【完結 R18】ほかに相手がいるのに

～智花～

セクハラ

かなり、驚いてしまった…　
正直に言うと、久々に触れる修哉さん以外の男性の身体のぬくもりに、ドキリとした…

「えっと…　ごめん、三橋君の家ってどっち…？もう大丈夫だから…ありがと～おやすみ～」

「いえ…俺、林さんが家に入るの見届けてから帰りますんで、大丈夫です。」

三橋君が…優しい…それでいて真剣な目で、私を見下ろしながらそう、言葉を発する。

「や…もうほんと、家、すぐそこなんだよね…？ほんと大丈夫だって…若くないし…　」

「あのですね、林さん…フラフラ酒に酔った女が、夜道歩いててなんで根拠なく大丈夫って言えます…？マジで油断してると、そのへんの変な男に襲われますよ…若いとか若くないとか関係ないです。んで、家、どっち…？」

「…ん　…あっち…なんか、ほんとごめんね…」私は素直に、自分のマンションの方を指さす…。

「いえ、全然…それにしても林さんって…くくっ…　」三橋君が笑いながら背中を不自然に丸める…

「　…何よ…？」

「普段、職場ではめちゃくちゃしっかりしてるのに…隙がないのに…今日は不思議と面白いっすね…フラフラして、なんもない所でつまづいて、こけそうになってるし…くく」

「…そ、そりゃ…酔ったら皆…そう、なるでしょ…明日…わざわざ人に言わないでよ…」

「はいはい…じゃあ、行きますか」三橋君がニヤリと笑う…。

私は歩きながらも、隣の三橋君を盗み見る…

身長は修哉さんと同じくらい…でも、細い感じじゃない…
筋肉があるのか全体的に少し…修哉さんより大きく見える…　　体育会系…
そうだ…あの、水無月さんの彼氏…　拓海君、みたいな身体つきだ…

「なんすか林さん…人の身体、ジロジロ見ないでくださいよ…やーらしい…セクハラっすか？きゃっ…！」
胸の前で手を交差するようにして身体を隠しながら、彼がふざける…。

「な…！何っ…べ、別に…！身体、なんて…見てないわよ…！！馬鹿…！」

「冗談ですよ…　くくっ…　」　
馬鹿だなんて…初めて会社の人に言ったかもしれない…私は自分自身の発言に、密かに驚く。

家に着くまでのたった3分程の距離…

私はいつになく笑いながら、
彼と夜道を歩いた…