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第三章 毒であり薬
126 演技
しおりを挟む「私はっ、エディのじゃないし……!」
「……じゃあ今から俺のになって貰う、優しくしてやるから大人しく抱かれとけ?」
「え、ちょ……なに急にヤル気なんてんの? 馬鹿! だめ! 近寄んな!」
と、二人が玄関で争っていると。
「え、俺とオバサン今いるからさ、いま始められても困るんだけど? 帰ってからやって? っかさ厄災ってその騎士さんと付き合ってたの? やっとモテ期きたの? おめでと!!」
ルーカスが奥の部屋から出てきて二人を見つけ冷やかす。
「げっ、ピンク! また人の家不法侵入しやがったな?! え、ママ?」
「あらあら元気ね? カレンちゃんは流石ママの娘ね! 面食いねぇ? それにしてもオースティンの坊っちゃんまだうちの娘諦めてないなんて、そんなにその子がいいの?」
ピンク頭に続いて玄関にニタニタと笑い、奥の部屋から野次馬のようにやって来たのはカレンの養母のカトリーナ。
「ママなんで首都に立ち入りしてんの?」
「ルーカスにお願いして入れて貰ったのよ? こっちに帰ってきてるのに全然カレンちゃんお家帰ってきてくれないから、みんなカレンちゃんに会いたがってるのに。一度家に帰って来なさいな? ……でもその頭と瞳の色、それなに?」
「え……あーこれは、その」
そして始まるカトリーナの厳しい尋問、だがカレンはいつものように適当にはぐらかす。
あの女傑の尋問にさえ口を絶対に割らず、煙に巻く様を見せつけられたエディはこいつに隠し事を聞き出すのって不可能じゃないかと分析した。
そしてエディとルーカスの二人は、応接室でのんびりとお茶を飲みながら母と娘の小競り合いを見学していた。
「わざわざアルスからお迎えなんて、騎士さんアレのどこがいいの? ロリコン? 乳?」
「……エディでいい、どこがいいと言われても、全部可愛いし?」
「可愛い……? あんな陰険なのが? もしかしてアルスだとカレンってモテるの?」
「そりゃ……。陰険?」
「んー、あいつさ普段と全然違うから性格が。……前はあんな風に完璧に自分を偽るやつじゃなかったのに。色々と抱え込みすぎなんだよなー、お馬鹿な子」
「偽る? いつも通りだろ?」
「気づいてないの? あれ全部演技だよ、まあ親の前では元々明るく振る舞ってたけど、カレンって性格も暗いし、陰険だし最悪だよ?」
「そんなわけ、カレンはいつも……」
「最初からあいつはあんな話しかけやすい雰囲気だった?」
「え、あー、いや。……最初話しかけても無視されて、蔑むような目を向けられたような?」
「ほらやっぱり! それが素のあいつだから、上手いこと騙されてるじゃん!」
あんなのに騙されるなんて馬鹿だなとルーカスが腹を抱えて笑うが、エディは言葉が出ない、だってカレンはいつもどんな時も笑顔だったから。
でも、行政府で久し振りに見たカレンは笑ってなどいなかったし雰囲気がいつもと違った。
「もう、ママいい加減帰って? お説教聞き飽きたし、そのうちそっち見せにいくからさ?」
「えー? ……お泊まりしていこうと思ってたのに! 帰りたくないなー?」
「一晩中お説教は勘弁して、っか首都の立ち入り許可泊まりも入ってないでしょう?」
「なんだ、バレてたか。 オースティンの坊っちゃんいいな! 私もカレンちゃんの家お泊まりしたい!」
「立ち入り許可なんて必要なんですか? この首都って……」
「そうよー? ここ許可ないと入れないし、住めないもの! 特権階級だけよ?」
「こちらには身分制度ないのでは?」
「身分制度はないけど個人の階級制度はあるからね? だからカレンちゃんに会うのって難しくてねー……」
「ママ! 余計な事を話してないで帰れ! 時間過ぎたら許可したルーカスに罰則いくよ?」
そしてカレンによって、カレンの自宅から追い出される養母とルーカス、一仕事終えたカレンは疲れて戻ってきた。
「ほんと、隙あらば人ん家に不法侵入しやがって! 鍵交換しようかな?」
「なあ、カレン? ……階級制度って何?」
「……え、言いたくないな?」
「カレンお前さ、本当に隠し事ばかり、もういい加減にしろよ?」
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