子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神

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青年期 178

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…それから少し考え、おっさんは技の伝授を諦める判断を下し…計画を破棄するような事を言ったので分身の俺は宿営地に戻った。


「お。戻ってきた」

「何の用だったんだ?」

「もしかして軍議?」


訓練中のみんなの所へと戻ると近くに居た団員達が疑問を聞くように話しかけてくる。


「いや、馬ありがとうだって」

「ほお、流石は団長。侯爵直々に感謝の言葉を告げられるとは」

「あと変化魔法を兵達に教えて欲しいって頼まれたんだけど…計画を立ててる最中に俺の話を聞いてアッチが諦めたから結局パァになった」

「ははは!そりゃそうだろ!」

「普通は変化魔法なんてもんを習得しようとなんて思わねぇからな!」

「団長ぐらいじゃないと直ぐに魔物化するのがオチだから危険すぎる!」


分身の俺が呼び出しの内容を話すと団員が驚きながら意外そうに返し、分身の俺のボケるような続きにみんなが笑っておっさんの判断に同意した。


…その翌日。


出撃の予定を午後にして午前中は休養にあてていると…


昼前になって『敵軍が退却した』との報告が。


…多分馬を奪われてやる気が無くなったんだろうな…と予想。


とりあえず分身の俺は隊長達に宿営地を撤去してから拠点へと帰還するよう指示を出しておっさんの所へと報告に行く。


「…どうやら敵は退却したらしいな」

「はい。そう聞いています」

「ふっ…前回は約50日近く戦いが続いたが、猟兵隊が援軍として加わればたったの二日で敵が逃げ帰るか…」


分身の俺が部屋の中に入るとおっさんが確認するように言い、肯定して返すとおっさんは笑って呟いた。


「しかも前回と違い今回はソバルツも本腰を入れ、約三万もの戦力を投入してきた」

「はあ…」

「素晴らしい戦果だ、ゼルハイト卿」

「…ありがとうございます」


おっさんの比較するような発言に分身の俺が反応に困りながら相槌を打つと急に褒めてくるので一応お礼を言う。


「どうやら貴殿を呼ぶと戦いが早く終わるようだ。最初の傭兵として参加した防衛戦の時も一週間ほどしかかかっていなかった」

「…敵の司令官が優れた人物だからではないですか?引き際を見誤らず、戦力をほとんど減らす事なく時間を空けて何度も攻め続ける計画を立てているように思えますが…」

「うむ。厄介な事に敵も優れた人物が指揮を執っているのだろうな…」


嬉しそうに喜びながら言うおっさんに分身の俺が敵の大将を評価するように予想を話したらおっさんは賛同して真剣な顔で呟く。


「つまりはゼルハイト卿、次もよろしく頼むぞ」

「分かりました。期待に応えられるよう頑張ります」


おっさんのニヤリと笑いながらの期待するような発言に分身の俺が了承して答えると…


「ははは!ウィロー伯爵も馬鹿な事をしたものだ。味方に引き込めば国境の防衛は安泰だったものを…その点ヴォードル辺境伯は上手くやったものよ、流石というべきか」


おっさんは気分を良くしたように笑って政治的な発言をする。



…そして猟兵隊が拠点へと帰還しての二週間後。



どうやらガウの領民達が現領主であるウィロー伯爵に反発し、俺の時と同じく各地でデモ運動だかシュプレヒコールだかの武力を用いない反乱を起こし始めたらしい。


するとやはり『ウィロー伯爵が国に対して反乱や内乱を起こそうとしている』だの『ウィロー伯爵は反逆を目論んでいる』だの噂が出回りだす。


「…ガウ領は大変な騒ぎになってるみたいだ」

「坊ちゃんにやった事が自分に返ってきただけでしょう?」

「どうやって対処するか見ものだね」

「全くです」


俺が報告書を見ながら言うとお姉さんは冷たく突き放すような感じで言い、俺の楽しみながらの返答に賛同する。


「団長。ヴォードル辺境伯が来てるぞ」

「あ、じゃあ通して」

「分かった」


昼前になると団員がいつもの辺境伯が来訪してきた事を伝えてくるので俺は指示を出して机の上の書類を片付けた。


「やあゼルハイト卿。ガウ領の件、面白い事になっているようだな」

「お久しぶりです。みたいですね」


5分もしない内に青年が部屋に入って来て挨拶もそこそこに世間話から始め、俺は挨拶をしてから相槌を打つ。


「どうやらあちらの派閥の方もグラグラと揺れてるようだ。離脱や他の派閥に鞍替えしようと考えている者もいると聞く」

「大変ですねぇ」

「ははは、順調に毒が回っているようで我々からすればありがたい事だ。しかし国防の事を考えると喜んでばかりもいられないがな」


青年の政治的な話に俺が人事のように返すと笑いながら喜ぶも、直ぐに切り替えて懸念する事を告げる。


「ライツはここ数年大人しくしていますが、北の国境付近での緊張状態は続いていますし…隙を見せると狙われるかもしれません」

「うむ。ウィロー伯爵が失脚すればその隙を突いてくる可能性は高いな」

「…あ。そろそろ昼食の時間ですね…食べて行きますか?」

「もちろんだ。そのつもりで来たのだからな」


俺が予想を話すと青年も賛同しながら返し、時計を見るとそろそろ飯の時間なので確認すると青年は笑って冗談を言うように肯定した。


「リクエストなどはありますか?」

「…そうだな、君は何が食べたい?」

「え、私ですか!?…えーと…ここは王道の炭火の『焼肉』で、どうでしょう?もちろんご飯付きで!」

「ではソレで頼む」

「…分かりました。焼肉であれば人が多い方が良いので…一人、呼んでもよろしいですか?」

「ああ、構わない」


俺の問いに青年はお姉さんに話を振り、お姉さんが少し考えてまた面倒な提案をして青年がソレを要求するので…


俺は4人の方が焼肉の雰囲気を出せそうだ…と、嫁である女性を増やすべく確認を取ると青年が快諾してくれ、お姉さんがスッと呼びに行ったのを見て準備を始める。
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