252 / 480
青年期 188
しおりを挟む
…次の一騎打ちが始まる前に敵陣の方から二人の兵が来て、倒れている敵兵を回収して行くのを待つ。
「…あー…そっか。俺らが回収しとけば前みたいに捕虜として身代金が取れたのに…残念」
「…ならば万が一俺に勝つ事が出来れば捕虜になってやる」
「お、ほんと?でも俺は負けても捕虜にはならないよ」
「ふっ…貴様の負けは死と同義よ。奇跡的に生き残る事が出来たのなら見逃してやる」
分身の俺がふと思いついて悔しがりながら言うと敵兵は余裕の発言をし、分身の俺の確認と拒否に笑って格上の余裕を見せつけるかのように返してくる。
「いやー、ありがたい」
「…来い」
分身の俺が馬鹿にするような含みを持たせた感謝の言葉を告げると敵兵は剣を構えて先手を譲るように開始の合図をした。
「…じゃあ遠慮なく」
分身の俺は普通にスタスタ歩いて距離を詰めながら薙刀のような槍を斜め後ろに振り上げ、敵兵の目の前で思いっきり振り下ろす…
「っ…!」
瞬間に握る力を弱めて持ち手を短くして突くと敵兵は驚きながらも飛び退くように避けるが、槍の長さを活かして範囲を伸ばすように握りを甘くすると敵兵に当たる。
が、鎧を着けているので多少当たった程度ではダメージを与えられなかった。
「…はっ!」
「…槍術はやりにくいな…刃があると打撃じゃなくなるから鎧通しとか難しいし…」
敵兵は直ぐに前に飛ぶように距離を詰めて剣を振るってきて、分身の俺は槍の刃で打ち合うようにガードしながら愚痴を呟く。
「ふっ!もらっ…」
「あ」
「ぐっ…!」
敵兵が強い力で槍を横に大きく弾き、素早く上段に構えて一刀両断しようとするが分身の俺は弾かれた勢いを利用して槍をクルッと回して敵兵の側頭部を叩く。
…いつもの鉄の棒ならば今ので発勁や鎧通しの応用で脳に衝撃を与えて倒せたが…使い慣れない槍ではただの打撃になってしまい、敵兵はよろめいただけだった。
「よっ、と!」
「くっ…!」
分身の俺はとりあえず一発蹴りを入れて軽く吹っ飛ばした後に素早く追うように距離を詰める。
「せいっ!」
「ちっ!」
「もらった!」
敵兵が転がったにも関わらず分身の俺が振り下ろした槍を体勢不十分なまま…地面に膝を着いたまま剣で受けるようにガードし、分身の俺はそのまま体重をかけて押し倒す。
「かっ…!」
そしてさっきの時と同じく敵兵の首を絞めて落とした。
「…ふう…この勝負も俺の勝ちだ!」
分身の俺が一息吐いて青龍刀のような剣を拾って薙刀のような槍と一緒に両手で掲げるように上げながら勝利を宣言すると敵陣がざわつく。
「んじゃ、今日中に撤退よろしく」
分身の俺は空間魔法の施されたポーチを持っていないので、戦利品として勝ち取った剣と槍を倒れた敵兵の隣に投げて敵陣に向かって指示を出す。
「流石だな。敵の技量も中々のものだったが…やはりゼルハイト卿には及ばんか」
「ありがとうございます。武器を使った技量は高くても強化魔法の練度が今ひとつ…でした。同格や格下相手なら安定して勝てそうですが…不安定でも爆発力が無いと格上には食い下がる事しか出来ないと思います」
…砦に戻ると青年が出迎えてくれ、嬉しそうに褒めてくるので分身の俺はお礼を言って戦った感想と相手の評価を告げる。
「ふっ…変化魔法を使うまでも無い相手…という事か」
「いえ、自分は基本的に一騎打ちで魔法を使う事はありません。使わなくても勝てますので」
「ほお?そうなのか?」
「はい。本職に比べたら稚拙な強化魔法といえ、使えば相手を殺してしまう可能性が高くなるので…実力が拮抗してて気にしてる余裕が無い時ぐらいだと思います。使う時がくるとすれば」
「なるほど…」
青年の勘違いするような発言に分身の俺が否定すると意外そうな顔で聞き、強化魔法すら使わない理由を話すと納得したように呟く。
「…ん?『強化魔法』?『変化魔法』ではなくてか?」
「はい。俺が変化魔法を人相手に使うと瞬殺してしまうので戦いにすらなりません」
「…ははは!流石はマスタークラスのハンターだ!強さの底が見えんな!」
青年がふと気づいたように指摘し、分身の俺は肯定して返すと青年は一瞬ポカンとした後に声を上げて笑う。
