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青年期 189

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「ヴォードル様!敵が二名こちらに向かって来ています!」

「…なんだと?」


…敵兵達の撤退を待っていると城壁の上の見張りの兵が報告してきた。


「敵兵二名は非武装に見えますが…攻撃いたしますか?」

「…いや、非武装ならそのまま砦内に迎え入れよ。何かあればこちらで対処する」

「はっ!」


兵の確認に青年は拒否して指示を出すと兵が了承するように返事をしてポーズを取り、他の兵達へと伝えに行く。


「二名…という事は先程の兵でしょうか?」

「分からん…が、非武装という事は何か話があるやもしれん」


分身に俺が予想を話すと青年が何とも言えない感じで呟いて返すと敵兵の目的を予想するように言う。


…そして分身の俺らが砦の門へと行くと直ぐに開き…


門の向こうにはさっき一騎打ちで負けた敵兵の二人が立っている。


「…何用だ?」

「チッ…コイツが要らん約束をしたようだから、ソレを果たしに来たまでだ」

「約束だと…?」

「約束通り一騎打ちで負けたからには捕虜になってやる。さっさと身代金の交渉をして解放しろ」


青年の問いに敵兵の一人が舌打ちして用件を告げ、青年が怪訝そうに聞くともう一人の敵兵が分身の俺を見ながら上から目線で命令してきた。


「ああー、はいはい。真面目というか…律儀だねぇ」

「武人たるもの一騎打ちでの約束を反故しようものならば名が廃る。特に兵を率いる立場ともなれば周りに示しがつかん」

「面目が立たないと人がついてこないからな…ったく、要らん約束しやがって…まあ負けた俺が言えた事じゃないが…」


分身の俺が笑いながら弄るように言うと敵兵の一人は面白くなさそうに理由を話し、もう一人の敵兵も同じような顔で賛同するも微妙な顔で呟く。


「…捕虜の扱いと交渉の方、任せてもよろしいですか?」

「…いいのか?」


分身の俺は恩を売るために青年の顔を立てて譲るように言うと青年が驚いたように確認してくる。


「自分は戦いに関わる駆け引きや交渉は得意ですが、政治的な駆け引きや交渉にはあまり向いてませんので…」

「ではありがたく。捕虜は逃亡の恐れが無ければ客人として丁重に扱おう」


分身の俺が謙遜するように言うと青年は軽く頭を下げて感謝の意を示し、敵兵二人を見て警戒するように扱いについて言及するも…


「はっ、誰が逃げるか」

「ドードルの武人たる我々を侮辱する気か」


敵兵二人は青年に反発するような感じで反論した。


「ははは。ではお願いします」

「うむ。任された」


分身の俺がその様子を見て笑って再度任せるように言うと青年は頷いて了承する。


…その後、敵軍が撤退するのを確認して分身の俺は帰る振りして分身を解いた。


それから一週間後。


ガウ領の税金を倍納めた事と、西や南での国境防衛戦に何度も援軍として加勢した功績を認められ…


陞爵して『男爵』から『子爵』になり、更にガウ領とローズナー領の間にある『ヴェリュー領』を貰う事に。


「おめでとうございます」


…式が終わって拠点の本部に戻るとお姉さんが祝いの言葉をかけてくる。


「…爵位が上がるって珍しいよね。普通は領地で変わるハズなのに」

「そうなんですか?」

「そうそう。だから俺は『ローズナー男爵』や『ガウ男爵』だったワケじゃん?本来ならヴェリュー領も男爵領だから『ヴェリュー男爵』になるはずだったのに」

「へー…そうだったんですね」


俺の不思議に思いながらの発言にお姉さんも不思議そうに聞き、肯定して軽く説明すると意外そうに返す。


「でもヴェリュー領って意外と良い所が貰えましたね」

「そだね。ガウとローズナーに近いから管理がし易いし」

「それにそこそこ立地も良いので田舎の中でも結構都会寄りに発展してますから」


お姉さんが嬉しそうに言うので俺も賛同するとヴェリュー領について話してきた。


「…でも北の範囲に入ってるからまた伯爵から動員令が来そうだけど…まあ断ればいいか」

「…えーと…兵の数がローズナー4000でガウが3500ですよね?」

「防衛として動員出来る数はそれぐらいかな」

「ヴェリュー領で3000動員出来れば一万超えますよ!」


俺は面倒くさ…と思いながら予想を言うとお姉さんは考えるように兵の数を確認し、条件をつけて肯定するとお姉さんが万の大台に乗る事を喜ぶ。


「まあ一万も動員出来れば防衛戦もかなり楽になるだろうね」

「猟兵隊の10倍ですよ!10倍!」

「…半年ぐらいしたら合同演習にヴェリューの兵も加えてみよう」


俺が適当に返すとお姉さんは尚も喜びながら数を強調してくるので俺は訓練の計画を立てるように言う。


「万の大軍を指揮する事になればみんなも流石に緊張するのでは?」

「どうだろ?とりあえず最低でも1500人ぐらい動員出来れば団員合わせて一万超えるワケだから…ライツが来てもどうにかなりそうだ」

「坊ちゃんなら半分の5000人でも余裕で返り討ちに出来るでしょう?」

「まあね」


お姉さんの笑いながらの弄るような問いに俺が適当に返して予想するとお姉さんはまたしても笑いながら弄るように言い、俺は肯定する。
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