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~日常~
食後
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「さて…そろそろ、行こうか?お腹はいっぱいになったかな?」優しく微笑みながら杉崎さんが私を見る。
「はい…お腹いっぱいですし、お料理も…すごく美味しかったです。」
お豆腐や湯葉、豆乳ベースのお鍋など体に優しく、本当に美味しいものばかりだった。
拓海とはあまり行かない系統の、品がある、料亭のような店構えのお店。
拓海と行く店は大抵、大衆居酒屋やファミレス、お腹がいっぱいになる定食屋さんなど、およそ男性が好きそうな店ばかりだった。
駄目だと思いつつも、これまで、男性といえば拓海としかデートをしたことがない私は、どうしても比較してしまう。
「それなら良かった!メインが豆腐料理でヘルシーなうえに、結構ボリュームがあって気に入ってるんだ、ここ。」
「そうなんですね…本当に美味しかったので、杉崎さんがリピートされるの、わかります。」
そう言うと、杉崎さんが笑いながら立ち上がって、「じゃあ、また来ようね、二人で。」と、優しい眼で笑いかける。その顔が…その表情が… もう全て… どうしようもなく、愛しい…。
手を差し伸べられ、おずおずと手を伸ばして杉崎さんの大きな手に触れる。
そして、お座敷からゆっくりと立ち上がる。
「はい…是非…。」
ぎゅうと、杉崎さんが私の手を包み込み、心の中が温かくなるのを感じる。
ずっと、こうしていたい…
離れたくない…この手を、離したくない…。
「うん…」
そのまま、ずっと手を繋いでいたい衝動にかられ、思わず立ったまま杉崎さんを見上げる。
バチと、目が合ってしまい、気恥ずかしさにすぐに目を伏せる。
「ふふ… いつも…水無月さんは俺からそうやって…逃げるね…。」
頭上から、杉崎さんのくぐもったような声がした。
「えっ… …?」
どういう意味だろう…私が逃げた…?
下を向いたまま、杉崎さんに包み込まれたままの自身の手を見つめる。
「… ほら…視線が、逃げてる… それと… … の、中でも… 」
「えっ…?」杉崎さんの囁いた声が小さ過ぎて、思わず顔を上げる。
「…ベッドの、中でも…いつも、水無月さんは…そうやって…俺から、逃げる…。」
杉崎さんの視線が、まっすぐに私を射抜いたような気がした…。
「えっ …!? 」
一瞬、耳を疑った…。
およそ… 杉崎さんがこんな場所では…言いそうにない台詞だ… 信じられない…。
「… あっ… の… 」
声が、震えてしまう…。
それと同時に、身体が熱くなるのを感じた…。
ここは、個室だ…
だけど… いつ、係の女性が顔を出すかわからないこんな場所で…
杉崎さんが、こんな言葉を私に発するとは思わず、
私は、息を飲んだ…。
「はい…お腹いっぱいですし、お料理も…すごく美味しかったです。」
お豆腐や湯葉、豆乳ベースのお鍋など体に優しく、本当に美味しいものばかりだった。
拓海とはあまり行かない系統の、品がある、料亭のような店構えのお店。
拓海と行く店は大抵、大衆居酒屋やファミレス、お腹がいっぱいになる定食屋さんなど、およそ男性が好きそうな店ばかりだった。
駄目だと思いつつも、これまで、男性といえば拓海としかデートをしたことがない私は、どうしても比較してしまう。
「それなら良かった!メインが豆腐料理でヘルシーなうえに、結構ボリュームがあって気に入ってるんだ、ここ。」
「そうなんですね…本当に美味しかったので、杉崎さんがリピートされるの、わかります。」
そう言うと、杉崎さんが笑いながら立ち上がって、「じゃあ、また来ようね、二人で。」と、優しい眼で笑いかける。その顔が…その表情が… もう全て… どうしようもなく、愛しい…。
手を差し伸べられ、おずおずと手を伸ばして杉崎さんの大きな手に触れる。
そして、お座敷からゆっくりと立ち上がる。
「はい…是非…。」
ぎゅうと、杉崎さんが私の手を包み込み、心の中が温かくなるのを感じる。
ずっと、こうしていたい…
離れたくない…この手を、離したくない…。
「うん…」
そのまま、ずっと手を繋いでいたい衝動にかられ、思わず立ったまま杉崎さんを見上げる。
バチと、目が合ってしまい、気恥ずかしさにすぐに目を伏せる。
「ふふ… いつも…水無月さんは俺からそうやって…逃げるね…。」
頭上から、杉崎さんのくぐもったような声がした。
「えっ… …?」
どういう意味だろう…私が逃げた…?
下を向いたまま、杉崎さんに包み込まれたままの自身の手を見つめる。
「… ほら…視線が、逃げてる… それと… … の、中でも… 」
「えっ…?」杉崎さんの囁いた声が小さ過ぎて、思わず顔を上げる。
「…ベッドの、中でも…いつも、水無月さんは…そうやって…俺から、逃げる…。」
杉崎さんの視線が、まっすぐに私を射抜いたような気がした…。
「えっ …!? 」
一瞬、耳を疑った…。
およそ… 杉崎さんがこんな場所では…言いそうにない台詞だ… 信じられない…。
「… あっ… の… 」
声が、震えてしまう…。
それと同時に、身体が熱くなるのを感じた…。
ここは、個室だ…
だけど… いつ、係の女性が顔を出すかわからないこんな場所で…
杉崎さんが、こんな言葉を私に発するとは思わず、
私は、息を飲んだ…。
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