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第ニ章 英雄の少女

97 賢者の石

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 鏡に映るのは見慣れない黒髪に真っ赤なルビーのような赤い瞳。

 賢者の石を取り込んだ副作用なのか、元はハニーブロンドの髪にサファイアのような深い青色の瞳だったとは思えない変わりようで、色彩が違っただけでカレンの印象がガラリと変わる。

 以前は愛らしく可愛い少女だったのに、今では艶やかな色香を醸し出しはじめていた。

 それには護衛達も驚き、今までカレンは未成年の娘と同年代の子どもだと思っていたオスカーでさえカレンのその容姿に見惚れるほどで。


「うむ! 黒髪に赤い瞳の私も可愛いな!」

「あー? うん、そうだな、可愛い、かわいい」

 そんな風に適当に相づちを返してくる私の護衛に唐突に復帰したエディにどう接したらいいのか混乱するカレン。

 どうしよう? なにを喋ればいいのかわからない、前はどんな風に私はエディに接していたっけ、全然わからないぞ?

 急に護衛に戻られても困るんだけど?!


「そういえばさ? ……なんで戻ってきたの? 私の護衛に。……エディ私のこと、もう怖くないの?」

「……ああ。もう、そんな風に思ってない。……カレンごめん」

「別に謝ってほしいわけじゃないけど? っかさ……? エディって私に……欲情できんの?! あの時本気で襲おうとしてたよね? あ、溜まってたの?」

「なんでお前はさそんな風なの? ……本当に。あー……もう! カレン俺はお前の事が好きなんだけど?」

「あー……」

「あーって……お前さ。もっと何かないのか?」

「いや、だって? オスカーがそこで見てるし?」

「………お前、それは早く言えよ?」

 

 エディが私の護衛に戻ってきて二週間。

 何の脈絡もなく、ロマンチックな雰囲気すらなく告白されてしまって二週間。

 私がエディのその告白をさらりとかわしてから二週間。

 あれからなにもない所か、びっくりするくらい普通にエディは私に接してくるのだけど? 

 え、なに? 私やっぱり弄ばれた?!

 そりゃそうか、私をエディが本気で好きになるなんてあり得ないし、からかわれただけだろう。

 ……まぁもしあれが本気だったとしても、その気持ちに答えるつもりはない。

 私も好きだって言えたらいいのに、そんな幸せな事は許されなくて、言えない事がどんどん増えていく。

 それに賢者の石を使用したこと、所持してたこと知られたら絶対に面倒だし、それに人の枠を外れたことがエディに知られたらまたあんな目で見られるのかな? って不安になって。

 ……でも、遅かれ早かれいずれ露見するだろう。

 賢者の石使用による不老不死は、何百年たっても私はこの姿のまま生き続けるし、そして死にたくても死ねないらしい。

 そして、時が止まった身体では眠ることも食事する必要もなくなると記述されていた。

 確かにお腹なんて空かないし眠くない。

 ……それに不老不死となれば子どもが産めなくなるという特典付きか。
 
 せめて二十歳くらいまでは成長したかったなとおもうけど? ……せめて、誕生日を人として迎えてからにしたかった。


「ねえ、エディ! 私、街に行きたい! 明後日私の誕生日だし! こんな軟禁生活で十七歳を終わりたくない! 今ならさ、髪の色とか変わってて私だってバレないと思うんだよね?」

「いや、それバレるバレないとか……そうゆう次元の問題じゃないだろう?」

「大人しくするから! ちょっとだけ!」

「……本当にお前は。 でも……いいか。オスカーに見つからないように、隠れて行くしかないが、いい子に出来るか?」

「ほんと? エディ最高っ!! 私はいい子だよ!」

 十八歳の私の誕生日にエディが街に連れ出してくれることになった!

 エディとのお誕生日デートである。

 ……この時エディがそんな簡単におねだりを聞いてくれるなんて私は少し疑うべきだった。
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