183 / 208
ハネムーン編
ハネムーン編 マテリオ 4 *R18 最終話
しおりを挟む
「ん~、ここがマテリオのへや?」
シンプルな部屋だなぁ。マテリオの合理的で質素な性格が現れている。そっとベッドに下ろしてくれた。
「そうだ。何もなくて済まないが、ノーマ殿達がジュンヤの荷物も運び入れてくれた」
「アレもありゅ?」
「……もちろん、ある」
「はやく、エッチしよ?」
「ーーっ!! 待て。遮音をかけてくる」
マテリオが離れて、バッグから遮音の魔道具を取り出して発動させた。
「マテリオぉ~はやくぅ~!」
「分かっている。玉を出すから……」
さらにバッグをゴソゴソして、エッチなお道具一式が出てきた。俺はその合間にもつれる手でボタンを外していく。
「ジュン……ヤ」
「ん、手伝って?」
イチャイチャしたいイチャイチャしたい……
脱ぐ手伝いをしてくれるマテリオを引き寄せた。
「チューする……」
「お前はっ! 私がどれだけ我慢しているか、んんっ!」
ちゅっちゅっ……あ~美味しい。好き。はやくエッチしたい二人だけでイチャイチャしたい……
「ジュンヤ、今日は可愛いな……」
「しきょうじゃないマテリオ、嬉しい。かわいい……しゅき」
「ジュンヤも可愛かった。ずっと我慢をしていた……愛してる……」
深い口づけに変わり、マテリオの唾液をねだって啜る。
「——ちゅながりたい」
「私もだ」
マテリオは乱暴に服を脱ぎ捨てて、香油で玉を埋め込んだ。
「マテリオ……はやくきて、らいじょうぶだからぁ」
「だが」
「やら、はやく~」
ずっとエッチしっぱなしだから、濡らしてくれるだけで良いと思う。はやくきてくれよ~!
「待て、少しだけ解すから」
「んんっ……あぁ……」
ずぶずぶと指が一本入ってくる。だけど、それじゃ足りない。
クチュッ……ジュプ……グチュッ……
「はっ、はぁ……あん……もっとぉ」
「ああ、増やすぞ」
二本、三本……気遣っているのはわかる。
——でも、限界だ
「はやく! はやく、こいよぉ~! きて……」
「っ! まったく、お前は……!」
ガバッと足を担いだマテリオが、俺の中に押し入ってくる。
これがほしかった——!
「っう~! あっ! あっ! んっ、イイ!」
「——っ! はっ、はっ! なんて、淫らな体だ……愛してる……!」
パン! パン! グチュッ、ヌチュッ!
俺の中からやらしい音がする……マテリオに食われてる音……
「ふぁっ、あんっ! そこっ!」
「ここ、か?」
「あんっ、そこぉ~!」
マテリオが俺のイイところをガンガン突き上げて、あっという間に絶頂に向かってしまう。
「んっ、一緒が、いい! いっしょ、イく!」
「奥まで、入って、良いかっ?」
「いいっ! あ~~っ」
全部を受け入れて、そのままマテリオがガツガツと俺を貪る。
「あっ、ひぅっ! いぃ! イッちゃ、あっ! ~~っ!」
「くぅっ! 私、もっ……!」
奥の深いところにマテリオの愛が注がれて、うっとりと受け入れる。
「マテリオ ……あかちゃん、ほちいね……」
「ああ……私たちの未来を……産んでくれ」
未来を産む……素敵な言葉だな。
「うん……あいちてる」
そこから多分、二回戦くらいエッチして、満足した俺たちは抱き合って眠った。
◇
次の日の朝。町の浄化をするために準備をしていたのだが……お義父さん、お義母さんが赤い顔で俺達を見ていた。
えっと、遮音はしてるから聞かれてない。けど、多分香りとか痕を隠すためのお化粧とか……めちゃくちゃエッチしたってバレバレです。
そして、護衛のラドクルトは俺を厳しい目で見ていた。
「……ジュンヤ様、マテリオ殿。私があれほどお願いしたのに、すっかりお忘れのようですね」
「ごっ、ごめん……」
「……すまない」
ラドクルトに、町を出歩く前日はエッチしないでくださいね! って頼まれてたんだよな~。
「ジュンヤ様。案の定エッチな香りを振りまいてるし、表情も全部エッチだし! 護衛の俺達が大変じゃないっすか~!!」
ウォーベルトはもう少し婉曲な表現を覚えようか?
「ううっ……いやぁ、昨夜はちょっと酔っ払ってさぁ~」
酔っ払ったらエッチしたくなったんだもん!! マテリオが可愛かったんだもん!!
良い大人が『だもん』なんて言っても可愛くないから言わないけどさぁ~。
「ラドクルト殿、ご迷惑をおかけしてすまない。ジュンヤがあまりにも魅力的で我慢できなかった私の責任です」
「ゴホッ! ゲホッ!」
「——マテリオ殿は、相変わらずっすね……その天然の惚気、破壊力ありすぎっす」
「そんなつもりではないのだが」
むせたラドクルト、あきれ返るウォーベルト。
「ゴホンッ! ともかく、ジュンヤ様。今日は民と少し距離を取ってください。今日のジュンヤ様はとにかく危険です! 虫が寄ってきたら私達が団長にお仕置きされますから!」
「分かったよ」
はい、ラドクルトに心労をかけないように気をつけます!!
と、いうわけで俺達は町の教会に出かけた。小さな町なので、治療院が併設してあるそうなんだ。
「マテリオ! いや、マテリオ司教、ご立派になられたな」
「トッパー神官、これまで通りマテリオとお呼びください」
マテリオにしたら、この年配の神官は幼い頃からお世話になった人。その人に敬称をつけられるのはくすぐったいよな。
「神子ジュンヤ様。この度は王国の浄化を成していただき、誠にありがとうございます。拝謁がかない、このトッパー、思い残すことはございません」
跪いて平伏するトッパー神官。今までなら俺も跪いて立ち上がらせるところなんだけど、ラドクルトが目でやめてくれ、と合図をしてきた。
——仕方ない。神子や王太子妃として対応を求められているんだ。
「トッパー神官。大きな浄化は終わりましたが、日々民を救う神官の力があってこそです。どうぞお立ちください」
恭しく立ち上がるトッパー神官。
「マテリオが幼い頃に、こちらで教えを受けたと聞きました。……夫が神官になった始まりの場所を見たかったのです」
「おお……なんというありがたいお言葉。小さな教会ではございますが、存分にご覧ください」
トッパー神官の案内で見せてもらった教会は、小さいけれど町のみんなに愛されて大事にされている温かい場所だった。
「マテリオはどんな子供でした?」
「昔から生真面目で、治癒をコントロールする授業を熱心に受けていました。それに、誰よりも強い力があり、レナッソーの神殿に推薦をしたのです」
「なるほど……」
「当時ともに学んだ子供たちは、皆各地で神官となって仕えています。でも、誰もマテリオの司教就任に驚かないでしょう。それほど特出しておりましたから」
そうか。子供の頃から才能を発揮していたんだな。
「ですが、神子様……神子様と一緒のマテリオは以前のマテリオと違って見えます」
「えっ?」
「トッパー神官。それはどういうことですか?」
「お二人から、同じ光を感じます。共有している、とでも申しましょうか……二人で一人、という感じです」
「「——?!」」
俺達は、二人で一つ……
うまく言えないけど、それは感じていたこと。そばにいて、繋がって——欠けてはいけないピースだと。
「お幸せそうで、嬉しゅうございます。神子様、どうかマテリオをよろしくお願いいたします」
トッパー神官が深々と頭を下げる。
「はい。俺達、幸せです。これからも、ずっと支え合っていこうと思っています」
「トッパー神官の教えがあってこそ、今の私がいます。最初の師がトッパー神官であったことを誇りに思います」
きっと、大事にされたんだ。本当にありがとうございます……
「トッパー神官。少しでも体内に瘴気があれば蝕まれます。ですから、私はこれから町の浄化と治癒をしようと思います」
トッパー神官の案内で、併設されている治療院へと行く。人数は少ないけど、やっぱり何人かは瘴気が体内に残っている。一部は、ピパカノやトーラントに行ったりして水や食べ物で摂取してしまったらしかった。
俺は等しく治癒ができるように、スープを配給する。トッパー神官や、その他の神官、町の人もみんなが驚いていた。
うちのチームすっかり慣れたもの。ささっと準備をしてくれる。仕事が終わる夕方に配給を始めて、町はとても活気に満ちていた。
シートを敷いて酒を持ち出し、宴会を始めたり楽しげだ。俺達も外に席を設けてもらい、配給後はそこでゆったりと飲み食いして楽しげな様子を眺めていた。
「マテリオの故郷も、もう安心だな」
「ああ——ありがとう。いつも私はお前に助けられてばかりだな」
「それは俺もだろう? ふふっ……トッパー神官が二人で一人って言ってたよな。お互い様だ。これからも、な」
「そうだな。私達は——永遠に離れない……」
「マテリオ……」
何? チューする? うん、しちゃおうか……
「ゴホンゴホン!!」
棒読みの咳払いでハッとしてそちらを見るとラドクルトだった。そして、賑やかに雑談していたはずの町民の視線が俺達に……
「マテリオ! お前、そんなキャラだったか!?」
「ルイ!?……なぜいるんだ。ピパカノにいると聞いたぞ」
「そりゃあ、親友の凱旋だぜ? 帰って来るっての」
ルイ? そうか、この人が……
「ジュンヤ」
「わっぷ?!」
マテリオが俺を引き寄せ抱きしめ、胸に顔が押しつけられた。
「もったいない……見られた」
「何?」
「ジュンヤの可愛いところを他人に見せてしまった。私だけのものなのに」
「っ!? もう、大丈夫だって」
「だが」
「——あんたしか見てないものは、他にもあるだろ……」
やらしいところとかさ。だからそんなにがっかりしなくて良い。
「……そうだな。ああ。——家に帰らないか?」
「ゴホンゴホン!!」
「「はっ!?」」
「ジュンヤ様……マテリオ殿……もうお帰りになったほうが良さそうですね」
ひぃぃ~! ごめんラド!!
「えっ? そんな! 騎士様、俺達久しぶりに会うんっすよ。少しずつだけ良いですか?」
「ラド、俺も話したいな」
「……ジュンヤ様に失礼のないようにな」
「お邪魔しまーす!」
そう言って、ルイさんは俺達の近くに陣取って座った。
マテリオは相変わらず俺を抱きしめて隠したまま。
「なぁおい……本当にマテリオだよな?」
「マテリオ! 大丈夫だから離せよ。ルイさんの顔も見えないじゃないか」
「……」
渋々といった具合だが開放された。振り向けば、日焼けした爽やか系ゴツいお兄さんがニコニコと俺達を見ていた。
「はじめまして、俺はジュンヤです。マテリオの……妻、です」
妻、だってよ——!! 照れる~!!
「はじめまして! 俺はルイ。マテリオと同い年でね。あ、敬語は苦手で……不敬かな。いやぁ、神子様は噂に違わぬ色っぽいお方ですねぇ~! マテリオは見合いとかで真面目な相手になるかと思ってたよ。良かったな」
「ルイ、不敬だぞ」
「いや、良かったって言ってるだろ?」
睨むマテリオをよしよしとなだめる。
「ふふっ、気にしないです……いや、俺も普通に話そうかな」
「ええ。俺には普通で良いっすよ」
マテリオと対極で、フランクな態度のルイは豪快に笑った。
「マテリオって、どんな子だった?」
「ジュンヤ」
「えー? 知りたいだろう?」
「家が近くて、遊び相手だったんすよ。その頃は普通に遊んでた様な……」
ルイさんは首を傾げた。
「治癒があると分かって、教会に行く回数が増えたらこんなクソ真面目に……だから、恋愛で結婚とか、本当にびっくりっすね。ましてや神子様だ!」
「ああ~、なんか、それは分かるかも。でも、意外に熱いところがあるよ?」
「えっ?! 本当っすか?! へぇ~! 神殿に入ってからはほとんど会ってないけど、そんなところ見たことねぇや。——良かったな、マテリオ。俺、ちょっと心配だったんだ」
「心配?」
「だって……」
ルイは声を潜めた。
『自分で進路を決めたんじゃねぇし。治癒があったら問答無用で教会か神殿入りだ……自由なんかねぇから』
「そうか……」
「私は苦に思ったことはない。治癒があったからこそジュンヤと結ばれたのだ」
「——!! 堂々と惚気やがった!」
「ふんっ」
マテリオが俺を引き寄せて、ルイから引き剥がして抱き込んだ。
「ふふっ、なんだよ。大丈夫だって。話をしてただけだろう?」
「……」
困った奴め。俺は思い切って頬にキスした。
「俺がこういうことをするのは、惚れた相手だけだって知ってるだろう?」
「ジュンヤ……」
ようやく微笑んでくれて安心した。俺もヤキモチを焼かれて、実は嬉しい。
「はぁ~! 安心した! こんな美人な嫁さんで王族になる人とうまくいくのか心配だったけど、惚れあってるなら平気っすね。じゃあ、お邪魔虫は失礼しますよ~」
そう言ってルイは手を振り下がっていった。
俺はというと、ラドクルトに叱られつつマテリオの家に戻りもう一泊をした。本当はあと数日泊まるはずだったが、珍しくマテリオがわがままを言い出したんだ。
「ここではジュンヤを存分に愛せない。離宮で二人だけの時間を過ごしたい」
ですってよ!! もう!!
それぞれと二人だけの時間を取っているから、マテリオにとっては貴重な時間なんだ、と言って強引に帰路についた。そんな俺達を微笑ましそうにイスラさん達が見送ってくれた。
当然ですが、馬車の中でドロドロにされたのは言うまでもない。
俺達の新しい生活は、これから始まる——
ーーーー
気がつけば全四話。マテリオよ、貴様どれだけ文字を使う気なのだっ?!と言いながら書きました(苦笑)楽しんで頂けたら幸いです。
さて、次は誰でしょう……これから書きます!しばらくお待ちくださいね。お楽しみに!
シンプルな部屋だなぁ。マテリオの合理的で質素な性格が現れている。そっとベッドに下ろしてくれた。
「そうだ。何もなくて済まないが、ノーマ殿達がジュンヤの荷物も運び入れてくれた」
「アレもありゅ?」
「……もちろん、ある」
「はやく、エッチしよ?」
「ーーっ!! 待て。遮音をかけてくる」
マテリオが離れて、バッグから遮音の魔道具を取り出して発動させた。
「マテリオぉ~はやくぅ~!」
「分かっている。玉を出すから……」
さらにバッグをゴソゴソして、エッチなお道具一式が出てきた。俺はその合間にもつれる手でボタンを外していく。
「ジュン……ヤ」
「ん、手伝って?」
イチャイチャしたいイチャイチャしたい……
脱ぐ手伝いをしてくれるマテリオを引き寄せた。
「チューする……」
「お前はっ! 私がどれだけ我慢しているか、んんっ!」
ちゅっちゅっ……あ~美味しい。好き。はやくエッチしたい二人だけでイチャイチャしたい……
「ジュンヤ、今日は可愛いな……」
「しきょうじゃないマテリオ、嬉しい。かわいい……しゅき」
「ジュンヤも可愛かった。ずっと我慢をしていた……愛してる……」
深い口づけに変わり、マテリオの唾液をねだって啜る。
「——ちゅながりたい」
「私もだ」
マテリオは乱暴に服を脱ぎ捨てて、香油で玉を埋め込んだ。
「マテリオ……はやくきて、らいじょうぶだからぁ」
「だが」
「やら、はやく~」
ずっとエッチしっぱなしだから、濡らしてくれるだけで良いと思う。はやくきてくれよ~!
「待て、少しだけ解すから」
「んんっ……あぁ……」
ずぶずぶと指が一本入ってくる。だけど、それじゃ足りない。
クチュッ……ジュプ……グチュッ……
「はっ、はぁ……あん……もっとぉ」
「ああ、増やすぞ」
二本、三本……気遣っているのはわかる。
——でも、限界だ
「はやく! はやく、こいよぉ~! きて……」
「っ! まったく、お前は……!」
ガバッと足を担いだマテリオが、俺の中に押し入ってくる。
これがほしかった——!
