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第一章 最果ての街キッパゲルラ
イストリア騒乱
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最果ての街キッパゲルラその領主の館である「放蕩者の館」、その中に設けられた談話室はその大仰な建物に相応しく、多くの人が集まっても十分な広さを誇っていた。
そこに今、それが狭く感じるほどの人がごった返している。
それは、このイストリア公爵領に属する領主達であった。
彼らはユーリがその領地に派遣されその手腕を見せつけて以降、こうして何かにつけて集まるようになっており、すっかりイストリア公爵であるヘイニーの封臣として振舞うようになっていたのだった。
「いやぁ、それにしてもユーリ氏の手腕は見事ですなぁ!!」
「聞きましたか?つい先日も、近隣を荒らしまわっていた盗賊団を壊滅させたとか」
「確かに素晴らしい活躍ですが・・・それはユーリ氏ではなく、エクス嬢の手柄ではありませんか?」
「いやいや、それがですな聞いてくださいよ。ユーリ氏が凄いのはそれからで、何と捕まえた盗賊団に何か教訓を書いて見せただけで改心させたとか!今では彼らは交易路の警備の仕事をやっているという話ですぞ!」
ヘイニーを取り囲み、口々にユーリの手腕を褒め称える貴族達。
彼らは彼の手腕に感心するあまり、噂に尾ひれもはひれも付け加えて話してしまっているようだった。
「はっはっは、それは凄い!しかしあれですな、こうしてみると増々感じますな」
「何がですかな?」
「ユーリ氏を招かなかった彼らの先見性のなさをですよ!今頃さぞや悔しがっているでしょうな!」
「いや全く、その通りですなぁ!はっはっはっは!!」
ユーリの手腕を頼る事によってまさに栄華を誇っている貴族達は、それを断りわざわざ自分から苦境に陥っているゲイラー達の事を見下しては笑い合っていた。
「彼らには彼らの考えがあっての事でしょう。それに皆が一斉に同じ事へと走るのは危険もありましょう」
「はははっ、流石はヘイニー様!お優しくあられる、それでこそ我らが盟主たるイストリア公爵と言うものでございますな!!」
彼らの発言を、ヘイニーがそっと窘める。
しかしそんな彼の発言も、今の彼らにとっては担ぎ上げる理由になってしまうようで、彼らはヘイニーを取り囲んではさらに彼を持ち上げようとしていた。
「いや、私は―――」
その時、館の外から轟音が響く。
「な、何ですかなこの音は!?あ、あれは!!?」
響いた轟音に慌て、窓へと駆け寄った貴族の一人は、その先にモクモクと煙を立ち昇らせている城壁の姿を目にしていた。
「城壁が!?これはもしや・・・エクス嬢の仕業ですかな?」
「あぁ、彼女の・・・彼女はこれがあるのが玉に瑕ですな」
「しかしあの美しい姿を目にすると、ついつい許してしまいたくなりますなぁ。いや、男の辛い所で」
響いた轟音、そして破壊された城壁。
その二つを繋ぎ合わせる存在を、彼らは知っていた。
その存在、エクスを思い浮かべ彼らは一様に納得の表情を浮かべる。
彼らは皆知っていたのだ、彼女ならばそれをやりかねないと。
「はははっ、仰られる通りですな。しかし困りましたな、こんな時にもし困窮したゲイラー殿あたりが自棄になって攻めてきてもしたら・・・これは、一溜りもありませんなぁ!はっはっはっは・・・は?あ、あれ?どうなさいました、皆様?ここは笑う所ですぞ?」
崩れ落ちる城壁の姿を目にしながら、集まった貴族の一人が冗談を口にしては笑い声を上げている。
彼はその冗談に当然、周りも同意して笑ってくれるものと考えていたようだったが、彼の予想に反して周りは深刻な表情を浮かべていたのだった。
「あ、有り得ない話ではないのではないか?」
「た、確かに・・・追い詰められた彼らが思い切った手に出るという事は、十分に考えられる。ゲイラー殿はヘイニー様の従弟だ、イストリア公爵位を請求する資格は持ち合わせておりますし」
「ま、まさか・・・はははっ、冗談が過ぎますぞ皆様方!そんな事ある訳が―――」
周囲の貴族達が一様に押し黙り深刻な表情を浮かべたのは、その貴族が口にした事があながち冗談では済まないと考えたからだった。
まさに栄華を極めている状態のヘイニーとその一派達、それに引き換えゲイラーに付き従っている貴族達は困窮する一方だ。
それはヘイニー達が彼らの豊かさを吸収している面もあり、それを恨んだ彼らがゲイラーを旗印に何かを仕掛けてくることは、十分に考えられる事だった。
「た、大変でございます旦那様!!ゲイラーが、ゲイラー・ウッド伯爵が宣戦布告して参りました!!彼らはゲイラーこそがイストリア公爵に相応しいと、ゲルダン平原に兵を進めております!!」
そしてそれは、現実になる。
