子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題！

青年期 223

…そして昼飯を食べた後に街中を観光しての夜。


「さて…じゃあ師匠、ローズナーまでは送って行きますので…娘二人の家庭教師の件、よろしくお願いします」

「ああ、任された」


分身の俺は国に帰る前に男に確認しながら王都の外へと出た。


「…ん？待てよ。あの二人は…？」


分身の俺が変化魔法でドラゴンに変身して伏せると男は分身のお姉さんや女性を待つように尋ねる。


「…ああ、大丈夫ですよ。とりあえず行きましょう」

「…分かった」


既にあの二人の分身は解除してるので分身の俺が適当な感じで誤魔化すように言うと、男は微妙な顔をしながらも察したかのように呟いて分身の俺の背中に乗った。


「では行きます」

「ああ。よろしく頼む」


分身の俺の合図に男は了承するように返し、分身の俺は地面を蹴って斜め上に跳ぶように飛行を始めてローズナーの家へと向かう。



…ニャルガッズの王都から高速飛行する事、約一時間半ほどで目的地であるローズナーの町が見えて来る。



「…では、降ります」

「ああ」


分身の俺は合図をして変身を解き、変化魔法の極技その2を使って自分と男をスライム化しながら落下した。


「…ふっ」


すると男は意味が無いにも関わらずまたしても着地の瞬間に完璧な受け身を取り始める。


「流石師匠。まぐれや奇跡は二度続く事は無いので、完全に実力ですね」

「…あまり意味は無いがな」


分身の俺が技術を褒めると男は照れたように謙遜して返す。


「…あっ！」

「…もう着いたのかい…？」


…そして町の中に入り、分身のお姉さんや女性が住んでいる家へと案内しようと歩いてると…


前から分身のお姉さんと女性が歩いてきて分身の俺と男を見ながら驚いたように駆け寄って来た。


「…ど、どういう事だ…！？なぜ、まだニャルガッズの王都に居るハズの彼女達が先に…！？」

「あー…えーと…」

「そう言えば…言うの忘れてましたね」


駆け寄って来た二人を見て男が驚愕した様子を見せ、分身の俺が説明に困りながら呟くと分身のお姉さんも微妙な感じで笑って呟く。


「とりあえずそこらへんを説明しますので、ついて来て下さい。子供は？」

「今日はあたしの家で寝てるよ」

「じゃあ先生の家に行こうか」

「そうですね」


分身の俺は男に指示を出して子供の事を尋ねると分身の女性が答え、起こさないように行き先を決めたら分身のお姉さんも賛同する。


「こっちです」

「あ、ああ…」


分身のお姉さんが案内するように先導すると男は困惑したまま後からついて来た。


「…ココが私の家になります」

「ほう…？豪邸じゃないか」

「あたしの家はココからもう少し行ったところだね。子供達は今日はソコで寝てるよ」

「…なぜそのような…？」


10分ぐらい歩いたところにある大きな庭と建物の家に着くと男は意外そうに言い、分身の女性が自分の家のある方向を指でさしながら教えると男が不思議そうに呟く。


「万が一刺客とかに狙われた時に、狙いを分散させるためです」

「まあそんな事は起きないと思うんだけどね」

「念の為だよ」

「なるほど」


分身のお姉さんが理由を話すので分身の俺が肩をすくめながら否定的に返すも分身の女性が笑って保険的な事を言い、男は納得したように返した。


「お帰りなさいませ」

「ただいま」

「おや、旦那様までご一緒とは…珍しい」


家の中に入るとメイド長のようなおばさんが出迎えてくれ、分身の俺を見ると少し驚いたように意外そうに言う。


「まあ、ちょっとね」

「お客様もおられるという事で紅茶の方をご用意しております」

「「「ありがとう」」」


分身の俺の適当な返事におばさんは特に反応する事もなく、もてなしの用意をしていた事を告げるので分身の俺らのお礼の言葉が被る。


「…使用人までいるのか」

「全員で10名居ます。たまに来る庭師とかを含めたら12名ですね」

「あたしのトコも同じだよ。やっぱり家が大きくて庭が広いとどうしても一人じゃ…ね」


意外そうに呟く男に分身のお姉さんが人数を教えると分身の女性も同じように教えた後に理由を話す。


「確かにそうだな」

「まあ金には困ってないし雇用も生み出せるから丁度良いでしょ」

「それもそうだね」

「はい」


男が納得すると分身の俺も肯定的に捉えたような言い方をしたら分身の女性とお姉さんが同意するように返した。


「…では、ごゆっくり」


…応接室に案内し終わるとおばさんは頭を軽く下げて退室する。


「…おお。この紅茶美味いな」

「ダスターン産の高級茶葉だとか」

「へー…」

「…では早速教えてくれ。どうやって彼女達は我々よりも早くココに戻って来れたんだ？」


分身の俺がテーブルの上に置かれてる紅茶を飲んで感想を言うと分身のお姉さんが銘柄を話し、男は紅茶を一口飲んだ後に疑問を尋ねた。


「分身を解除しました」

「『分身』？」

「はい。ちなみに俺も分身で、師匠は本体の俺とは一回も会ってません」

「？？？…どういうことだ？」


分身の俺は簡潔に答えた後に今までの事をバラすも男は理解できないような顔をして不思議そうに確認してくる。