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2章 学園初等部~

2-47 大体は予想でき

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‥‥今後の領内での動き方や、どの様にして継いでいくのかなどの詳しい事を聞きつつ、ヘルズ領地を僕らは後にした。

 もう間もなく雪が降りそうであり、移動に支障が出る事も考え、早めに出てきたのである。

 そして時間をかけ、夏季休暇以来のモンスター研究所に到着し、ドマドン所長やその他の職員の方々と再会を喜んでいた中で‥‥‥ちょうど都合が良かったというか、もうちょっと遅れていたら不味そうなぐらい、外で雪が降った。

 そして積もりに積もった本日、地下にある研究所から地上に出て、都市アルバニア内の状態を見れば‥‥‥


「‥‥‥やっぱりすごい積もるなぁ。吐く息も白くなるし、防寒着を着ていても寒いや」
 
 はぁっと息を吐けば、白い吐息が口から出てくる。

 防寒着を着ていても肌寒さはあり、風が吹くと体が震えてしまう。



【…‥‥‥】
「ところでハクロ、大丈夫?」
【‥‥初めて見た、触れた、そして理解‥‥‥したけど、足を入れられない‥‥キュルルル‥】

 ぶらーんっと、研究所の地上出口の建物の壁に、糸でぶら下がっているハクロ。

 初めての雪に、テンション高めで突撃したのは良いのだが‥‥雪が積もるほどの寒さは路面が凍っていることもあり、その凍った路面で見事に滑って、積もった雪の中にずぼっとはまったのである。

 そして数秒ほど停止したかと思えば、蜘蛛部分からびゅっと糸を飛ばし、こうやって今壁にぶら下がっているのだが…‥‥雪の冷たさを理解したようであった。

 ぶら下がりながらも、雪をまだ被った状態であり、ぶるぶると震えている。

 ハイテンションで見に来ていた分、すごい落差を見せられたが…‥‥まぁ、雪の悪い面ばかりを見るのもなぁ。

「んー、あ、そうだ」

 壁にぶら下がったままじゃなくて、雪の楽しさも知ってほしくも思え、どうしたものかと考え‥‥‥ふと思いついた。

「ハクロ、ちょっと見てて」
【キュル?】

 手近な雪を拾い上げ、ぎゅっと固めて小さな雪玉を作る。

 そしてそれをまんべんなく雪の上で転がしていき…‥‥徐々に大きくなっていく。

【キュ、キュルル?何、それ?】
「雪ってこうやって大きく出来るんだよ。で、これを積み重ねれば‥‥‥‥ほら、雪だるまの完成」

 ある程度のサイズまで作ったところで、もう一つ作り上げて雪玉同士を重ね、簡単な雪だるまを作り上げた。

「こうやって、やりようによってはどんどん大きな雪だるまが作れるんだけど…‥‥ハクロもちょっと手伝ってくれないかな?」
【…‥‥やる!】

 雪玉が大きくなっていく様子に興味を惹かれたのか、ぶら下がっていたハクロがゆっくりと降り立ち、そう返事をした。

 そして今度は滑って転ばないように注意しながら、二人で協力して創り上げ‥‥‥


「オーライ、オーライ、もう少し右で‥‥‥いや、左にもうちょっと、っと、そこで降ろして」
【キュルゥ!】

 かなり大きな雪玉が出来上がり、重ねると非常に大きな雪だるまが完成した。

【キュルル‥‥‥すごいすごい!雪でこんなの作れちゃった!!】
「ちょっとしたかまくらサイズになったことに驚くけど…‥‥でも、これはこれで傑作かも」

 ハクロの力のおかげで、かなり大きな雪だるまが出来上がった。

 その大きさに、作っていながらも僕はちょっと驚きつつ、ハクロの方はすっかり雪に対する冷たい印象は失せたようで、純粋に楽しめる印象に切り替わったらしく、はしゃいでいた。

【あ、そうだ!アルス、雪って、ここまで大きくできるよね?】
「ん?そうだけど。固めてしまえばもっとしっかりしたの時になるけど、それがどうかしたの?」
【思いついたの!!】

 っと、言うよりも見せたほうが早いというように、直ぐにハクロは行動に移した。

 雪だるまと同じように大きな雪玉を再び作り始め、ある程度のサイズまで来たところで、一旦ぺたぺたと圧縮して固め始める。

 力をかけて固めることができることに気が付いていたようで、糸で細かい部分まで圧縮し、小さく成り過ぎたら雪玉を作っては埋め込み、補充していく。

 そしてある程度の硬い塊が出来上がったところで、細い糸を手にしてきた。

【キュルル‥これで、削って、固めてこうすれば‥‥‥‥】

 ざりざりっと糸で塊を削りつつ、大まかな形をまずは作り上げる。

 そして、さらに細い糸で細かい部分まで調節しつつ、崩れそうになれば雪と糸で補強し‥‥‥一つの雪像を作り上げた。

「わぁ、結構凄い雪像だね!」
【キュル!】

 出来上がったのは、今のハクロの姿になる前のホーリータラテクトのちょっと小さめの雪像。

 流石に原寸大ではないが、それでもふわふわモコモコな質感を雪で細かく表現しており、まさに今にも動き出しそうだ。

【雪、楽しい!面白いやり方、まだまだあるかも!】

 そのままノリに乗ったようで、別の雪像を作っていく。

 研究所内で見たモンスターや、それ以外の動物。
 
 それだけでは物足りないのか、果物とかも出来上がっていくが…‥‥糸を器用に使ってここまでできるハクロの才能には驚かされるだろう。

 とにもかくにも、雪に対する印象は好印象に変わったらしく、ハクロと一緒に僕も楽しむのであった…‥‥




‥‥そしてある程度楽しんだところで研究所の方に戻れば、コタツが用意されていた。

 どうやら過去の転生者が残していたもののようで、電気ではなく魔道具で温かくなる仕掛けのようだが…‥‥入るとぽかぽかと温かさを感じた。

「でもハクロの場合、コタツはコタツでも掘りごたつの方があっているのか」
【キュル、あたたかーい♪】

 蜘蛛の体部分の方が潜り込み、上半身だけ出しつつハクロはぬくぬくと温まっているようだ。

 一応低温火傷などもあるので、ある程度熱源から距離を取っているようだが、それでもぬくぬくなのは間違いないらしい。

 内心、普段が子猫っぽいハクロだと、猫がコタツで丸くなるという言葉が似合っているような気もするのだが…‥‥これはこれで、雪の降る季節ならではの可愛い姿かもね。

「ふむ、虫のモンスターは大抵寒い季節は動かぬものなのじゃが…‥‥お主ら、よく遊んできたようじゃな」
「あ、ドマドン所長。所長もコタツで?」
「そうじゃよ。この歳になると寒い季節が辛くてのぅ。コタツを研究所内の各地に設置して、どこでも温まれるようにしているのじゃ。まぁ、あちこちで暖房の魔道具もあるのじゃが…‥‥こういうのが、楽じゃからなぁ…‥‥」

 その気持ち、わかるかもしれない。室内全体を温かくしても、こうやってコタツに入って温まるのとはまた違うものだからね。

「でも、それだと出て移動するのがおっくうになりませんかね?」
「そうじゃな。ゆえに、こういう季節でも動けるようにモフもこな白衣を用意しているのじゃ。‥‥‥コタツから出るのが嫌すぎて、あまり活用できぬがのぅ」

 活用できないのならば無駄なのではないか?

 そう思いつつも、コタツの魔力は分かっているのでツッコミは入れないでおくのであった‥‥‥‥
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