240 / 480
青年期 176
しおりを挟む
その後。
国境の砦にいた侯爵の兵達に敵から奪った大量の馬を渡して俺らは宿営地へと帰還する。
「よし、今日の仕事はお終い。明日は右翼の方に行こうか。馬を奪ったから本陣から援軍を出すのも遅れるだろうし」
「そうだな」
「分かった」
「了解」
分身の俺が宿営地で隊長達を集めて予定を話すと隊長達みんなは了承した後に団員達に伝えるため解散していく。
「…ちょっといいかい?」
「ん?」
みんなが居なくなった後に女性が一人戻って来て確認を取った。
「…正直なところ、あんな技が使えるんならあんた一人でソバルツの軍勢なんて簡単に蹴散らせるだろう?」
「まあね」
「じゃあなんでわざわざ猟兵隊を連れてきた?というかなんで傭兵団や私兵団を結成したんだい?」
女性の確認に分身の俺が肯定すると微妙そうな顔で疑問を尋ねてくる。
「ははは。分からない?」
「うん」
「人は一人では生きていけないじゃん?当然人間が一人で出来る事なんてたかがしれてる。俺一人だけ強くても、世の中にはどうにもならない事が溢れてるでしょ?」
分身の俺の笑いながらの確認に女性は微妙な顔のまま返すので…
分身の俺は猟兵隊を連れて来た意味と、猟兵隊を結成した意味を教えた。
「…それは…答えになってないんじゃないか?」
「例えば俺一人で今回の敵を退けたとして、次は相手もそれなりの対策を取るだろうし…相手が本気になってガチガチに対策を立てられたらいくら俺だってどうしようもないよ」
「本当かい?あんたなら敵の策なんて簡単にぶち壊せそうな気がするけど」
女性の納得いかないような返事に分身の俺が説明するも否定的に返される。
「…出来ない事は無いと思うけど…もし敵に俺みたいに強い奴がいたとしても、一人だけならどうとでも対処は出来ると思わない?」
「あ…」
「足止め、隔離、誘導…どんなに強くても一人だけなら時間を稼ぐ方法はいっぱいあるし、多面攻撃をされたらお手上げじゃん」
「…確かに」
分身の俺の視点を変えての解説に女性は理解したように呟き、更に攻略法を話すと納得したように呟く。
「戦場以外でもみんなが居ないと一人では手が回らない事だらけだし」
「…うん。変な事聞いてごめん、でもやっぱりあんたでも一人では出来る事は限られてるんだね」
分身の俺が更に戦い以外での役割を告げると女性はようやく納得いったかのように謝り、なぜか嬉しそうな顔でそう言って団員達のところへと歩いて行った。
…その夜、 分身のお姉さんや女性と夕食を食べていると砦の外の前線で兵達の指揮を執っていた指揮官の一人がテントにやって来る。
「おや、何か用ですか?」
「敵から奪った馬をこちら側に譲ってくれた事についての礼を言いに来た。感謝する」
「あ、はあ…」
分身の俺の問いに指揮官が尋ねて来た理由を話して礼を言い、分身の俺は返答に困りながら返す。
「流石に何度も馬を送られて返礼しないというのも礼を欠く。今は酒しか用意出来ないが是非とも受け取って欲しい」
「酒、ですか?」
「ああ。外の荷車に載せてある」
指揮官の発言に分身の俺は手ぶらじゃねぇか、と思いながら聞くと指揮官は顔をクイっと動かして外に出るよう促すような仕草をした。
「…おお…!こんなにいっぱい、良いんですか?」
「ああ。全ての兵に行き渡るぐらいの量を用意した」
「ありがとうございます。団員達もきっと喜びます」
外に出ると結構な大きさの樽がいくつも載った荷車が10台ほど置かれていて…
分身の俺の確認に指揮官が肯定するので分身の俺は軽く頭を下げながらお礼を言う。
「喜んでもらえると幸いだ。では」
「ありがとうございました」
指揮官は別れの挨拶をしながら手を上げ、荷車を運んで来たんであろう部下の兵士達を連れて町へと戻って行く。
「団長、さっきの兵達は何を運んで来たんだ?」
「アレ全部酒だって」
「酒?」
「ごめん、隊長達を呼んで来てくれない?アレを部隊ごとに分配しないといけないから」
「分かった」
すると団員達が近づいて来て疑問を尋ねてきて、分身の俺は樽の中身を教えた後に団員達にお願いしてテントの中へと戻る。
「どのくらいありました?」
「荷車10台分だからかなりの量だよ。あの指揮官が言うには団員達全員に行き渡るように、って用意したんだと」
「そんなに?」
分身のお姉さんの問いに分身の俺が答えると女性が少し驚きながら確認してきた。
「とりあえず今隊長達に集合かけたから…みんなが来たらあの酒を部隊ごとに取っていってくれない?」
「ああ、分かったよ」
「分かりました」
分身の俺は隊長でもある二人にも指示を出して食事を再開した。
「…にしてもなんで酒なんだかね」
「さあね。俺らは飲まないけど、酒好きって結構多いから贈り物としては無難で絶対に失敗しないからじゃない?」
「…確かに。とりあえず贈り物といえば酒、っていうぐらいですもんね」
「…なるほど…」
女性の疑問に分身の俺が予想で返すと分身のお姉さんも賛同するので女性は納得したように呟く。
国境の砦にいた侯爵の兵達に敵から奪った大量の馬を渡して俺らは宿営地へと帰還する。
「よし、今日の仕事はお終い。明日は右翼の方に行こうか。馬を奪ったから本陣から援軍を出すのも遅れるだろうし」
「そうだな」
「分かった」
「了解」
分身の俺が宿営地で隊長達を集めて予定を話すと隊長達みんなは了承した後に団員達に伝えるため解散していく。
「…ちょっといいかい?」
「ん?」
みんなが居なくなった後に女性が一人戻って来て確認を取った。
「…正直なところ、あんな技が使えるんならあんた一人でソバルツの軍勢なんて簡単に蹴散らせるだろう?」
「まあね」
「じゃあなんでわざわざ猟兵隊を連れてきた?というかなんで傭兵団や私兵団を結成したんだい?」
女性の確認に分身の俺が肯定すると微妙そうな顔で疑問を尋ねてくる。
「ははは。分からない?」
「うん」
「人は一人では生きていけないじゃん?当然人間が一人で出来る事なんてたかがしれてる。俺一人だけ強くても、世の中にはどうにもならない事が溢れてるでしょ?」
分身の俺の笑いながらの確認に女性は微妙な顔のまま返すので…
分身の俺は猟兵隊を連れて来た意味と、猟兵隊を結成した意味を教えた。
「…それは…答えになってないんじゃないか?」
「例えば俺一人で今回の敵を退けたとして、次は相手もそれなりの対策を取るだろうし…相手が本気になってガチガチに対策を立てられたらいくら俺だってどうしようもないよ」
「本当かい?あんたなら敵の策なんて簡単にぶち壊せそうな気がするけど」
女性の納得いかないような返事に分身の俺が説明するも否定的に返される。
「…出来ない事は無いと思うけど…もし敵に俺みたいに強い奴がいたとしても、一人だけならどうとでも対処は出来ると思わない?」
「あ…」
「足止め、隔離、誘導…どんなに強くても一人だけなら時間を稼ぐ方法はいっぱいあるし、多面攻撃をされたらお手上げじゃん」
「…確かに」
分身の俺の視点を変えての解説に女性は理解したように呟き、更に攻略法を話すと納得したように呟く。
「戦場以外でもみんなが居ないと一人では手が回らない事だらけだし」
「…うん。変な事聞いてごめん、でもやっぱりあんたでも一人では出来る事は限られてるんだね」
分身の俺が更に戦い以外での役割を告げると女性はようやく納得いったかのように謝り、なぜか嬉しそうな顔でそう言って団員達のところへと歩いて行った。
…その夜、 分身のお姉さんや女性と夕食を食べていると砦の外の前線で兵達の指揮を執っていた指揮官の一人がテントにやって来る。
「おや、何か用ですか?」
「敵から奪った馬をこちら側に譲ってくれた事についての礼を言いに来た。感謝する」
「あ、はあ…」
分身の俺の問いに指揮官が尋ねて来た理由を話して礼を言い、分身の俺は返答に困りながら返す。
