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青年期 140

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その翌日。


「すみません。少しお力を貸していただきたいのですが…」

「…はい?」


お姉さんとの観光中に誰かに急に話しかけられ、振り向くと刺客の一人であったおじさんの姿が。


「あ。あれ?なんでココに?もう見習い達は居ないけど」

「それが…北西に向かっている最中に過激派の襲撃に遭ってしまい…穏健派の兵が守るために交戦に入りましたが、戦力が足りないのです」

「北西?なんで?」

「あそこは中立派と穏健派しか居ないのでいくら過激派と言えどもそう易々とは手が出せないのですよ」


俺の問いにおじさんは困った様子で状況を話し、俺が疑問を尋ねると説明してくれた。


「へー。じゃあ最初っからソコに行っとけば良かったんじゃないの?なんでわざわざ正反対であるドードルの国境付近の町に?」

「過激派が封鎖していまして。その封鎖を解くために色々と手を回し、戦力を分散させるように動いていたんですが…どうやら最低限の警戒網を我々に気づかれないように張っていたらしいのです」


俺は効率悪くね?と思いながら聞くとおじさんはソレが出来なかった理由と、今になって向かった理由、そして失敗した理由を説明する。


「なるほど…でもなんで俺達に?穏健派か中立派に増援を頼めば良くない?」

「私の知る限り貴方の傭兵団が一番強くて頼りになるから、でございます」

「…くっ…そんなん言われたら断れないじゃん…金の請求は穏健派に?」

「ありがとうございます!我々が責任を持って払わせます!」


俺が理解しつつも一番の疑問を尋ねるとおじさんは軽く頭を下げながらおだてるような事を言い、俺は断るのを諦めて報酬の話を聞くとおじさんが喜びながら答えた。


「じゃあ出発の準備をさせるから案内お願い。どこで待ち合わせする?」

「分かりました。北門から出るので…ソコで落ち合いましょう」

「オッケー」


俺の確認におじさんが了承して場所を告げ、俺は傭兵団を動かすために適当な団員の下へと向かう。





ーーーーー





「…では案内します」

「お願い」


…一時間とちょっとぐらいで団員達を集めて都市の北門へと向かうと、おじさんが先導するように馬を走らせ…


団員達がみんな後ろからついて行くのを見て俺は馬車に乗り込んだ。 


「…結局一ヶ月も滞在出来ませんでしたね」

「…まあしょうがない。その分報酬を多めに請求すればいいし」

「…そうですね」


お姉さんの残念そうな呟きに俺も残念に思いながら賛同するように返して金の話に持っていくとお姉さんは気持ちを切り替えたように返す。


「しかし北西か…どれくらいかかるのやら」

「聞いてないんですか?」

「うん。距離も時間も何も聞いてない」


俺が考えるように呟くとお姉さんが意外そうに聞き、俺は何も知らない事を告げる。


「…じゃあ着いてみないと分からない、って事ですね」

「そうなるかな」


するとお姉さんは本を取り出しながら言うので適当な感じで肯定した。


…その日は夜遅くまで移動してどこかの村に入って休憩し、翌日の朝早くにまた移動を開始する。


「…団長。ちょっといいか?」

「ん?…どうした?」


昼過ぎに馬車が止まった…かと思えば団員が声をかけて来た。


「…申し訳ありません…どうやら少女達は過激派に奪われてしまったそうで…」

「えっ!?」

「すまん!せっかく来てくれたのに…!」

「どうにも敵の数が多過ぎて、俺達が退路を確保しようとした隙を突かれたようだ」

「こんな事になるなら下手にその場から動かずに援軍を待つべきだったか…!」


俺が馬車から降りるとおじさんが申し訳無さそうな顔で謝ってきて、男の一人も両手を合わせて謝罪し…


残り二人の男が悔しそうな顔で少女達が敵に奪われた経緯を話す。


「…で、この後どうするの?女の子を取り戻しに行く?それとも終わり?」

「当然奪還だ!」

「俺達を敵に回した事を後悔させてやる!」

「…護衛は性に合わん。やはり立ち塞がる障壁は全て壊して進まないとな」


俺の確認に男達三人はリベンジでも誓うかのようにやる気になりながら言う。


「とりあえず敵が彼女達をどこに連れて行ってるか、を調べないといけませんね…」

「大丈夫だ。鍵の行方はアイツが追っている」

「では連絡があるまで近くの村で待機しておきましょう」


おじさんが考えるように次の行動を呟くと男の一人が既に手を打っているような事を返し、おじさんは予定を立てる。


「近くの村って事は、昨日の?」

「はい。仲間から連絡があるまでは私達はそこで待つ事になります」

「んじゃ、俺らもソコで待機か…」


俺の問いにおじさんが肯定して理由を話すので俺は団員のみんなに指示をして昨日の村まで戻る事にした。


「…なんだか面倒な事になってきましたね」

「全くだ。まさか俺らが着く前に敵に奪われてるとは…」


…馬車の中に戻るとお姉さんが困ったように笑いながら言い、俺はため息混じりで返す。


「でもここまで深入りして大丈夫ですか?」

「金貰う以上は傭兵団としての仕事だからね。別に口出ししてるとかじゃないから大丈夫大丈夫」

「…過激派を直接敵に回すと厄介で面倒な事になると思いますが…話とか常識とか通じ無さそうですし…」

「その時は過激派との全面戦争だ。穏健派は味方してくれるだろうから、中立派に手を出さないよう言えば邪魔は入らないからね」

「…そうですね」


お姉さんの確認に俺が軽いノリで返すも不安そうに心配してるように呟くので、最終的には力づくで解決できる事を告げると笑って賛同する。
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