122 / 210
第二章 王国動乱
すれ違う者達
しおりを挟む
「おっと、これは失礼」
王都クイーンズガーデン、その小高い丘の上に立つ王城へと続く緩やかな坂の麓までルーカスと共に下りてきたパトリックは、そこで慌てた様子で駆けてきた青年とぶつかりそうになっていた。
それを蛇のような身のこなしでぬるりと躱した彼は、逆に体勢を崩しそうになっていた青年の事を手を差し伸べて助け起こしている。
「い、いえこちらこそ!」
パトリックに助け起こされた青年は相当急いでいるのか、礼もそこそこに再び駆け出していく。
「おやおや、これはこれは・・・」
そんな青年の姿を、パトリックはじっと見詰めていた。
「おい、何をしている!置いていくぞ、ボールドウィン!」
「えぇ、今行きますよルーカス様」
青年の姿をじっと見詰めたままその場を動こうとしないパトリックに、苛立った様子のルーカスの声が飛ぶ。
「さてさて、どうなります事やら・・・色々と気にはなりますが、私には私の務めというものがございますので。あぁ、残念だ残念だ」
苛立つルーカスに、パトリックは今行くと返事をするとそちらへと歩みを進め始める。
彼はその途中で振り返ると、去っていった青年の後姿を見詰め、残念そうに首を横に振っていた。
「ふぅ、危ない危ない・・・優しい人で助かったな」
パトリックが視線を向けていた青年は、ここまでよほど慌てて走ってきたのか額に浮かんだ汗を拭いながら、そう息を吐く。
「そうだ追っ手は!?撒いたの、か?ふぅ~・・・何とか逃げ切れたぁ」
追っ手を警戒するように後ろを振り返った青年、ユーリはそこに追っ手の姿がない事に安堵の息を漏らす。
彼らが泊まっている部屋に突然鳴り響いたノックの音、彼はそれを追うが放った追っ手だと勘違いし、その場で窓から逃げ出していたのだった。
「はー・・・しかし、王様がこんなに早く仕掛けてくるなんて思ってもなかったな。これはちょっと、不味いかもしれないな」
両手を膝についてどうにか逃げ切ったと安堵しているユーリは身体を起こすと、今度は上がった体温を冷ますためではない汗を拭う。
あの騒動を王が追っ手を差し向けてきたのだと勘違いしたままユーリからすれば、彼の命はまさに風前の灯火ともいえたのである。
「うー・・・これはあれか?もうあれしかないか?」
追い詰められた彼にとって、もはや取るべき手段は二つしかない。
一つ目は、ヘイニーが勧めたように身を隠す事。
そして二つ目は―――。
「いや、無理だろ正直。でもなぁ、身を隠すのはちょっと・・・いつまで掛かるか分からないし。うーん、やっぱやるかぁ?」
その二つ目の手段を思い浮かべては、ユーリは頭を抱え悩ませる。
「はー・・・ネロ、プティ。お前達の事、信じるからな」
やがて決断した彼は、立ち上がり見上げる。
その先には、丘の上に立つ黒いシルエット、黒百合城の姿が映っていた。
彼は決めたのだ、幼王ジョンと直接会って説得するという二つ目の手段を実行する事を。
王都クイーンズガーデン、その小高い丘の上に立つ王城へと続く緩やかな坂の麓までルーカスと共に下りてきたパトリックは、そこで慌てた様子で駆けてきた青年とぶつかりそうになっていた。
それを蛇のような身のこなしでぬるりと躱した彼は、逆に体勢を崩しそうになっていた青年の事を手を差し伸べて助け起こしている。
「い、いえこちらこそ!」
パトリックに助け起こされた青年は相当急いでいるのか、礼もそこそこに再び駆け出していく。
「おやおや、これはこれは・・・」
そんな青年の姿を、パトリックはじっと見詰めていた。
「おい、何をしている!置いていくぞ、ボールドウィン!」
「えぇ、今行きますよルーカス様」
青年の姿をじっと見詰めたままその場を動こうとしないパトリックに、苛立った様子のルーカスの声が飛ぶ。
「さてさて、どうなります事やら・・・色々と気にはなりますが、私には私の務めというものがございますので。あぁ、残念だ残念だ」
苛立つルーカスに、パトリックは今行くと返事をするとそちらへと歩みを進め始める。
彼はその途中で振り返ると、去っていった青年の後姿を見詰め、残念そうに首を横に振っていた。
「ふぅ、危ない危ない・・・優しい人で助かったな」
パトリックが視線を向けていた青年は、ここまでよほど慌てて走ってきたのか額に浮かんだ汗を拭いながら、そう息を吐く。
「そうだ追っ手は!?撒いたの、か?ふぅ~・・・何とか逃げ切れたぁ」
追っ手を警戒するように後ろを振り返った青年、ユーリはそこに追っ手の姿がない事に安堵の息を漏らす。
彼らが泊まっている部屋に突然鳴り響いたノックの音、彼はそれを追うが放った追っ手だと勘違いし、その場で窓から逃げ出していたのだった。
「はー・・・しかし、王様がこんなに早く仕掛けてくるなんて思ってもなかったな。これはちょっと、不味いかもしれないな」
両手を膝についてどうにか逃げ切ったと安堵しているユーリは身体を起こすと、今度は上がった体温を冷ますためではない汗を拭う。
あの騒動を王が追っ手を差し向けてきたのだと勘違いしたままユーリからすれば、彼の命はまさに風前の灯火ともいえたのである。
「うー・・・これはあれか?もうあれしかないか?」
追い詰められた彼にとって、もはや取るべき手段は二つしかない。
一つ目は、ヘイニーが勧めたように身を隠す事。
そして二つ目は―――。
「いや、無理だろ正直。でもなぁ、身を隠すのはちょっと・・・いつまで掛かるか分からないし。うーん、やっぱやるかぁ?」
その二つ目の手段を思い浮かべては、ユーリは頭を抱え悩ませる。
「はー・・・ネロ、プティ。お前達の事、信じるからな」
やがて決断した彼は、立ち上がり見上げる。
その先には、丘の上に立つ黒いシルエット、黒百合城の姿が映っていた。
彼は決めたのだ、幼王ジョンと直接会って説得するという二つ目の手段を実行する事を。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2,386
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる