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第三章 毒であり薬
127 取り引き
しおりを挟む「カレンお前さ、本当に隠し事ばかり、もういい加減にしろよ?」
「えと、何を急にキレてんの? エディなんか変だよ?」
なんの前触れもなく突然エディは不機嫌になって、堪り兼ねたように怒り出した。
でもそんな風に怒られたとしても私は本当の事なんて絶対に話せないのに、エディにだけは話したくなんて、知られたくなんてないのに。
「俺はお前の事を何も知らない。調べても隠匿されていて何もわからない、お前に聞けば辛そうな顔ばかりする、でも知りたいんだ何も知らなければ、一緒に悩んでも背負ってもやれないから」
一緒に背負ってなんて欲しくない。
これは私の罪だから、私はただ貴方にずっと優しくされていたいだけ、笑いかけて欲しいだけなんだ。
そんなことして欲しいなんて頼んでない。
「……私は知られたくないエディにだけは何があっても、もう……エディにねあんな眼で見られたくないんだ、嫌われたくないんだ、だから言えないんだ、私はね自分勝手なの」
「それはっ! ……ごめん。あの時酷い事をしたと思ってる、だからこそ今度こそ間違わない、何があったとしても、世界を敵まわしたとしても守るって誓うから、だから話して欲しい」
エメラルドグリーンの優しい瞳が私をしっかりと見据え少し探るように、気遣うように見つめて離さない、それが怖いんだ。
その優しい瞳が嫌悪に憎悪に染まるのが。
きっとエディが私の真実を知ってしまえば、もう私を愛してはくれないし、側に居てはくれない、それにこうやって心配して迎えになんて二度と来てくれないから。
もしかしたら、真実を知っても私の事を許して好きでいてくれる、……なんて不確定な期待を持てるほど私は純粋でもないし、子どもでもなくて。
ずる賢い私は、隠し続ける。
それでエディを傷つけたもしても。
それでも私は、私の罪を話さない。
「……それでも、私は言えないんだ、それは信用してない訳じゃなくて、エディが好きだから嫌われるのが怖いの、大好きだよ、エディ?」
……嘘つき。
私はエディの事を信用なんてこれっぽっちもしていないのに、でもエディに嫌われたくなんてなくて、だからこんな事しか言えない。
「っ……お前な! 本当にこういう時だけしか言わないよな? もうなんなの……」
「……エディ、いいよ? 私を、私の身体エディの好きにしてもいいよ、その代わりもう何も聞かないで? 騙されていて?」
「っえ? 何を……」
「……抱いてもいいよ? 私の事。その代わりもう私の事はこれ以上知ろうとしないで、ずっと知らないままでいて、それが交換条件」
「っはは、それはまた酷い取り引きだな?」
「うん、それでエディは私の事欲しい?」
「それさ、知ろうとした時点でお前、また俺と距離取るやつだよな?」
「さすがだね? よくわかってるじゃん! そっち選んだ時点で私はこのままイクスに残ってエディをこの国から追い出すつもりだよ? 絶対に言いたくないもの」
「その為に身体を差し出すのか、お前は」
「残念ながらエディに諦めて貰えそうなモノを私は今この身体くらいしか持ち合わせていなくてね? ……駄目かな?」
エディが怒って、私の言葉に傷ついているのがわかる、それは全て私の為を思って言ってくれている事で、それを私はわかっていて更にエディの心を傷つける。
もう、こんなふうにしか生きられない自分が大嫌いで、消えてしまいたくなった。
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