顔を真っ青に染めた執事バートラムが談話室の扉を彼らしくない荒々しい動作で開け放ち、叫ぶ。
ゲイラーが、ゲイラー・ウッド伯爵が兵を率いて攻め入ってきたと。
そこに今、それが狭く感じるほどの人がごった返している。
それは、このイストリア公爵領に属する領主達であった。
彼らはユーリがその領地に派遣されその手腕を見せつけて以降、こうして何かにつけて集まるようになっており、すっかりイストリア公爵であるヘイニーの封臣として振舞うようになっていたのだった。
「いやぁ、それにしてもユーリ氏の手腕は見事ですなぁ!!」
「聞きましたか?つい先日も、近隣を荒らしまわっていた盗賊団を壊滅させたとか」
「確かに素晴らしい活躍ですが・・・それはユーリ氏ではなく、エクス嬢の手柄ではありませんか?」
「いやいや、それがですな聞いてくださいよ。ユーリ氏が凄いのはそれからで、何と捕まえた盗賊団に何か教訓を書いて見せただけで改心させたとか!今では彼らは交易路の警備の仕事をやっているという話ですぞ!」
ヘイニーを取り囲み、口々にユーリの手腕を褒め称える貴族達。
彼らは彼の手腕に感心するあまり、噂に尾ひれもはひれも付け加えて話してしまっているようだった。
「はっはっは、それは凄い!しかしあれですな、こうしてみると増々感じますな」
「何がですかな?」
「ユーリ氏を招かなかった彼らの先見性のなさをですよ!今頃さぞや悔しがっているでしょうな!」
「いや全く、その通りですなぁ!はっはっはっは!!」
ユーリの手腕を頼る事によってまさに栄華を誇っている貴族達は、それを断りわざわざ自分から苦境に陥っているゲイラー達の事を見下しては笑い合っていた。
「彼らには彼らの考えがあっての事でしょう。それに皆が一斉に同じ事へと走るのは危険もありましょう」
「はははっ、流石はヘイニー様!お優しくあられる、それでこそ我らが盟主たるイストリア公爵と言うものでございますな!!」
彼らの発言を、ヘイニーがそっと窘める。
しかしそんな彼の発言も、今の彼らにとっては担ぎ上げる理由になってしまうようで、彼らはヘイニーを取り囲んではさらに彼を持ち上げようとしていた。
「いや、私は―――」
その時、館の外から轟音が響く。
「な、何ですかなこの音は!?あ、あれは!!?」
響いた轟音に慌て、窓へと駆け寄った貴族の一人は、その先にモクモクと煙を立ち昇らせている城壁の姿を目にしていた。
「城壁が!?これはもしや・・・エクス嬢の仕業ですかな?」
「あぁ、彼女の・・・彼女はこれがあるのが玉に瑕ですな」
「しかしあの美しい姿を目にすると、ついつい許してしまいたくなりますなぁ。いや、男の辛い所で」
響いた轟音、そして破壊された城壁。
その二つを繋ぎ合わせる存在を、彼らは知っていた。
その存在、エクスを思い浮かべ彼らは一様に納得の表情を浮かべる。
彼らは皆知っていたのだ、彼女ならばそれをやりかねないと。
「はははっ、仰られる通りですな。しかし困りましたな、こんな時にもし困窮したゲイラー殿あたりが自棄になって攻めてきてもしたら・・・これは、一溜りもありませんなぁ!はっはっはっは・・・は?あ、あれ?どうなさいました、皆様?ここは笑う所ですぞ?」
崩れ落ちる城壁の姿を目にしながら、集まった貴族の一人が冗談を口にしては笑い声を上げている。
彼はその冗談に当然、周りも同意して笑ってくれるものと考えていたようだったが、彼の予想に反して周りは深刻な表情を浮かべていたのだった。
「あ、有り得ない話ではないのではないか?」
「た、確かに・・・追い詰められた彼らが思い切った手に出るという事は、十分に考えられる。ゲイラー殿はヘイニー様の従弟だ、イストリア公爵位を請求する資格は持ち合わせておりますし」
「ま、まさか・・・はははっ、冗談が過ぎますぞ皆様方!そんな事ある訳が―――」
周囲の貴族達が一様に押し黙り深刻な表情を浮かべたのは、その貴族が口にした事があながち冗談では済まないと考えたからだった。
まさに栄華を極めている状態のヘイニーとその一派達、それに引き換えゲイラーに付き従っている貴族達は困窮する一方だ。
それはヘイニー達が彼らの豊かさを吸収している面もあり、それを恨んだ彼らがゲイラーを旗印に何かを仕掛けてくることは、十分に考えられる事だった。
「た、大変でございます旦那様!!ゲイラーが、ゲイラー・ウッド伯爵が宣戦布告して参りました!!彼らはゲイラーこそがイストリア公爵に相応しいと、ゲルダン平原に兵を進めております!!」
そしてそれは、現実になる。
顔を真っ青に染めた執事バートラムが談話室の扉を彼らしくない荒々しい動作で開け放ち、叫ぶ。
ゲイラーが、ゲイラー・ウッド伯爵が兵を率いて攻め入ってきたと。
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