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~日常~
夜の光
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「あ… あ、の…」
「… ん…?」
…ベッドの中でも…
私が、杉崎さんから逃げている…
たった今、杉崎さんが口にした言葉に動揺を覚え、私は思わず杉崎さんを見上げる。
私の視線を受けて、一瞬たじろいだような表情を見せた杉崎さんが、ゆっくり口を開いた。
「…なんて、ね、冗談冗談…水無月さんは素直だから…直球で受け止めちゃったね…ごめん、変なこと言って…。」
笑って杉崎さんが私を見下ろす。
「あ… はい… 」
「ごめん、驚かせて…実は俺も…今日は久々に飲んだから…少し酔った…かな…もうこの話は終わり…さ…行こうか。」
「はい…」
杉崎さんがいつものようにカードで会計を済ませ、二人、並んで店を出る。
「ご馳走様でした。」
今夜も、せめて少しだけでもと一部を支払おうと財布を出したら、すぐに断られてしまった。
毎回同じだ…
杉崎さんが私からお金を受け取ることなど、今後もないのかもしれない…。
これから食後はおとなしく、ご馳走様でしたとお礼の挨拶をした方が良いのかもしれないなどと考え始める。
「さむ…っ…」
店を出た途端、杉崎さんが身をすくめる…。
冬本番の冷たい風が、私と杉崎さんの間をすり抜けていった。
「この後は…俺の家に来る…ってことで…大丈夫かな…?それとも…どこか、二次会にでも行こうか…カフェか、バー…みたいなとこ…デザートを食べに行くとか?」
カフェか、バー… デザート…
杉崎さんと一緒に行けば、どこでも楽しいに違いない…。
だけど…今は…
誰にも邪魔されない場所に…杉崎さんの家に、行きたい…
二人きりになりたい… だた、そう…思った…。
「二次会は…お邪魔でなければ…杉崎さんのお部屋にお邪魔したいです…。」
「もちろん、お邪魔ではないので…是非、お邪魔してください…じゃあ、行こっか…。」
ちょんと…杉崎さんの温かな手が私の手の甲に触れて、身体が跳ね上がる…。
「… 手… 繋いでも…? 」ぼそりと呟く杉崎さんの声が、なんだか可愛い…。
今度は触れるだけではなく…
私の手が、杉崎さんの大きな手で包み込まれ…大げさではなく、息が止まりそうになる…。
「あ… … 」
杉崎さんの長い指が…私の指の形を確かめるかのように、ゆっくりと絡められる…。
「あっ… のっ… 人に… 人にみ…見られます… 」
ここは、会社にも割と近い…
しかも今日は週末の夜だ…誰かに見られても、全然おかしくない…。
今夜の杉崎さんは普段と比べると…なぜだかとても大胆だ…確かに、酔っているのかもしれない…。
「…なんかごめん、…俺…さっきから…発言も、行動も…、何もかも、おかしい… 」
「… え… 」
まるで独り言のように、杉崎さんがつぶやくのが聞こえた…。
「…今日は…やっぱり…俺の部屋に来ない方が良いかも…しれないよ…?」
「… え… ?」
「君に…何、するか…わからない…くらいには…多分、酔ってる… …だから、一応、忠告…」
「… あ… 」
「… どうする…?来る…?来ない…?」
手を握られたまま… 杉崎さんの視線に飲まれそうになる…。
眼の光が…
帰るのは許さないと言っているようにも、見える…
何を、するか、わからない…
そんなことを…言われたとしても… それは…今の私にとっては、幸福な…
もはや…この上ない…至福な、言葉でしかない。
もちろん、帰る気なんてない…。
「行きます…」
「ん…了解…じゃあ、タクシーで行こう…。」
店前にちょうど駐めてあったタクシーに乗り込む…。
「… … …」
隣に、杉崎さんの匂い…
なんて… 杉崎さんの隣は、心地よいのだろう…。
