子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神

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青年期 190

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その更に二週間後。


どうやら北の国境付近ではライツの軍勢に押されているらしく…


ウィロー伯爵や北方騎士団の健闘むなしく国境を突破されたようで、安定している東の国境付近を守るロマズスル辺境伯が増援を送ったとの事。


ちなみに俺のところにも毎週のように動員令が届いているが理由を付けて拒否している。


「…団長、聞いたか?北の国境の話」


…自室のドアがノックされると隊長の一人がドアを開けて入って来ながら確認してきた。


「国境を突破されたって話でしょ?」

「北方騎士団が居ても苦戦してるみたいですね」

「…俺達は動かなくていいのか?」


俺が報告書を机の上に置きながら聞くとソファに座って本を読んでいたお姉さんも答え、隊長が指示を仰ぐように確認する。


「まだ大丈夫。ウィロー領が突破されてからだね、俺らの出番は」

「…本当に大丈夫なのか?そんなに遅く動いて…」


俺の返答に隊長は心配するように再度確認し、不安そうに呟く。


「今動いてもウィロー伯爵が助かって得するだけで俺らには何のメリットも無いからこれ以上敵対派閥を助ける義理も無いでしょ」

「一応ロマズスル辺境伯が支援するみたいですので、ある程度の間は持ち堪える事が出来るのでは?」

「…国防の問題にも関わってくるぞ?いいのか?それで」


俺が動員令を拒否して静観を決め込んでる理由を教えるとお姉さんが補足するように言い、隊長は尚も心配した様子で聞いた。


「ウィロー伯爵も領民達は避難させてるだろうし…そもそも騎士団不在とかならともかく、今は戦力十分なんだから俺らが行かなくても平気だって」

「…そうか。分かった」

「まあもしアッチに家族が居て、故郷が心配…っていう団員がいるんならしょうがない。俺らも動こうか」

「そうだな…聞いてみよう」


俺の楽観的な意見に隊長が息を吐いて了承するように言うので…


俺が団員に配慮するように告げると隊長は少し考えて肯定するように返して部屋から出て行く。


「援軍に行くんですか?」

「いや?団員の家族や故郷を防衛しにいくだけだよ。敵が来ないんなら関わらない」

「なるほど」


意外そうに聞いてきたお姉さんに俺は否定して意味合いが援軍とは若干違う事を告げると笑って納得するように返した。


「とりあえず俺ら『猟兵隊』の名はそこそこ売れてるだろうから、特定の村や町の防衛をする…ってライツに知らせれば面倒になって避けてくれるかもしれないでしょ?」

「そうですね…わざわざ戦力を減らして不利になるような事はしない、と思いたいですが…」


俺が期待するように予想するとお姉さんは考えながら微妙な感じで呟く。


「逆に好戦的な奴らは寄って来そうだけど…上が許可するかな?」

「どうでしょう?戦況の余裕の有無で違うと思います」

「…そう考えるとウィロー伯爵には頑張ってもらわないとね」

「ですね」


俺の笑いながらのボケるような問いにお姉さんは真面目に答え、おどけるように言うとお姉さんも笑って賛同する。


…翌日。


隊長達が団員達に話を聞いた結果…俺ら猟兵隊が動く必要は無く、そのまま静観する事に。


「…そういえば…ライツがウィロー領を突破して来たら私達はローズナーに防衛に行くんですよね?」

「うん」

「仮に私達がライツによるローズナー領への侵攻を退けたとしても、ウィロー領は確実にライツに奪われてますし…国土が減ると流石に兵を出さなかった事を突かれるのでは?」


自室で俺が報告書を読んでいるとお姉さんがふと思い出したように確認し、その後の事を予想して心配しながら聞いてきた。


「ローズナーを防衛してるだけだったらそうなるだろうね」

「と言う事は…逆にライツに攻勢をかける計画があるんですか?」

「そうそう。ローズナーを防衛した後は反撃して国境まで追い返す」


余裕があれば国境を越えて侵攻するつもりだけど…と、俺はお姉さんの察したような確認に肯定して考えを告げる。


「なるほど…でも大変そうですね」

「一騎打ちを何回か仕掛けて撤退させれば良いと思うよ。無理なら指揮官を何人か捕まえて捕虜にして辺境伯みたいに交渉すれば良いし」

「あ…!もしかしてそのために捕虜を辺境伯に渡したんですか!?」

「ん。恩を売れて手本も見れる…正に一石二鳥」


納得して考えるように呟いたお姉さんに俺が楽観的に方法を教えるとまたしても察したように驚きながら確認するので俺は肯定して笑う。


「まあ捕虜はたまたま棚からぼたもち状態だったから完全に偶然で俺の計画には無かったけど」

「…計画って…一体いつから考えてたんですか…?」

「ウィロー伯爵がガウ領を引き継いだ時から。俺が敵国ならその隙を絶対に見逃さないし、勝って油断してる状態ならソバルツと最初に戦った時と同じく一気に流れを持っていけるからね」


俺が誤解されないように訂正するとお姉さんは信じられないかのような反応で呟き、俺は戦争系の戦略ゲームをプレイしてる感覚で答えた。


「…そんな前から…?」

「そりゃ強大な敵を潰すためには時間はいっぱいかかるものだよ。特に派閥が関係してくると直接手は出せないし」

「…!流石は坊ちゃん!そこまで考えているとは…!」


お姉さんの呟きに俺が説明するように返すとお姉さんは目をキラキラさせるように褒めてくる。
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