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第三章 毒であり薬
133 意気込み
しおりを挟む「っあ……あ……ごめん、なさい、私が殺した、大事な人、沢山殺して……愛されたら、駄目なのに、なんで私……?」
突然カレンが錯乱し泣きはじめた。
それはまるで魔力暴走したあの時のように。
「かれ……ん? なに言って、大丈夫か?」
「駄目なのに、私、ごめんなさい、ごめんなさ……」
「カレン、落ち着け?! 泣くな、なにを謝って?」
さっきまで穏やかに俺の腕の中で笑っていたのに、何度も何度もごめんなさいと言って泣き叫ぶ。
「ごめん、なさっ……できない! 私は、罪を……っ……犯したからっ、ごめんなさ……」
その姿が、とても痛々しくて、胸が痛む。
……沢山殺したか。
きっとそれがカレンの隠し事なのだろう。
だけど今、カレンが何も罰せられていない時点で、それはきっとやむ終えない理由だったんだろう。
そんな事気にしなくていいのに、世の中にはどうしようも無いことなんて沢山あるのに、その罪悪感に囚われて、隠して距離を取ろうとしていた。
好きなるのが傷つけるのが怖いと泣いていた、カレンに欲を向けては、触れてはいけなかったんだ。
どうして気付いてやれなかったのか。
こんな風に決壊して壊れる直前まで追い詰められてしまっていたなんて知らなかった。
ただ優しく抱きしめて側にいてやるべきだった。
後から後悔してもそれは意味がなくて。
全てから守ってやりたいのに、少し落ち着きを取り戻したカレンはまた感情を完全に隠し笑う。
「……カレン?」
「……っあはは、あー……ごめんごめん! ちょっと疲れてるだけ! うん、大丈夫だよ! 心配しないで? 最近涙腺弱くて!」
いつもこうやって隠していたのかと、今までなにも気付かずに、ただ明るくいつも笑顔を絶やさない女の子だと思わされていた自分が恥ずかしくなった。
どんな時も笑顔の理由、それはカレンなりの虚勢であり処世術だった。
「……身体大丈夫か? 無理をさせたと思う、ごめんな?」
「そう思うなら止めてくれればよかったじゃん……? 殺しにきてるのかと思った!」
「……ごめん、いやでもそれは、お前小さいから」
「あ? だれが小さいだ? エディが無駄にでかいの! 私は普通なの! 見下げてくんな!」
「……身長の話じゃないんだけど。……でも俺は背が低い方が……好きだけど?」
「……そんなん知ってる! ついでに胸は大きくて、年下で、髪は艶々がいいと力説していたね?」
「っえ? なんで知って……」
「エディ王城の騎士訓練場で、訓練中に話してたじゃん? 最近娼館言ってないなー、行こうかなーって、みんなで楽しそうに話してたじゃん?」
「……なんでその話知って?! いや、行ってないから!」
「聞いたからね直接! それエディ達が話してるとき王城に潜入して遊んでたんだよね」
「なにお前勝手に屋敷抜け出してました宣言してんの? それに王城に潜入? どうやって入った?!」
「普通に城門から? さすが私!」
「嘘だろ?! なんで誰も気付かない……?」
「まあ魔法で姿消してたし? でも、エディの側も行ったのに全然見つけてくれなくて、……寂しかったんだよ?」
寂しかったなんて言って上目遣いして見上げてくるなんて……可愛すぎて辛いけど。
これも演技なのか素でやっているのかわからない。
「カレン、やっぱり言う気ない?」
「……まだ言うか。ないよ? 取引は守ってね? 私の初めて捧げたんだから! ……エディなんて一生何も知らないままで悩んでればいいんだよ、ばーか」
「お前ってさ、実は結構性格悪いよな?」
「……何をいまさら? 性格いいやつが錬金術師なんて狂った仕事しないって!」
「そっか、でもな? ……俺もあまり性格は良ろしくなくてな? 回数制限も期限もないよな?」
「え、なにが……?」
「抱く回数、好きにしていいんだよな?」
「え……いや、一回……?」
「そんなの聞いてないし? だからお前が話したくなるように抱き続けてやる、いつでもどこでも!」
「それっ……、エディがヤりたいだけじゃん!」
「知るかそんなもん、絶対に口を割らす!」
「そんな意気込みいらんわ! 馬鹿!」
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