「…しかしそうなるとゼルハイト卿が変化魔法とやらを使用する状況になる場合…そして使用したら一体どうなるのか…興味が湧いてくる」
「…そうですね…南の国境、侯爵の所のソバルツとの防衛戦の…詳細の方はご存知ですか?」
「ああ。国境で戦いが起きた場合には他の伯爵や侯爵、辺境伯と連絡を回しているので委細承知している」
ニヤリと笑った青年に分身の俺が少し考えて確認を取ると肯定して軽く説明してくれる。
「ソバルツから馬を大量に敵から奪ったのは変化魔法の技術によるものです」
「…は…?」
「一騎打ちで使う事はありませんが、戦争や集団戦となれば話は別でして…こちらの被害を最小限に抑えるためにはなるべく合理的な手段を取るようにしています」
なので分身の俺がぶっちゃけるように告げると青年は理解出来ないような感じで返し、分身の俺はそう説明するように話した。
「…な、なるほど…?」
「ですがこの前のドードルとの戦いでは使ってません。使う場面が無かったので」
「…そ、そうか」
青年が困惑しながら呟くので疑問を聞かれる前に先に嘘を教えると青年は困惑した反応のまま答える。
「…あー…そっか。俺らが回収しとけば前みたいに捕虜として身代金が取れたのに…残念」
「…ならば万が一俺に勝つ事が出来れば捕虜になってやる」
「お、ほんと?でも俺は負けても捕虜にはならないよ」
「ふっ…貴様の負けは死と同義よ。奇跡的に生き残る事が出来たのなら見逃してやる」
分身の俺がふと思いついて悔しがりながら言うと敵兵は余裕の発言をし、分身の俺の確認と拒否に笑って格上の余裕を見せつけるかのように返してくる。
「いやー、ありがたい」
「…来い」
分身の俺が馬鹿にするような含みを持たせた感謝の言葉を告げると敵兵は剣を構えて先手を譲るように開始の合図をした。
「…じゃあ遠慮なく」
分身の俺は普通にスタスタ歩いて距離を詰めながら薙刀のような槍を斜め後ろに振り上げ、敵兵の目の前で思いっきり振り下ろす…
「っ…!」
瞬間に握る力を弱めて持ち手を短くして突くと敵兵は驚きながらも飛び退くように避けるが、槍の長さを活かして範囲を伸ばすように握りを甘くすると敵兵に当たる。
が、鎧を着けているので多少当たった程度ではダメージを与えられなかった。
「…はっ!」
「…槍術はやりにくいな…刃があると打撃じゃなくなるから鎧通しとか難しいし…」
敵兵は直ぐに前に飛ぶように距離を詰めて剣を振るってきて、分身の俺は槍の刃で打ち合うようにガードしながら愚痴を呟く。
「ふっ!もらっ…」
「あ」
「ぐっ…!」
敵兵が強い力で槍を横に大きく弾き、素早く上段に構えて一刀両断しようとするが分身の俺は弾かれた勢いを利用して槍をクルッと回して敵兵の側頭部を叩く。
…いつもの鉄の棒ならば今ので発勁や鎧通しの応用で脳に衝撃を与えて倒せたが…使い慣れない槍ではただの打撃になってしまい、敵兵はよろめいただけだった。
「よっ、と!」
「くっ…!」
分身の俺はとりあえず一発蹴りを入れて軽く吹っ飛ばした後に素早く追うように距離を詰める。
「せいっ!」
「ちっ!」
「もらった!」
敵兵が転がったにも関わらず分身の俺が振り下ろした槍を体勢不十分なまま…地面に膝を着いたまま剣で受けるようにガードし、分身の俺はそのまま体重をかけて押し倒す。
「かっ…!」
そしてさっきの時と同じく敵兵の首を絞めて落とした。
「…ふう…この勝負も俺の勝ちだ!」
分身の俺が一息吐いて青龍刀のような剣を拾って薙刀のような槍と一緒に両手で掲げるように上げながら勝利を宣言すると敵陣がざわつく。
「んじゃ、今日中に撤退よろしく」
分身の俺は空間魔法の施されたポーチを持っていないので、戦利品として勝ち取った剣と槍を倒れた敵兵の隣に投げて敵陣に向かって指示を出す。
「流石だな。敵の技量も中々のものだったが…やはりゼルハイト卿には及ばんか」
「ありがとうございます。武器を使った技量は高くても強化魔法の練度が今ひとつ…でした。同格や格下相手なら安定して勝てそうですが…不安定でも爆発力が無いと格上には食い下がる事しか出来ないと思います」
