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第二章 王国動乱
淫欲の宴
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王城黒百合城、そこから回廊で繋がった離れに存在する後宮の主は今、幼王ジョンの母親である太后、メリッサ・キャロルであった。
そのメリッサが今、血のように真っ赤なワインを飲み干している。
ごくごくとわざと音を立ててそれを飲み干すメリッサの口元からは赤い一滴が垂れ、彼女はそれを舐め取っては妖艶に微笑んでいた。
「さぁ・・・これは誰のものかしら?貴方、それとも貴方?」
後宮の贅をつくした建物の中でも、一際贅をつくした部屋でゆったりとソファに座っているメリッサ。
彼女が座るソファの前には小ぶりなテーブルがあり、その上には幾つかのワイングラスとそこに満たされた真っ赤な液体の姿がある。
そしてその先には、彼女が今飲み干した分のワイングラスを加えた数と同じ人数の、まだ年端もいかない美しい貴族の子女達の姿があった。
彼らの様子は様々で、怯えたように顔を真っ青に染めている者もあれば、恍惚の表情でメリッサをうっとりと見詰める者もいる。
そんな彼らに共通する部分と言えば、その手首に巻かれた目新しい包帯だろう。
「このねっとりとした舌触りに、鼻につくような刺激臭・・・分かったわ、貴方ね!」
一列に並んだ貴族の子女の前を、メリッサはゆっくりと歩く。
彼女はその半裸のような恰好で彼らの前を歩きながら、口の中に残しておいたのか先ほどの液体をくちゅくちゅと口の中で遊ばせては、それを再び味わっている。
そうして彼女は一列に並んだ貴族の子女の中から、一人の少年を選んでいた。
「あ、あぁ・・・」
選ばれた少年が思わず失禁してしまったのは、怯えからか、それとも余りの嬉しさのためか。
「あらあら、はしたなくってよ?ふふふ、まぁいいわ。それより答え合わせをしないとね」
そんな少年の姿に、メリッサは口元押さえると上品に笑う。
彼女の足元では、その身体を覆っていた薄絹が少年の漏らした液体に浸され、薄っすら色を変える。
その様子に、周りの子女達がクスクスと笑い声を漏らしていた。
「動いちゃ駄目よ?ふふっ、いい子ね・・・それじゃ、あ~ん」
メリッサが答え合わせと口にすると周りからは羨望の声が上がり、その身体をびくりと震わせた少年の足元からは、再びホカホカと湯気が立ち上る。
それらの反応に笑みを漏らしたメリッサは、その真っ赤な紅を引いた美しい唇を開けると、少年の首筋へと近づいていく。
その犬歯は、奇妙なほどに鋭く尖っていた。
「母上!母上、どこですか!!」
そこにドスドスと怒りに満ちた足音を立てながら、彼女の息子である幼王ジョンが部屋に押し入ってきていた。
「あら、ジョンじゃない?珍しいわね、どうしたのそんなに慌てて」
部屋へと入ってきたジョンに、メリッサはその犬歯を少年の首筋へと食い込ませる寸前で止めている。
「あぁ・・・」
それに、その少年は心底残念そうな呻き声を上げていた。
「何をしているの?邪魔よ、消えなさい」
そんな少年へと冷たく目線を向けたメリッサは、吐き捨てるようにそう囁く。
その声に慌てて、貴族の子女達は荷物をまとめてこの場を後にしていた。
「奥方様・・・」
その中で一人だけ、メリッサに首筋を噛みつかれそうだった少年だけが名残惜しそうに振り返る。
「ゴミ虫共が」
そんな少年とすれ違うジョンは、すれ違い際にそう吐き捨てる。
ジョンが彼らへと向ける目は、まさにその言葉と同じものを見るようなものであった。
「さぁおいで、愛しき坊や。そして何があったのか、この母に聞かせてちょうだい?」
元々腰を下ろしていたソファへと戻ったメリッサは、息子に対して手を差し伸べて彼の事を招く。
その顔に浮かんでいるのは先ほどまで見せていた妖艶な表情ではなく、慈愛に満ちたまさに聖母のような表情であった。
「・・・うん」
母の腕に抱かれ、ジョンは頷く。
その顔には、先ほどまでのような怒りの色は微塵も感じられなかった。
「そう、そんな事が・・・」
ジョンから事情を聞き終えたメリッサは、そう呟くと何かを考えるように顎に指を添える。
「そうなのです、母上!!だからそのユークレール家を取り潰せと命令したのに・・・あいつらは皆反対だって!!余は王なのに!!」
自分が不遇な扱いをされていると、母親の腕の中で訴えるジョン。
「母上は!母上は賛成してくれますよね!?母上さえ賛成してくれれば、ユークレール家など容易く―――」
側近達に裏切られたジョンは、最後の拠り所として母親であるメリッサに縋る。
その腕の抱かれながら物騒な事を口走るジョン、しかしその表情は危なっかしいほどに無防備だった。
「駄目よ」
しかしメリッサの口から出た言葉、彼が期待したものではなかった。
「・・・え?母、上?」
その短く冷たい拒絶の言葉に、ジョンの表情はひび割れていく。
「ユークレール家は王家であるエルドリッチ家よりも歴史が古いと言われるほどの名家なのよ?そんな家を取り潰すなんて、有り得ないわ。それよりもこの事を利用する事を考えるのよ、ジョン。今回の事は、うまく利用出来ればユークレール家に貸しを作れるわ。今はあの男に人質を取られているようなものだけど、それを解決出来れば一気にユークレール家を味方に引き込むことも・・・ジョン?聞いているの?」
ジョンから耳にした話は、メリッサからすれば政争の道具でしかない。
彼女は、それを下にした陰謀の戦略を口にする。
それは彼女自身だけではなく、息子であるジョンを想っての事だったかもしれないが、そのジョン自身はそんな事を望んではいなかったのだ。
「そんな・・・母上まで、母上まで余を裏切るのか!!!」
彼はただ肯定して欲しかっただけなのだ、自らの考えを母親に。
その願いを裏切られた彼は、ふらふらとその手から離れると叫ぶ。
彼の顔は、怒りと悲しみでぐちゃぐちゃになってしまっていた。
「ジョン!!何だったのかしら、あの子は・・・」
唯一の味方だと思っていた母親からも裏切られ、ジョンは部屋から飛び出していく。
そんな彼の姿に、メリッサは頬に手をやりながら不思議そうに首を傾げていた。
「お、奥方様。ぼ、僕・・・」
飛び出していったジョンと入れ替わるようにして、この部屋に一人の少年が足を踏み入れる。
それは先ほど、メリッサに首筋を噛まれようとしていたあの少年であった。
「あら、帰ってきちゃったの?いけない子ね・・・さぁ、こっちにおいでなさい。お仕置きしてあげるわ」
少年の姿に、メリッサは舌を舐めると妖艶に微笑む。
その表情は先ほどまでの母の優しさなど微塵も感じされず、ただ一匹の雌がそこにいるだけであった。
「は、はい!!」
メリッサの声に喜びの声を上げた少年はまたしても失禁し、その足元からホカホカと湯気を立てていた。
そのメリッサが今、血のように真っ赤なワインを飲み干している。
ごくごくとわざと音を立ててそれを飲み干すメリッサの口元からは赤い一滴が垂れ、彼女はそれを舐め取っては妖艶に微笑んでいた。
「さぁ・・・これは誰のものかしら?貴方、それとも貴方?」
後宮の贅をつくした建物の中でも、一際贅をつくした部屋でゆったりとソファに座っているメリッサ。
彼女が座るソファの前には小ぶりなテーブルがあり、その上には幾つかのワイングラスとそこに満たされた真っ赤な液体の姿がある。
そしてその先には、彼女が今飲み干した分のワイングラスを加えた数と同じ人数の、まだ年端もいかない美しい貴族の子女達の姿があった。
彼らの様子は様々で、怯えたように顔を真っ青に染めている者もあれば、恍惚の表情でメリッサをうっとりと見詰める者もいる。
そんな彼らに共通する部分と言えば、その手首に巻かれた目新しい包帯だろう。
「このねっとりとした舌触りに、鼻につくような刺激臭・・・分かったわ、貴方ね!」
一列に並んだ貴族の子女の前を、メリッサはゆっくりと歩く。
彼女はその半裸のような恰好で彼らの前を歩きながら、口の中に残しておいたのか先ほどの液体をくちゅくちゅと口の中で遊ばせては、それを再び味わっている。
そうして彼女は一列に並んだ貴族の子女の中から、一人の少年を選んでいた。
「あ、あぁ・・・」
選ばれた少年が思わず失禁してしまったのは、怯えからか、それとも余りの嬉しさのためか。
「あらあら、はしたなくってよ?ふふふ、まぁいいわ。それより答え合わせをしないとね」
そんな少年の姿に、メリッサは口元押さえると上品に笑う。
彼女の足元では、その身体を覆っていた薄絹が少年の漏らした液体に浸され、薄っすら色を変える。
その様子に、周りの子女達がクスクスと笑い声を漏らしていた。
「動いちゃ駄目よ?ふふっ、いい子ね・・・それじゃ、あ~ん」
メリッサが答え合わせと口にすると周りからは羨望の声が上がり、その身体をびくりと震わせた少年の足元からは、再びホカホカと湯気が立ち上る。
それらの反応に笑みを漏らしたメリッサは、その真っ赤な紅を引いた美しい唇を開けると、少年の首筋へと近づいていく。
その犬歯は、奇妙なほどに鋭く尖っていた。
「母上!母上、どこですか!!」
そこにドスドスと怒りに満ちた足音を立てながら、彼女の息子である幼王ジョンが部屋に押し入ってきていた。
「あら、ジョンじゃない?珍しいわね、どうしたのそんなに慌てて」
部屋へと入ってきたジョンに、メリッサはその犬歯を少年の首筋へと食い込ませる寸前で止めている。
「あぁ・・・」
それに、その少年は心底残念そうな呻き声を上げていた。
「何をしているの?邪魔よ、消えなさい」
そんな少年へと冷たく目線を向けたメリッサは、吐き捨てるようにそう囁く。
その声に慌てて、貴族の子女達は荷物をまとめてこの場を後にしていた。
「奥方様・・・」
その中で一人だけ、メリッサに首筋を噛みつかれそうだった少年だけが名残惜しそうに振り返る。
「ゴミ虫共が」
そんな少年とすれ違うジョンは、すれ違い際にそう吐き捨てる。
ジョンが彼らへと向ける目は、まさにその言葉と同じものを見るようなものであった。
「さぁおいで、愛しき坊や。そして何があったのか、この母に聞かせてちょうだい?」
元々腰を下ろしていたソファへと戻ったメリッサは、息子に対して手を差し伸べて彼の事を招く。
その顔に浮かんでいるのは先ほどまで見せていた妖艶な表情ではなく、慈愛に満ちたまさに聖母のような表情であった。
「・・・うん」
母の腕に抱かれ、ジョンは頷く。
その顔には、先ほどまでのような怒りの色は微塵も感じられなかった。
「そう、そんな事が・・・」
ジョンから事情を聞き終えたメリッサは、そう呟くと何かを考えるように顎に指を添える。
「そうなのです、母上!!だからそのユークレール家を取り潰せと命令したのに・・・あいつらは皆反対だって!!余は王なのに!!」
自分が不遇な扱いをされていると、母親の腕の中で訴えるジョン。
「母上は!母上は賛成してくれますよね!?母上さえ賛成してくれれば、ユークレール家など容易く―――」
側近達に裏切られたジョンは、最後の拠り所として母親であるメリッサに縋る。
その腕の抱かれながら物騒な事を口走るジョン、しかしその表情は危なっかしいほどに無防備だった。
「駄目よ」
しかしメリッサの口から出た言葉、彼が期待したものではなかった。
「・・・え?母、上?」
その短く冷たい拒絶の言葉に、ジョンの表情はひび割れていく。
「ユークレール家は王家であるエルドリッチ家よりも歴史が古いと言われるほどの名家なのよ?そんな家を取り潰すなんて、有り得ないわ。それよりもこの事を利用する事を考えるのよ、ジョン。今回の事は、うまく利用出来ればユークレール家に貸しを作れるわ。今はあの男に人質を取られているようなものだけど、それを解決出来れば一気にユークレール家を味方に引き込むことも・・・ジョン?聞いているの?」
ジョンから耳にした話は、メリッサからすれば政争の道具でしかない。
彼女は、それを下にした陰謀の戦略を口にする。
それは彼女自身だけではなく、息子であるジョンを想っての事だったかもしれないが、そのジョン自身はそんな事を望んではいなかったのだ。
「そんな・・・母上まで、母上まで余を裏切るのか!!!」
彼はただ肯定して欲しかっただけなのだ、自らの考えを母親に。
その願いを裏切られた彼は、ふらふらとその手から離れると叫ぶ。
彼の顔は、怒りと悲しみでぐちゃぐちゃになってしまっていた。
「ジョン!!何だったのかしら、あの子は・・・」
唯一の味方だと思っていた母親からも裏切られ、ジョンは部屋から飛び出していく。
そんな彼の姿に、メリッサは頬に手をやりながら不思議そうに首を傾げていた。
「お、奥方様。ぼ、僕・・・」
飛び出していったジョンと入れ替わるようにして、この部屋に一人の少年が足を踏み入れる。
それは先ほど、メリッサに首筋を噛まれようとしていたあの少年であった。
「あら、帰ってきちゃったの?いけない子ね・・・さぁ、こっちにおいでなさい。お仕置きしてあげるわ」
少年の姿に、メリッサは舌を舐めると妖艶に微笑む。
その表情は先ほどまでの母の優しさなど微塵も感じされず、ただ一匹の雌がそこにいるだけであった。
「は、はい!!」
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