上 下
204 / 480

青年期 140

しおりを挟む
その翌日。


「すみません。少しお力を貸していただきたいのですが…」

「…はい?」


お姉さんとの観光中に誰かに急に話しかけられ、振り向くと刺客の一人であったおじさんの姿が。


「あ。あれ?なんでココに?もう見習い達は居ないけど」

「それが…北西に向かっている最中に過激派の襲撃に遭ってしまい…穏健派の兵が守るために交戦に入りましたが、戦力が足りないのです」

「北西?なんで?」

「あそこは中立派と穏健派しか居ないのでいくら過激派と言えどもそう易々とは手が出せないのですよ」


俺の問いにおじさんは困った様子で状況を話し、俺が疑問を尋ねると説明してくれた。


「へー。じゃあ最初っからソコに行っとけば良かったんじゃないの?なんでわざわざ正反対であるドードルの国境付近の町に?」

「過激派が封鎖していまして。その封鎖を解くために色々と手を回し、戦力を分散させるように動いていたんですが…どうやら最低限の警戒網を我々に気づかれないように張っていたらしいのです」


俺は効率悪くね?と思いながら聞くとおじさんはソレが出来なかった理由と、今になって向かった理由、そして失敗した理由を説明する。


「なるほど…でもなんで俺達に?穏健派か中立派に増援を頼めば良くない?」

「私の知る限り貴方の傭兵団が一番強くて頼りになるから、でございます」

「…くっ…そんなん言われたら断れないじゃん…金の請求は穏健派に?」

「ありがとうございます!我々が責任を持って払わせます!」


俺が理解しつつも一番の疑問を尋ねるとおじさんは軽く頭を下げながらおだてるような事を言い、俺は断るのを諦めて報酬の話を聞くとおじさんが喜びながら答えた。


「じゃあ出発の準備をさせるから案内お願い。どこで待ち合わせする?」

「分かりました。北門から出るので…ソコで落ち合いましょう」

「オッケー」


俺の確認におじさんが了承して場所を告げ、俺は傭兵団を動かすために適当な団員の下へと向かう。





ーーーーー





「…では案内します」

「お願い」


…一時間とちょっとぐらいで団員達を集めて都市の北門へと向かうと、おじさんが先導するように馬を走らせ…


団員達がみんな後ろからついて行くのを見て俺は馬車に乗り込んだ。 


「…結局一ヶ月も滞在出来ませんでしたね」

「…まあしょうがない。その分報酬を多めに請求すればいいし」

「…そうですね」


お姉さんの残念そうな呟きに俺も残念に思いながら賛同するように返して金の話に持っていくとお姉さんは気持ちを切り替えたように返す。


「しかし北西か…どれくらいかかるのやら」

「聞いてないんですか?」

「うん。距離も時間も何も聞いてない」


俺が考えるように呟くとお姉さんが意外そうに聞き、俺は何も知らない事を告げる。


「…じゃあ着いてみないと分からない、って事ですね」

「そうなるかな」


するとお姉さんは本を取り出しながら言うので適当な感じで肯定した。


…その日は夜遅くまで移動してどこかの村に入って休憩し、翌日の朝早くにまた移動を開始する。


「…団長。ちょっといいか?」

「ん?…どうした?」


昼過ぎに馬車が止まった…かと思えば団員が声をかけて来た。


「…申し訳ありません…どうやら少女達は過激派に奪われてしまったそうで…」

「えっ!?」

「すまん!せっかく来てくれたのに…!」

「どうにも敵の数が多過ぎて、俺達が退路を確保しようとした隙を突かれたようだ」

「こんな事になるなら下手にその場から動かずに援軍を待つべきだったか…!」


俺が馬車から降りるとおじさんが申し訳無さそうな顔で謝ってきて、男の一人も両手を合わせて謝罪し…


残り二人の男が悔しそうな顔で少女達が敵に奪われた経緯を話す。


「…で、この後どうするの?女の子を取り戻しに行く?それとも終わり?」

「当然奪還だ!」

「俺達を敵に回した事を後悔させてやる!」

「…護衛は性に合わん。やはり立ち塞がる障壁は全て壊して進まないとな」


俺の確認に男達三人はリベンジでも誓うかのようにやる気になりながら言う。


「とりあえず敵が彼女達をどこに連れて行ってるか、を調べないといけませんね…」

「大丈夫だ。鍵の行方はアイツが追っている」

「では連絡があるまで近くの村で待機しておきましょう」


おじさんが考えるように次の行動を呟くと男の一人が既に手を打っているような事を返し、おじさんは予定を立てる。


「近くの村って事は、昨日の?」

「はい。仲間から連絡があるまでは私達はそこで待つ事になります」

「んじゃ、俺らもソコで待機か…」


俺の問いにおじさんが肯定して理由を話すので俺は団員のみんなに指示をして昨日の村まで戻る事にした。


「…なんだか面倒な事になってきましたね」

「全くだ。まさか俺らが着く前に敵に奪われてるとは…」


…馬車の中に戻るとお姉さんが困ったように笑いながら言い、俺はため息混じりで返す。


「でもここまで深入りして大丈夫ですか?」

「金貰う以上は傭兵団としての仕事だからね。別に口出ししてるとかじゃないから大丈夫大丈夫」

「…過激派を直接敵に回すと厄介で面倒な事になると思いますが…話とか常識とか通じ無さそうですし…」

「その時は過激派との全面戦争だ。穏健派は味方してくれるだろうから、中立派に手を出さないよう言えば邪魔は入らないからね」

「…そうですね」


お姉さんの確認に俺が軽いノリで返すも不安そうに心配してるように呟くので、最終的には力づくで解決できる事を告げると笑って賛同する。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

商人でいこう!

八神
ファンタジー
「ようこそ。異世界『バルガルド』へ」

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

最難関ダンジョンで裏切られ切り捨てられたが、スキル【神眼】によってすべてを視ることが出来るようになった冒険者はざまぁする

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【第15回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作】 僕のスキル【神眼】は隠しアイテムや隠し通路、隠しトラップを見破る力がある。 そんな元奴隷の僕をレオナルドたちは冒険者仲間に迎え入れてくれた。 でもダンジョン内でピンチになった時、彼らは僕を追放した。 死に追いやられた僕は世界樹の精に出会い、【神眼】のスキルを極限まで高めてもらう。 そして三年の修行を経て、僕は世界最強へと至るのだった。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する

土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。 異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。 その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。 心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。 ※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。 前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。 主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。 小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。

処理中です...