「っう~! あっ! あっ! んっ、イイ!」
「——っ! はっ、はっ! なんて、淫らな体だ……愛してる……!」
パン! パン! グチュッ、ヌチュッ!
俺の中からやらしい音がする……マテリオに食われてる音……
「ふぁっ、あんっ! そこっ!」
「ここ、か?」
「あんっ、そこぉ~!」
マテリオが俺のイイところをガンガン突き上げて、あっという間に絶頂に向かってしまう。
「んっ、一緒が、いい! いっしょ、イく!」
「奥まで、入って、良いかっ?」
「いいっ! あ~~っ」
全部を受け入れて、そのままマテリオがガツガツと俺を貪る。
「あっ、ひぅっ! いぃ! イッちゃ、あっ! ~~っ!」
「くぅっ! 私、もっ……!」
奥の深いところにマテリオの愛が注がれて、うっとりと受け入れる。
「マテリオ ……あかちゃん、ほちいね……」
「ああ……私たちの未来を……産んでくれ」
未来を産む……素敵な言葉だな。
「うん……あいちてる」
そこから多分、二回戦くらいエッチして、満足した俺たちは抱き合って眠った。
◇
次の日の朝。町の浄化をするために準備をしていたのだが……お義父さん、お義母さんが赤い顔で俺達を見ていた。
えっと、遮音はしてるから聞かれてない。けど、多分香りとか痕を隠すためのお化粧とか……めちゃくちゃエッチしたってバレバレです。
そして、護衛のラドクルトは俺を厳しい目で見ていた。
「……ジュンヤ様、マテリオ殿。私があれほどお願いしたのに、すっかりお忘れのようですね」
「ごっ、ごめん……」
「……すまない」
ラドクルトに、町を出歩く前日はエッチしないでくださいね! って頼まれてたんだよな~。
「ジュンヤ様。案の定エッチな香りを振りまいてるし、表情も全部エッチだし! 護衛の俺達が大変じゃないっすか~!!」
ウォーベルトはもう少し婉曲な表現を覚えようか?
「ううっ……いやぁ、昨夜はちょっと酔っ払ってさぁ~」
酔っ払ったらエッチしたくなったんだもん!! マテリオが可愛かったんだもん!!
良い大人が『だもん』なんて言っても可愛くないから言わないけどさぁ~。
「ラドクルト殿、ご迷惑をおかけしてすまない。ジュンヤがあまりにも魅力的で我慢できなかった私の責任です」
「ゴホッ! ゲホッ!」
「——マテリオ殿は、相変わらずっすね……その天然の惚気、破壊力ありすぎっす」
「そんなつもりではないのだが」
むせたラドクルト、あきれ返るウォーベルト。
「ゴホンッ! ともかく、ジュンヤ様。今日は民と少し距離を取ってください。今日のジュンヤ様はとにかく危険です! 虫が寄ってきたら私達が団長にお仕置きされますから!」
「分かったよ」
はい、ラドクルトに心労をかけないように気をつけます!!
