リセット

爺誤

文字の大きさ
上 下
29 / 44
幕間2

引っ越し作業(前)

しおりを挟む
 
 家を買った。健吾が一生懸命節約して、子供達の想定学費をクリアした。
 その話をしたら、親が良い土地が出ていたからと言って土地分を援助してくれた。宮園の実家から徒歩十五分ぐらいの位置にある、駅からも近い住宅街だ。
 健吾は初めは遠慮していたが、両親のゴリ押しに負けた。

「健吾君が一生懸命頑張ってくれてるのは知ってるよ。でも、たまには頼って欲しいんだ。祐志は一人っ子だし、私達も老い先短い。相続税でがっぽり取られるぐらいなら、優遇税制のあるところで使っておきたいんだよ」

 多分子供の学費枠も狙ってると思う。今回のを健吾が受け入れたら、大学の学費は親が出すだろう。
 相続税で取られるという言葉が決め手となった。そのへんの対策をしていないはずはないけれど、健吾の心を動かした手腕は我が親ながら尊敬している。

 決まってしまえば計画するのは楽しく、ハウスメーカーの選定や設計をメーカーの建築家にするか、外注にするかも二人で沢山話し合った。
 家にいる時間が長いのは健吾なので、基本的には健吾主導で話をすすめた。

 子供達もいずれ出て行くとはいえ、今は家にいる。夜も遅くなってきているし、二人の夜を存分に楽しむには部屋の防音と風呂問題がある。防音は子供部屋との間にクローゼットを挟んだり壁を厚くしたりしてクリアした。風呂問題は、ウォークインクローゼットの奥に秘密のシャワールームをつけてクリアした。
 この話をしている間の健吾がすごく恥ずかしそうにしていて可愛かった。

 そして今、引っ越し荷物を荷造りしている。
 俺のクローゼットから宝箱が出てきた。チープな宝箱だ。宝箱は問題ない。
 中身が問題だった。
 中身はいわゆる大人のオモチャだった。
 この宝箱を誰が入れたのか。

 健吾?
 子供?
 どちらにしても問題だ。

 だが、どちらでもない場合、どうしたら良い?
 俺がこれを用意したと健吾に思われてしまう。

 引っ越しは三日後。
 荷物に入れて問題を新居に持ち越すか。
 今、議題に出して揉めるか。
 揉める、よな。
 健吾じゃないよな?
 健吾は無駄遣いを嫌う。
 わざわざこんなものを悪戯のためだけに買わないだろう。

 子供達は難しい年頃だ。
 情報社会で知識だけはあるかもしれないが、親が見せるような代物じゃない。
 子供達の仕業でなければ、父親の威厳が失墜する。
 俺は駄目な男だが、子供達にはそれなりに一目置かれているはずだ。

 どうしよう。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

あなたの隣で初めての恋を知る

ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

【完結】『ルカ』

瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。 倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。 クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。 そんなある日、クロを知る青年が現れ……? 貴族の青年×記憶喪失の青年です。 ※自サイトでも掲載しています。 2021年6月28日 本編完結

噛痕に思う

阿沙🌷
BL
αのイオに執着されているβのキバは最近、思うことがある。じゃれ合っているとイオが噛み付いてくるのだ。痛む傷跡にどことなく関係もギクシャクしてくる。そんななか、彼の悪癖の理由を知って――。 ✿オメガバースもの掌編二本作。 (『ride』は2021年3月28日に追加します)

運命だなんて言うのなら

riiko
BL
気が付いたら男に組み敷かれていた。 「番、運命、オメガ」意味のわからない単語を話す男を前に、自分がいったいどこの誰なのか何一つ思い出せなかった。 ここは、男女の他に三つの性が存在する世界。 常識がまったく違う世界観に戸惑うも、愛情を与えてくれる男と一緒に過ごし愛をはぐくむ。この環境を素直に受け入れてきた時、過去におこした過ちを思い出し……。 ☆記憶喪失オメガバース☆ 主人公はオメガバースの世界を知らない(記憶がない)ので、物語の中で説明も入ります。オメガバース初心者の方でもご安心くださいませ。 運命をみつけたアルファ×記憶をなくしたオメガ 性描写が入るシーンは ※マークをタイトルにつけますのでご注意くださいませ。 物語、お楽しみいただけたら幸いです。

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

林檎を並べても、

ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。 二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。 ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。 彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。

皇帝にプロポーズされても断り続ける最強オメガ

手塚エマ
BL
テオクウィントス帝国では、 アルファ・べータ・オメガ全階層の女性のみが感染する奇病が蔓延。 特効薬も見つからないまま、 国中の女性が死滅する異常事態に陥った。 未婚の皇帝アルベルトも、皇太子となる世継ぎがいない。 にも関わらず、 子供が産めないオメガの少年に恋をした。

処理中です...