したように確認し、分身の俺の楽観的な返答に微妙な顔をしながら呟いた。
「そもそも最初から素直に俺に兵を貸してくれればこんな事態に陥ってないから。ニャルガッズの前例もあるし」
「「…確かに」」
分身の俺の発言に分身の二人は少し考えて同時に納得する。
「じゃ、とりあえず俺は王様に話をしに行くから」
「…そんな友達に会いに行くような気軽さで…?」
「まああんたなら心配いらないか」
分身の俺が行動の予定を告げて立ち上がると分身のお姉さんがなんとも言えないような顔で呟き、分身の女性は笑って返す。
ーーー
「…なにかご用ですか?」
「ちょっと急用が出来て。今すぐ陛下に話す事があるんだけど…」
「陛下に?」
「少々お待ちください」
城に行くと門の前の兵に用件を尋ねられ、分身の俺が嘘ではないけど本当でもない…微妙な感じのでまかせを言うと兵の一人が不思議そうな顔をして別の兵が確認しに行く。
「…お待たせしました。陛下は今お忙しいようで、代理の者が対応いたしますので…中でお待ち下さい」
「ご苦労さん」
5分ほどで戻って来た兵が報告して門を開けてくれ、分身の俺は労いの言葉をかけて門を潜って中庭へと入った。
「…部屋へと案内いたします」
「よろしく」
…中庭を歩いているとメイドのような女性が小走りで駆け寄り、声をかけてくるので分身の俺はそのまま女性に案内されるがまま後をついて行く。
「ところで陛下は執務室にいるの?」
「あ、はい。今の時間であれば執務中のはずです」
「へー。城の中に執務室ねぇ…」
「王座の間と同じ階にあります」
分身の俺の問いに女性は肯定して答え、場所を聞こうかどうか迷って呟くと普通に場所を教えてくれる。
「その執務室に案内してくれない?陛下に直接話したい事があって」
「えっ!?それは…」
分身の俺が頼むと女性は驚いた後に断るような雰囲気で呟く。
「まあ無理なら自分で探すからいいよ。代理の人に話しても国王陛下までちゃんと伝わるかどうか分からないから直接話したいんだよね」
「あっ…!」
分身の俺は適当な感じで返して理由を話し、勝手に城内を歩き回って階段を探す事にした。
「…すみませーん、執務室ってどこです?ちょっと迷っちゃって」
「執務室、ですか?上の階の東側ですよ」
「ありがとうございます」
階段を登った後に掃除中のメイドの女に声をかけて尋ねると不思議そうにしながらも場所を教えてくれ、分身の俺はお礼を言ってその場から離れる。
…そして更に階段を登って東側に行くと部屋の前に兵士が二人立っている場所を発見。
「すみません、ココって執務室ですか?」
「そうですが…今は陛下がいらっしゃるので、許可の無い者は入れませんよ?」
分身の俺が尋ねると甲冑を着けた近衛兵であろう兵の一人は不思議そうな顔で肯定して注意するように返す。
「あー、じゃあ急用というか、陛下に今すぐに知らせないといけない事があるんでソレを伝えてもらえます?」
「…分かりました。陛下、今伝令のような者が来ておりますが…」
分身の俺の用件を聞いて兵はドアをノックした後にドアを少し開いて報告するように確認を取った。
「伝令だと?今忙しいから後にしてくれ!」
「申し訳ございませんが、お引き取り下さい」
「5分もかからないと思いますので、あと一回お願いします。これで無理なら諦めますんで。本当に早急に伝えないといけないんですよ」
おっさんのような声での返答が聞こえると兵はドアを閉めて入室を拒否するが分身の俺は乱暴な手段は取りたくないので再度頼み込んだ。
「…陛下。5分もかからずに早急にお伝えしなければ、と仰ってますが…」
「…分かった。今から5分カウントしろ」
「はっ!どうぞ」
「ありがとうございます」
兵の嫌そうな顔での報告に許可が降り、もう一人の兵が指折り数え始めるとドアが開くので分身の俺はお礼を言いながら入室する。
68
お気に入りに追加
1,047
あなたにおすすめの小説

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?
伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します
小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。
そして、田舎の町から王都へ向かいます
登場人物の名前と色
グラン デディーリエ(義母の名字)
8才
若草色の髪 ブルーグリーンの目
アルフ 実父
アダマス 母
エンジュ ミライト
13才 グランの義理姉
桃色の髪 ブルーの瞳
ユーディア ミライト
17才 グランの義理姉
濃い赤紫の髪 ブルーの瞳
コンティ ミライト
7才 グランの義理の弟
フォンシル コンドーラル ベージュ
11才皇太子
ピーター サイマルト
近衛兵 皇太子付き
アダマゼイン 魔王
目が透明
ガーゼル 魔王の側近 女の子
ジャスパー
フロー 食堂宿の人
宝石の名前関係をもじってます。
色とかもあわせて。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~
小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ)
そこは、剣と魔法の世界だった。
2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。
新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・
気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。

生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる