子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神

文字の大きさ
241 / 480

青年期 177

しおりを挟む
…翌日。


朝食後に戦場へと向かうも昨日とは状況が打って変わり、ソバルツの敵兵達が軍を展開せずに本陣の所で守りを固めている。


「ありゃ、珍しい…」

「やはり馬を奪われたのが効いたか…」

「もしかしたら部隊の配置換えとかしてたりして?」

「どうするんだ?そのまま攻めるのか?」


分身の俺が意外に思いながら呟くと隊長達が敵の意図を予想して指示を仰いできた。


「うーん…戻ろうか。他の所も様子見してるみたいだし」

「そうだな、もしかしたら敵の策かもしれん」

「このまま撤退してってくれたら良いのになぁ~…」

「全くだ」


分身の俺は他の兵達も砦の近くから離れていない様子を見て帰還の指示を出し、結局何もする事なく宿営地へと戻る事に。




ーーーーー




「…団長。ちょっといいか?」


…昼過ぎに団員達と木刀で手合わせをしていると別の団員が声をかけて来る。


「…ん?なんかあった?」

「なんか侯爵が団長を呼んでるらしい」

「侯爵が?」

「騎士には団長のテントの前で待つよう伝えたが…」

「分かった、ありがと。じゃ、ちょっと行ってくるわ」


分身の俺の問いに団員がおそらく伝言であろう用件を告げるので確認すると、団員は呼びに来た騎士を待たせてるらしく…


分身の俺はお礼を言って近くの団員に木刀を渡して騎士の所へと向かった。


「お。いやー、すみません。時間があったので団員達と訓練してまして…」

「いや、こちらが事前に連絡もせずに来たのだ。むしろ早急に対応してくれて助かった。感謝する」

「あ、いえ…じゃあ行きましょうか」

「ああ。こっちだ」


分身の俺が謝りながら言い訳をするも声からして女性であろう女騎士は謝罪を拒否するように逆にお礼を言い、分身の俺の促すような言葉に案内するように歩き出す。


「…連れてまいりました」

「入れ」


…今回は家の中で案内役が変わる事はなく、そのまま女騎士がおっさんの居る執務室の前まで来てドアをノックする。


「失礼します」

「では私はこれで失礼します」

「うむ、ご苦労だったな」


分身の俺が部屋の中に入ると女騎士はポーズを取りながら報告し、おっさんが労いの言葉をかけると頭を下げて歩いて行った。


「さて…ゼルハイト卿、また敵軍から軍馬を奪ってこちらに譲ってくれたそうじゃないか。心より感謝申し上げる」

「…いえ」

「…敵から3000頭もの大量の軍馬を奪ったのは変化魔法によるものだな?」


おっさんは珍しくペンを置くと感謝の言葉を言い出し、分身の俺が反応に困りながら返すと…


ほぼ断定してるであろうにも関わらず真偽を確認するかのように尋ねてくる。


「はい」

「…頼みがある。その技術を伝授してくれないか?」

「伝授…ですか?」

「そうだ。もし貴殿と同じ事が出来る兵が一人でも居ればこれからの戦いが楽になる」


分身の俺の肯定におっさんが真剣な顔で頼み事をしてくるので意外に思いながら聞くとその理由を話してきた。


「…それは…自分は構わないですが、変化魔法を学んで習得しようと思う人が居るんですか?」

「…今から希望者を募る」

「…ではもし集まりましたらご連絡下さい」


分身の俺が微妙な顔で確認するとおっさんは難しい顔をしながら返答し、こりゃ自主的には集まらないだろうな…と思いながら返す。


「…分かった。こちらから連絡しよう…多少時間はかかるかもしれんが…」

「では失礼します」

「いや、待て」


おっさんが難しそうな顔をしたままため息を吐きながら言うので、用は済んだだろう…と退室しようとしたら引き止められる。


「変化魔法の技術を伝授するあたって優先すべき特性…どのような能力が必要になる?」

「もしや選別を?」

「余裕があれば行う予定だ」


おっさんの問いかけに分身の俺が軽く驚いて意外に思いながら逆に聞き返すと肯定するように言う。


「そうですね…まずは精神的に強い人が望ましいです。侯爵も知っての通り変化魔法は下手をすれば魔物になる『魔物化』のリスクがある魔法なので」

「精神が強い…か」

「あと魔力の精密操作技術に長けている人も望ましいです。魔物への変身と変身解除が素早く行えると魔力の消費が抑えられますので戦場に長くいられます」

「ほう、確かに継戦も重要だ」


分身の俺の要望におっさんは肯定的な相槌を打ちながら紙にメモを取るような感じで書いていく。


「『技術』だけであれば優先事項はこれぐらいかと」

「なるほど…その者達が貴殿に師事しても同じ事が出来るようになるには10年ほどかかるのか?」


分身の俺がセイレーンの技を使えるようになるだけならこんなもんか…と、思いながら言うとおっさんは前回の話を引き合いに出して確認して来た。


「…そうですね。馬を奪う技術を使えるようになるだけ…であれば3年あれば十分ですが」

「…どういう事だ?貴殿はかなり高度な技術を使用していると?」

「えーと…その…今更大変言いづらいのですが…」

「なんだ?気にせず言ってくれ」


分身の俺の肯定しながらの説明におっさんが不思議そうに確認するので、分身の俺はしまった!と思いながら誤魔化すように言うと先を催促してくる。


「自分が使ってるあの技は敵味方関係なく影響を及ぼすものでして…」

「…なんだと…?」

「効果を最大限に発揮させるには『敵陣に一人で突っ込んで行って使わないといけない』という条件が…」

「…なっ…!?」

「つまり、技を習得してもソレを戦場で使えるようになる…というのに7年以上かかるという事でありまして…」


分身の俺が誤魔化すように技の詳細を話し、驚くおっさんに時間がかかる理由を適当にそれっぽく伝えた。


「…な、なるほど…それで技の習得に3年、ソレをゼルハイト卿と同様に戦場で使えるようになるまでが7年で、合わせて約10年ほどかかるというわけか…」

「はい」

「…つまり、ゼルハイト卿は前回も今回も単騎で敵陣に突っ込んだ…と?」

「はい」


おっさんは納得したかのように情報を整理しながら呟いた後に驚愕した様子で確認し、分身の俺が肯定すると驚きのあまり絶句したような反応になる。
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

追放された荷物持ち、スキル【アイテムボックス・無限】で辺境スローライフを始めます

黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティーで「荷物持ち」として蔑まれ、全ての責任を押し付けられて追放された青年レオ。彼が持つスキル【アイテムボックス】は、誰もが「ゴミスキル」と笑うものだった。 しかし、そのスキルには「容量無限」「時間停止」「解析・分解」「合成・創造」というとんでもない力が秘められていたのだ。 全てを失い、流れ着いた辺境の村。そこで彼は、自分を犠牲にする生き方をやめ、自らの力で幸せなスローライフを掴み取ることを決意する。 超高品質なポーション、快適な家具、美味しい料理、果ては巨大な井戸や城壁まで!? 万能すぎる生産スキルで、心優しい仲間たちと共に寂れた村を豊かに発展させていく。 一方、彼を追放した勇者パーティーは、荷物持ちを失ったことで急速に崩壊していく。 「今からでもレオを連れ戻すべきだ!」 ――もう遅い。彼はもう、君たちのための便利な道具じゃない。 これは、不遇だった青年が最高の仲間たちと出会い、世界一の生産職として成り上がり、幸せなスローライフを手に入れる物語。そして、傲慢な勇者たちが自業自得の末路を辿る、痛快な「ざまぁ」ストーリー!

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

出来損ないと追放された俺、神様から貰った『絶対農域』スキルで農業始めたら、奇跡の作物が育ちすぎて聖女様や女騎士、王族まで押しかけてきた

黒崎隼人
ファンタジー
★☆★完結保証★☆☆ 毎日朝7時更新! 「お前のような魔力無しの出来損ないは、もはや我が家の者ではない!」 過労死した俺が転生したのは、魔力が全ての貴族社会で『出来損ない』と蔑まれる三男、カイ。実家から追放され、与えられたのは魔物も寄り付かない不毛の荒れ地だった。 絶望の淵で手にしたのは、神様からの贈り物『絶対農域(ゴッド・フィールド)』というチートスキル! どんな作物も一瞬で育ち、その実は奇跡の効果を発揮する!? 伝説のもふもふ聖獣を相棒に、気ままな農業スローライフを始めようとしただけなのに…「このトマト、聖水以上の治癒効果が!?」「彼の作る小麦を食べたらレベルが上がった!」なんて噂が広まって、聖女様や女騎士、果ては王族までが俺の畑に押しかけてきて――!? 追放した実家が手のひらを返してきても、もう遅い! 最強農業スキルで辺境から世界を救う!? 爽快成り上がりファンタジー、ここに開幕!

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

処理中です...