…砦に戻ると青年が出迎えてくれ、嬉しそうに褒めてくるので分身の俺はお礼を言って戦った感想と相手の評価を告げる。
「ふっ…変化魔法を使うまでも無い相手…という事か」
「いえ、自分は基本的に一騎打ちで魔法を使う事はありません。使わなくても勝てますので」
「ほお?そうなのか?」
「はい。本職に比べたら稚拙な強化魔法といえ、使えば相手を殺してしまう可能性が高くなるので…実力が拮抗してて気にしてる余裕が無い時ぐらいだと思います。使う時がくるとすれば」
「なるほど…」
青年の勘違いするような発言に分身の俺が否定すると意外そうな顔で聞き、強化魔法すら使わない理由を話すと納得したように呟く。
「…ん?『強化魔法』?『変化魔法』ではなくてか?」
「はい。俺が変化魔法を人相手に使うと瞬殺してしまうので戦いにすらなりません」
「…ははは!流石はマスタークラスのハンターだ!強さの底が見えんな!」
青年がふと気づいたように指摘し、分身の俺は肯定して返すと青年は一瞬ポカンとした後に声を上げて笑う。
「…しかしそうなるとゼルハイト卿が変化魔法とやらを使用する状況になる場合…そして使用したら一体どうなるのか…興味が湧いてくる」
「…そうですね…南の国境、侯爵の所のソバルツとの防衛戦の…詳細の方はご存知ですか?」
「ああ。国境で戦いが起きた場合には他の伯爵や侯爵、辺境伯と連絡を回しているので委細承知している」
ニヤリと笑った青年に分身の俺が少し考えて確認を取ると肯定して軽く説明してくれる。
「ソバルツから馬を大量に敵から奪ったのは変化魔法の技術によるものです」
「…は…?」
「一騎打ちで使う事はありませんが、戦争や集団戦となれば話は別でして…こちらの被害を最小限に抑えるためにはなるべく合理的な手段を取るようにしています」
なので分身の俺がぶっちゃけるように告げると青年は理解出来ないような感じで返し、分身の俺はそう説明するように話した。
「…な、なるほど…?」
「ですがこの前のドードルとの戦いでは使ってません。使う場面が無かったので」
「…そ、そうか」
青年が困惑しながら呟くので疑問を聞かれる前に先に嘘を教えると青年は困惑した反応のまま答える。
43
お気に入りに追加
1,047
あなたにおすすめの小説

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?
伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します
小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。
そして、田舎の町から王都へ向かいます
登場人物の名前と色
グラン デディーリエ(義母の名字)
8才
若草色の髪 ブルーグリーンの目
アルフ 実父
アダマス 母
エンジュ ミライト
13才 グランの義理姉
桃色の髪 ブルーの瞳
ユーディア ミライト
17才 グランの義理姉
濃い赤紫の髪 ブルーの瞳
コンティ ミライト
7才 グランの義理の弟
フォンシル コンドーラル ベージュ
11才皇太子
ピーター サイマルト
近衛兵 皇太子付き
アダマゼイン 魔王
目が透明
ガーゼル 魔王の側近 女の子
ジャスパー
フロー 食堂宿の人
宝石の名前関係をもじってます。
色とかもあわせて。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~
小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ)
そこは、剣と魔法の世界だった。
2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。
新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・
気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。

生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる