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~智花~

お茶

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「ありがとう、三橋君…着いたわ。ここなの私のマンション」
会話が楽しくてあっという間に…気付けば、マンション下まで来ていた。

「あ…ほんと近いんですね…てか、ここだったんですね、林さんのマンション…」
三橋君がおもむろにマンションを見上げる。

「ええ…今日はごめんね、ありがとう、助かった。」

「俺んち、あれです…めちゃ近かったんですね?」

三橋君が指さしたマンションは本当に目と鼻の先…
ここからも見えているマンションで、密かに驚く。

「こんなに近くて今まで会わなかったのが不思議ね、ホント」

そう言いながらも答えは明確だ。
三橋君は早目の出勤の私とは違ってギリギリに職場に来るタイプだから、時間的に会うことがなかったのだろう…

「それじゃあ、また明日ね…ありがとう、お休みなさい」

そう言ってロビーに入ろうとした瞬間、背後からいきなり腕をつかまれ、驚いて振り向く。

「な… 何、よ… びっくり…する… 」
彼につかまれたままの腕が…なんだか熱い…

「ここまで送って来たのに…あっさりさよなら…?お茶も、なしですか…」

「はあ…!?」

「あーあ、がっかりだな…林さんって結構冷たいんですね…着いた、ありがと、はいさよならって…はあ…」

「え… …それって…どういう…」

「林さんの家、少しお邪魔してみたいな~って」

「や…でも、さすがにそれは…」
相手は男…
年下とはいえ、男なのだ… 彼氏でもない男を家に上げるなんて…さすがにそれは。

「無理よ… ほら、もう時間も遅いし、また今度…」

「…いいじゃないですか…?まさか警戒してます…?俺、無害ですよ…彼女、いるんで…」

「… そう、…だったよね… 」

飲み会の席で、年下の可愛い彼女がいることを楽しそうに話していた。
でも…彼女がいるからこそ、他の女の部屋に上がろうとするのは駄目なのでは…

「や…やっぱり、駄目よ…部屋、散らかってるし…」
定番の断り文句…嘘だ…  私の部屋はいつも、片付いている…

「あんま悩まないで、上げてくださいよ~さっき飲み会の席で話してた林さんのこだわりの特製ハーブティ、淹れてくれたら…それ、飲んだら、速攻帰るんで…」

「ん… …んー-… 」

「あ…やっぱ警戒してる… 俺、彼女に誓って…神に誓って、なんもしませんよ…だからね!?いいでしょ?」

「… んー- 」 
さすがに、同じ職場…同じ部屋の、同僚…そして、明らかに彼女持ち… 
何かされるなんてことは、普通に考えてないだろう…

「んじゃ…絶対だよ…もうこの時間だし、ほんとちょっとだけね…は~~負けたわ…」

「やっりー-!!…有り難うございます…ワクワク…ワクワク…!!」

三橋君がおどけるようにしながら私の後を、るんるんとわけのわからないステップを踏みながらついてくる…。

まるで、大きな子供みたいだ… 
私はクスリと笑いそうになるのを抑えながら、部屋へ向かった。

だけど彼は、部屋に入って間もなく、豹変した…  どこが、子供…  

私が馬鹿だった…     

      そう思ったけど、

      もう全てが、遅かった… 

















 



 
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