【完結 R18】ほかに相手がいるのに

～拓海～

秋の空

「ほら…これ、…葉月…　ちょっと前の、だけどさ…なんかちょっと、恥ずいな…　」

「ありがと～～！　う、わ～～～　きゃわいい！！　なるほどね～～～なるほど…！」

瑠衣が携帯片手に、にこにこと笑いながら何度もうなずく…。

「…なんだよ…　なるほどって…」
なんとなく、意味深な言葉で気になる…俺は瑠衣を見つめる。

「や…　なんか、葉月ちゃんモテそうだなって思っただけ…大人しそうな見た目で、すごく地味な服装だけど…あ！！ごめん、地味とか言っちゃって…だけど…めちゃ、可愛い顔…パーツパーツが整ってる…色白いし、色素薄めなんだね…んで、手足、すごい華奢だね…　ふむ、ふむ…」

「なんか…変な分析、やめろ…恥ずかしいな…　普通だよ、普通…」

「や～～～これは、強敵だな～…メイク、あんまりしてなさそうなのに、綺麗なのがわかる…その辺の女じゃかなわないな～なるほどなるほど…拓海君が愛してやまない理由がわかったよ…」

「なんだよ、愛してやまないって…別にそこまで…」

言いかけて、ハッとする…

愛してやまないなら…本当に葉月を愛しているのなら…
どういう状況であれ…遠距離だろうとなんだろうと…瑠衣と身体の関係なんて持つべきではなかった…　
フレンドがどうとか関係ない…　　

やっぱりどうやら俺は…　あらためて…最低な男の、ようだ…

「これはさ…拓海君気を付けた方がいいよ～遠距離恋愛なんてしてる場合じゃないんじゃない…？」

「は…？」　

「普通に考えてさ…この感じだと彼女、モテるでしょって話…気を付けないと他の男に奪われちゃうよ～？」

「葉月に限って、そんな…こと…　あるはず、　ない…」
あれ　…なんでだろう…　　自信をもって言えない、俺がいる…。

「ありゃりゃ…駄目だよ、その思い込み…女心と秋の空ってね…？」

「…　…　…　」
なんだ…、何かのことわざか…？
瑠衣はやっぱり、なんだか物知りだ…

「とにかく見せてくれてありがと～～拓海君の好み、なんだか私の予想通りだった…私とは真逆のタイプだ…これじゃ、勝てないな～じゃ、そろそろ本当に帰るね？おじゃましました～～！」

「…ん、　ああ…　」

バタンとドアの閉まる音…
嵐が過ぎ去ったかのように、シンと…音がしそうなほどに、静まり返る部屋…。

やっぱり、さっきから胸騒ぎが止まらない…　　

俺は意を決して、携帯を手にした。