と、いうわけで俺達は町の教会に出かけた。小さな町なので、治療院が併設してあるそうなんだ。
「マテリオ! いや、マテリオ司教、ご立派になられたな」
「トッパー神官、これまで通りマテリオとお呼びください」
マテリオにしたら、この年配の神官は幼い頃からお世話になった人。その人に敬称をつけられるのはくすぐったいよな。
「神子ジュンヤ様。この度は王国の浄化を成していただき、誠にありがとうございます。拝謁がかない、このトッパー、思い残すことはございません」
跪いて平伏するトッパー神官。今までなら俺も跪いて立ち上がらせるところなんだけど、ラドクルトが目でやめてくれ、と合図をしてきた。
——仕方ない。神子や王太子妃として対応を求められているんだ。
「トッパー神官。大きな浄化は終わりましたが、日々民を救う神官の力があってこそです。どうぞお立ちください」
恭しく立ち上がるトッパー神官。
「マテリオが幼い頃に、こちらで教えを受けたと聞きました。……夫が神官になった始まりの場所を見たかったのです」
「おお……なんというありがたいお言葉。小さな教会ではございますが、存分にご覧ください」
トッパー神官の案内で見せてもらった教会は、小さいけれど町のみんなに愛されて大事にされている温かい場所だった。
「マテリオはどんな子供でした?」
「昔から生真面目で、治癒をコントロールする授業を熱心に受けていました。それに、誰よりも強い力があり、レナッソーの神殿に推薦をしたのです」
「なるほど……」
「当時ともに学んだ子供たちは、皆各地で神官となって仕えています。でも、誰もマテリオの司教就任に驚かないでしょう。それほど特出しておりましたから」
そうか。子供の頃から才能を発揮していたんだな。
「ですが、神子様……神子様と一緒のマテリオは以前のマテリオと違って見えます」
「えっ?」
「トッパー神官。それはどういうことですか?」
「お二人から、同じ光を感じます。共有している、とでも申しましょうか……二人で一人、という感じです」
「「——?!」」
俺達は、二人で一つ……
うまく言えないけど、それは感じていたこと。そばにいて、繋がって——欠けてはいけないピースだと。
「お幸せそうで、嬉しゅうございます。神子様、どうかマテリオをよろしくお願いいたします」
トッパー神官が深々と頭を下げる。
「はい。俺達、幸せです。これからも、ずっと支え合っていこうと思っています」
「トッパー神官の教えがあってこそ、今の私がいます。最初の師がトッパー神官であったことを誇りに思います」
きっと、大事にされたんだ。本当にありがとうございます……
「トッパー神官。少しでも体内に瘴気があれば蝕まれます。ですから、私はこれから町の浄化と治癒をしようと思います」
トッパー神官の案内で、併設されている治療院へと行く。人数は少ないけど、やっぱり何人かは瘴気が体内に残っている。一部は、ピパカノやトーラントに行ったりして水や食べ物で摂取してしまったらしかった。
俺は等しく治癒ができるように、スープを配給する。トッパー神官や、その他の神官、町の人もみんなが驚いていた。
うちのチームすっかり慣れたもの。ささっと準備をしてくれる。仕事が終わる夕方に配給を始めて、町はとても活気に満ちていた。
シートを敷いて酒を持ち出し、宴会を始めたり楽しげだ。俺達も外に席を設けてもらい、配給後はそこでゆったりと飲み食いして楽しげな様子を眺めていた。
「マテリオの故郷も、もう安心だな」
「ああ——ありがとう。いつも私はお前に助けられてばかりだな」
「それは俺もだろう? ふふっ……トッパー神官が二人で一人って言ってたよな。お互い様だ。これからも、な」
「そうだな。私達は——永遠に離れない……」
「マテリオ……」
何? チューする? うん、しちゃおうか……
「ゴホンゴホン!!」
棒読みの咳払いでハッとしてそちらを見るとラドクルトだった。そして、賑やかに雑談していたはずの町民の視線が俺達に……
「マテリオ! お前、そんなキャラだったか!?」
「ルイ!?……なぜいるんだ。ピパカノにいると聞いたぞ」
「そりゃあ、親友の凱旋だぜ? 帰って来るっての」
ルイ? そうか、この人が……
「ジュンヤ」
「わっぷ?!」
マテリオが俺を引き寄せ抱きしめ、胸に顔が押しつけられた。
「もったいない……見られた」
「何?」
「ジュンヤの可愛いところを他人に見せてしまった。私だけのものなのに」
「っ!? もう、大丈夫だって」
「だが」
「——あんたしか見てないものは、他にもあるだろ……」
やらしいところとかさ。だからそんなにがっかりしなくて良い。
「……そうだな。ああ。——家に帰らないか?」
「ゴホンゴホン!!」
「「はっ!?」」
「ジュンヤ様……マテリオ殿……もうお帰りになったほうが良さそうですね」
ひぃぃ~! ごめんラド!!
「えっ? そんな! 騎士様、俺達久しぶりに会うんっすよ。少しずつだけ良いですか?」
「ラド、俺も話したいな」
「……ジュンヤ様に失礼のないようにな」
「お邪魔しまーす!」
そう言って、ルイさんは俺達の近くに陣取って座った。
マテリオは相変わらず俺を抱きしめて隠したまま。
「なぁおい……本当にマテリオだよな?」
「マテリオ! 大丈夫だから離せよ。ルイさんの顔も見えないじゃないか」
「……」
渋々といった具合だが開放された。振り向けば、日焼けした爽やか系ゴツいお兄さんがニコニコと俺達を見ていた。
「はじめまして、俺はジュンヤです。マテリオの……妻、です」
妻、だってよ——!! 照れる~!!
「はじめまして! 俺はルイ。マテリオと同い年でね。あ、敬語は苦手で……不敬かな。いやぁ、神子様は噂に違わぬ色っぽいお方ですねぇ~! マテリオは見合いとかで真面目な相手になるかと思ってたよ。良かったな」
「ルイ、不敬だぞ」
「いや、良かったって言ってるだろ?」
睨むマテリオをよしよしとなだめる。
「ふふっ、気にしないです……いや、俺も普通に話そうかな」
「ええ。俺には普通で良いっすよ」
マテリオと対極で、フランクな態度のルイは豪快に笑った。
「マテリオって、どんな子だった?」
「ジュンヤ」
「えー? 知りたいだろう?」
「家が近くて、遊び相手だったんすよ。その頃は普通に遊んでた様な……」
ルイさんは首を傾げた。
「治癒があると分かって、教会に行く回数が増えたらこんなクソ真面目に……だから、恋愛で結婚とか、本当にびっくりっすね。ましてや神子様だ!」
「ああ~、なんか、それは分かるかも。でも、意外に熱いところがあるよ?」
「えっ?! 本当っすか?! へぇ~! 神殿に入ってからはほとんど会ってないけど、そんなところ見たことねぇや。——良かったな、マテリオ。俺、ちょっと心配だったんだ」
「心配?」
「だって……」
ルイは声を潜めた。
『自分で進路を決めたんじゃねぇし。治癒があったら問答無用で教会か神殿入りだ……自由なんかねぇから』
「そうか……」
「私は苦に思ったことはない。治癒があったからこそジュンヤと結ばれたのだ」
「——!! 堂々と惚気やがった!」
「ふんっ」
マテリオが俺を引き寄せて、ルイから引き剥がして抱き込んだ。
「ふふっ、なんだよ。大丈夫だって。話をしてただけだろう?」
「……」
困った奴め。俺は思い切って頬にキスした。
「俺がこういうことをするのは、惚れた相手だけだって知ってるだろう?」
「ジュンヤ……」
ようやく微笑んでくれて安心した。俺もヤキモチを焼かれて、実は嬉しい。
「はぁ~! 安心した! こんな美人な嫁さんで王族になる人とうまくいくのか心配だったけど、惚れあってるなら平気っすね。じゃあ、お邪魔虫は失礼しますよ~」
そう言ってルイは手を振り下がっていった。
俺はというと、ラドクルトに叱られつつマテリオの家に戻りもう一泊をした。本当はあと数日泊まるはずだったが、珍しくマテリオがわがままを言い出したんだ。
「ここではジュンヤを存分に愛せない。離宮で二人だけの時間を過ごしたい」
ですってよ!! もう!!
それぞれと二人だけの時間を取っているから、マテリオにとっては貴重な時間なんだ、と言って強引に帰路についた。そんな俺達を微笑ましそうにイスラさん達が見送ってくれた。
当然ですが、馬車の中でドロドロにされたのは言うまでもない。
俺達の新しい生活は、これから始まる——
ーーーー
気がつけば全四話。マテリオよ、貴様どれだけ文字を使う気なのだっ?!と言いながら書きました(苦笑)楽しんで頂けたら幸いです。
さて、次は誰でしょう……これから書きます!しばらくお待ちくださいね。お楽しみに!
140
お気に入りに追加
12,842
あなたにおすすめの小説
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。