「流石に何度も馬を送られて返礼しないというのも礼を欠く。今は酒しか用意出来ないが是非とも受け取って欲しい」
「酒、ですか?」
「ああ。外の荷車に載せてある」
指揮官の発言に分身の俺は手ぶらじゃねぇか、と思いながら聞くと指揮官は顔をクイっと動かして外に出るよう促すような仕草をした。
「…おお…!こんなにいっぱい、良いんですか?」
「ああ。全ての兵に行き渡るぐらいの量を用意した」
「ありがとうございます。団員達もきっと喜びます」
外に出ると結構な大きさの樽がいくつも載った荷車が10台ほど置かれていて…
分身の俺の確認に指揮官が肯定するので分身の俺は軽く頭を下げながらお礼を言う。
「喜んでもらえると幸いだ。では」
「ありがとうございました」
指揮官は別れの挨拶をしながら手を上げ、荷車を運んで来たんであろう部下の兵士達を連れて町へと戻って行く。
「団長、さっきの兵達は何を運んで来たんだ?」
「アレ全部酒だって」
「酒?」
「ごめん、隊長達を呼んで来てくれない?アレを部隊ごとに分配しないといけないから」
「分かった」
すると団員達が近づいて来て疑問を尋ねてきて、分身の俺は樽の中身を教えた後に団員達にお願いしてテントの中へと戻る。
「どのくらいありました?」
「荷車10台分だからかなりの量だよ。あの指揮官が言うには団員達全員に行き渡るように、って用意したんだと」
「そんなに?」
分身のお姉さんの問いに分身の俺が答えると女性が少し驚きながら確認してきた。
「とりあえず今隊長達に集合かけたから…みんなが来たらあの酒を部隊ごとに取っていってくれない?」
「ああ、分かったよ」
「分かりました」
分身の俺は隊長でもある二人にも指示を出して食事を再開した。
「…にしてもなんで酒なんだかね」
「さあね。俺らは飲まないけど、酒好きって結構多いから贈り物としては無難で絶対に失敗しないからじゃない?」
「…確かに。とりあえず贈り物といえば酒、っていうぐらいですもんね」
「…なるほど…」
女性の疑問に分身の俺が予想で返すと分身のお姉さんも賛同するので女性は納得したように呟く。
44
お気に入りに追加
1,046
あなたにおすすめの小説

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?
伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します
小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。
そして、田舎の町から王都へ向かいます
登場人物の名前と色
グラン デディーリエ(義母の名字)
8才
若草色の髪 ブルーグリーンの目
アルフ 実父
アダマス 母
エンジュ ミライト
13才 グランの義理姉
桃色の髪 ブルーの瞳
ユーディア ミライト
17才 グランの義理姉
濃い赤紫の髪 ブルーの瞳
コンティ ミライト
7才 グランの義理の弟
フォンシル コンドーラル ベージュ
11才皇太子
ピーター サイマルト
近衛兵 皇太子付き
アダマゼイン 魔王
目が透明
ガーゼル 魔王の側近 女の子
ジャスパー
フロー 食堂宿の人
宝石の名前関係をもじってます。
色とかもあわせて。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~
小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ)
そこは、剣と魔法の世界だった。
2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。
新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・
気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる