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第三章 毒であり薬
109 隠したままで
しおりを挟むカレンのイクス一時帰国の為に、新しく改良された魔力封印具を持って、イクスからの使者としてやってきたのはピンクの髪と瞳の奇抜な容姿の錬金術師でカレンの幼馴染み。
「それにしても、お前なんでそんな少女趣味……姫してんの……? そういうの実は好き……だったのか?」
「いや、こんなん好きで着てるんじゃねぇし?! アルスではコレが普通らしくてさ。……っか、終わったならさっさと帰れ? 暇なの?」
「自分ののために遠路遥々国境門越えてやって来た人間に向かってその態度! ほんと嫌い……」
「お、やったじゃん! 私も嫌い! 気が合うね?」
「……お前なんてずっとアルスにいればいいのに! 帰ってくんな! そうすれば俺が最高位になれるかもしれないんだぞ?!」
「え? いや、私に関係なく、ピンクじゃ絶対に最高位なんて無理。夢見るだけ無駄無駄! 現実見てみ? さ、帰れ!」
「なんなのこの子? 酷すぎね?! ってかさ、お前すげーな? 護衛なんて居るの?! 騎士とか初めてみた! 厄災なんて守る必要性あんの?」
「いえ、カレン様は特別なお方ですので。錬金術師様つかぬ事をお聞きしますが。……その、カレン様を、なぜ厄災……と?」
そう、側で控えていたオスカーが質問する。
「ん? あー…錬金術師の称号? 高位になると称号がつくの! カレンにぴったり!」
「称号が厄災とは……また」
「それと人間を辞めてるとは、どういった意味でしょうか?」
「え? それはそのまんまの意味だけど? こいつ勝手に人間の枠を外れ……」
「ルーカス黙れ!」
カレンが使者としてやって来た錬金術師を突然怒鳴りつけた。
その怒鳴りつけたカレンの表情は驚くほど冷たくてそれには執務室に居た者全員がゾクリとした。
そのカレンの様子にこれはただ事ではないなと護衛達は思い、エディはカレンが頑なに隠している事の一部なんだろうなと、推測した。
そしてカレンは使者に帰還を命じる。
「ルーカス今すぐ帰りなさい? じゃないと国に帰ったら殺す」
「……こわっ。帰るよ! 帰ればいいんだろ?! でも俺お前とイクス帰るから! それまで王宮滞在してるから! えと、封印具試して問題あったら言ってこいよ?! じゃあな!」
ルーカスは矢継ぎ早に捨て台詞を吐きカレンの執務室から退室する。
そしてカレンは護衛達にも一人にして欲しいと退出を促した。
カレンはなにも知られたくはなかった。
特にエディには、なにも知らせぬままで、何もかも知らぬままで、ただの特効薬を作った錬金術師として別れたかった。
カレンは最初から成人すればイクスに帰るつもりだったし、短期間だけ、成人するまでの間だけアルスに行くとそう思ってやってきていた。
なのにアルスでエディに恋をしてずっと一緒に居たいと思ってしまったカレンはイクスに帰りたくないなと思い始めていた、だがその考えは間違いだったとあの日知る事になる。
まるでカレンを化け物を見るような目で見つめた、エディの瞳が忘れられない。
今はそんな風に自分の事を見ないし、エディが思ってなどいないことはわかっていたが、もしずっとひた隠しにし続けていた真実が露見すれば。
きっとそのエメラルドグリーンの瞳は、私を慈しむように見るその優しい瞳は、私に対する激しい嫌悪と憎悪て塗り潰される。
だからカレンはイクスに帰国する手続きを急いだ。
それがエディを苦しませていると知りながら。
カレンはもうあんな苦しみを味わいたくなんてなかったから
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