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第ニ章 英雄の少女
76 偽善の結果
しおりを挟む「次、もしこんなことがあれば国際連合の執行官達が動くから……しっかりと覚えておいてね?」
「はい、誠に申し訳ありませんでした、此度の事全て私共騎士団の責任でございます! カレン様の温情によりこの程度の懲罰で済ませて頂き、誠に感謝致します」
「じゃあ私は着替えてくるよ、っい……」
「カレン様……?」
「ん……、何でもない。着替えてくる。」
騎士達は一同に傅きカレンに頭を垂れて、その後ろ姿を見送った。
流石に騎士二人とやりあうのは、肉体は普通の少女であるカレンには非常に負担だった。
魔法でいくら身体強化してもその限度があるし、いくら女傑カトリーナに鍛えられていてもそれは何年も前の出来事で。
以前エディと手合わせした時は、手加減と配慮をされいて私の身体に全く負担のない打ち合いしかしていなかった。
だが今回騎士達は、本気を出してカレンに打ち込んできていた。
だからカレンは、控え室のソファに倒れこんだ。
エディが不敬な事をしても許されていたのは、カレンの為に全てを捨ててイクスにやってきてその命を魔力暴走から救ったから。
だから彼ら執行官はエディに対してはとても友好的だった、それに加えて私が不可侵を指示したから。
別にカレンが直接制裁などしなくても、彼ら執行官達がいつものように処理するだろう。
だからわざわざ自分が悪役になるなんてほんと馬鹿だなと思うが、これ以上自分のせいで人が殺されるのなんて見たくなかった。
ただ一応この制裁で彼らも納得はしているだろうから、遣り甲斐はあった。
でもそれはただの偽善でしかないと、自己満足だと自分自身をカレンは嘲け笑う。
だって私はもう、誰かの命の責任を負いたくないだけだから。
「早くポーションでも飲んで起き上がらなきゃ……」
そう思うが、慣れない身体強化の反動と騎士二人と打ち合いの衝撃はその小柄な身体で受け止めるには……重すぎて。
身体が全く思うように動いてはくれない。
こんな所を人に見られたらせっかくがんばったのに水の泡だし、かっこよく悪役を演じなければ意味がない。
だるく重いその腕を必死にあげて。
荷物からのろのろとポーションを取り出すが、するりと取り落としてしまう。
「あ……」
そしてそれを拾おうと、ソファから身を乗り出そうとしたその時。
コンコンコンと軽快に扉を叩く音。
オスカーが来ちゃったよ。
「仕事が、早いね? ゆっくりでいいのに」
でもこれ見られたら不味いよな?
と、急いで拾おうとしたら、ソファから滑り落ちてドンっ!! とソファの前のテーブルに肩を打ち付けてしまい大きな音を出してしまう。
その音を聞いたであろう扉を叩いていた人物は、入室の許可を取らず。
ガチャリ扉を開けて、床に倒れているカレンに急いで駆け寄り抱き上げた。
「カレン! 大丈夫か!? お前なにして……?」
「あー大丈夫大丈夫、ちょっと滑っただけだよ…オスカー……え」
オスカーだと思ってた。
なのにそこに居たのは。
私をその腕で抱き上げた人は、濃いブラウンの髪にエメラルドグリーンの瞳で。
「なんで……? エディ……」
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