私は静かに、夜の光が…後ろに過ぎ去っていくのを眺めた。
「… ん…?」
…ベッドの中でも…
私が、杉崎さんから逃げている…
たった今、杉崎さんが口にした言葉に動揺を覚え、私は思わず杉崎さんを見上げる。
私の視線を受けて、一瞬たじろいだような表情を見せた杉崎さんが、ゆっくり口を開いた。
「…なんて、ね、冗談冗談…水無月さんは素直だから…直球で受け止めちゃったね…ごめん、変なこと言って…。」
笑って杉崎さんが私を見下ろす。
「あ… はい… 」
「ごめん、驚かせて…実は俺も…今日は久々に飲んだから…少し酔った…かな…もうこの話は終わり…さ…行こうか。」
「はい…」
杉崎さんがいつものようにカードで会計を済ませ、二人、並んで店を出る。
「ご馳走様でした。」
今夜も、せめて少しだけでもと一部を支払おうと財布を出したら、すぐに断られてしまった。
毎回同じだ…
杉崎さんが私からお金を受け取ることなど、今後もないのかもしれない…。
これから食後はおとなしく、ご馳走様でしたとお礼の挨拶をした方が良いのかもしれないなどと考え始める。
「さむ…っ…」
店を出た途端、杉崎さんが身をすくめる…。
冬本番の冷たい風が、私と杉崎さんの間をすり抜けていった。
「この後は…俺の家に来る…ってことで…大丈夫かな…?それとも…どこか、二次会にでも行こうか…カフェか、バー…みたいなとこ…デザートを食べに行くとか?」
カフェか、バー… デザート…
杉崎さんと一緒に行けば、どこでも楽しいに違いない…。
だけど…今は…
誰にも邪魔されない場所に…杉崎さんの家に、行きたい…
二人きりになりたい… だた、そう…思った…。
「二次会は…お邪魔でなければ…杉崎さんのお部屋にお邪魔したいです…。」
「もちろん、お邪魔ではないので…是非、お邪魔してください…じゃあ、行こっか…。」
ちょんと…杉崎さんの温かな手が私の手の甲に触れて、身体が跳ね上がる…。
「… 手… 繋いでも…? 」ぼそりと呟く杉崎さんの声が、なんだか可愛い…。
今度は触れるだけではなく…
私の手が、杉崎さんの大きな手で包み込まれ…大げさではなく、息が止まりそうになる…。
「あ… … 」
杉崎さんの長い指が…私の指の形を確かめるかのように、ゆっくりと絡められる…。
「あっ… のっ… 人に… 人にみ…見られます… 」
ここは、会社にも割と近い…
しかも今日は週末の夜だ…誰かに見られても、全然おかしくない…。
今夜の杉崎さんは普段と比べると…なぜだかとても大胆だ…確かに、酔っているのかもしれない…。
「…なんかごめん、…俺…さっきから…発言も、行動も…、何もかも、おかしい… 」
「… え… 」
まるで独り言のように、杉崎さんがつぶやくのが聞こえた…。
「…今日は…やっぱり…俺の部屋に来ない方が良いかも…しれないよ…?」
「… え… ?」
「君に…何、するか…わからない…くらいには…多分、酔ってる… …だから、一応、忠告…」
「… あ… 」
「… どうする…?来る…?来ない…?」
手を握られたまま… 杉崎さんの視線に飲まれそうになる…。
眼の光が…
帰るのは許さないと言っているようにも、見える…
何を、するか、わからない…
そんなことを…言われたとしても… それは…今の私にとっては、幸福な…
もはや…この上ない…至福な、言葉でしかない。
もちろん、帰る気なんてない…。
「行きます…」
「ん…了解…じゃあ、タクシーで行こう…。」
店前にちょうど駐めてあったタクシーに乗り込む…。
「… … …」
隣に、杉崎さんの匂い…
なんて… 杉崎さんの隣は、心地よいのだろう…。
私は静かに、夜の光が…後ろに過ぎ去っていくのを眺めた。
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