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彰、三神の目的を知る。
3 彰、ロキに反抗する。
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誰かの喘ぎ声が聞こえて、彰は目を覚ました。視界が開けた時、オーディンに背後から貫かれ恍惚の表情を浮かべたライアンと目が合う。
「ーーっ!?」
それを見て、彰は声にならない悲鳴を上げた。
目の前には胸と臍、下半身にイソギンチャクを装着したライアンがオーディンに背後から貫かれ、抽出の度に送られてくる刺激にわなないている。
「あっ、ああぁんっ!お、奥っ!く、ふぅ!」
ライアンのわななく嬌声にオーディンは彼の腰を両手で固定したまま、前後に動く腰のスピードを徐々に速めていく。ライアンは腰を穿たれる度、嬌声を上げるがオーディンの動きに合わせて短い嬌声と変わっていく。
「あ、あ、あ!あ、あっ、あ!くっ、来る・・・!」
「くっ、ふっ!」
ガッ!とオーディンはライアンの腰を強く穿った。するとライアンは背を仰け反らせ、歓喜の悲鳴を上げたまま絶頂に達した。
「ふぅ・・・あ」
絶頂に達したライアンは、唖然とする彰と目が合うと、疲労の表情を浮かべながらも優しく微笑んだ。
「起きた?君寝過ぎだよ」
汗ばんだ髪を軽くかき上げたライアンは、目の前で情事を見せつけられて唖然とする彰に近づくとチュッと軽く額にキスをする。
「えっと・・・」
彰は戸惑いながら、目の前のライアンとオーディンを見た。
ライアンの身体に貼り付いているイソギンチャクも手伝ってか、肩まで揃えられていたくすんだ金色の髪は情交で乱れ汗をかいた色白の肌に情欲を掻き立てられる感覚を彰は覚えた。その彼の後孔を貫くオーディンも、褐色の肌に乱れた黒髪を未造作にかき上げ二人からエロティックな雰囲気を醸し出している。
「寝過ぎだよ。どうしたのかと思ったよ」
乱れた姿のライアンは、首をゆっくり上下に動かして彰の姿を見つめて言った。
「君、かなりエロい・・・。そのイソギンチャク、すごく似合ってる・・・」
熱情を含んだライアンの声音に、彰は自分の姿を見て戸惑った。
先程まで着ていた寝具は脱がされ、両乳首、臍、下半身がイソギンチャクに密着している箇所があられもなく晒されている。身体はベッドで寝ていた筈なのに、いつの間にか四つん這いの体制を取らされている。
特に下半身に貼り付いたイソギンチャクはグチュングチュンと小さく蠢いていて、直接腰にゾクゾクと刺激が送られているのが分かる。
「うっ、んっ・・・」
イソギンチャクから送られて来る刺激に、彰は我慢できず四つん這いになった状態から崩れ落ちる。しかし直前で、がっしりと背後にいた誰かが彰の腰を抱えながら、彼の耳元で囁いた。
「ショウ、オーディン兄さんとライアン義理兄さんに欲情した?僕は君の腰をずっと抱えていたのに、気づいてくれなくて寂しいな?」
「ーーっ!?」
驚いて振り返った彰は、微笑むロキと目が合った。
その目に、彰は言い知れない恐怖を感じて背筋がゾクリとする。
「ロキ・・・」
「そんなに怖い物を見たような顔しないでよ。さすがにショックだなぁ」
身体を捻ってロキから離れようとするが、気づいたロキがすぐに彰の腰を両手で固定する。
「ショウどうしたの?さっきまで寝てたのに僕を見て突然逃げようなんて」
「離してくれっ!俺はっ」
ロキの手を振り払おうと彰は背後に手を回すが、彼に身体を抑えつけられながらベッドに覆い被さられた。
「ダメだよショウ。せっかく僕と夫婦になるんだから。僕から逃げようなんて、そんな事考えられないようにしてあげる」
「まっ、待って!いや、んっ、んぅ」
オーディンの雄を後孔に突き刺したまま、ライアンは彰の言葉を塞ぐようにキスをする。彼が離れると、透明な糸が二人の口の間を線が通り、消えていった。
「何嫌がってんのさ。素直に受け入れなよ?君は、ロキに選ばれたんだ。僕たちにとってはとても栄誉なんだよ?」
「ーーっ!?」
目の前のライアンの表情は、淫蕩に耽っており、彰はその表情を見て引き攣った。
自分も、いずれライアンのように蕩けた顔にされる。
快楽に呑まれれば、もう抗う思考も、反抗する思考もできなくなる。
「いっ、嫌っ・・・んっ、んっ、う」
ライアンから逃れようと彰は首を動かすが、両手で頭を押さえられる。
無理矢理キスをするライアンは、彰の口腔内に自らの舌を侵入させ、自らの唾液を彰の舌と絡めて唾液を混ぜ合わせていく。
チュル、チュル、チュウ
「んっ、んぅ、っ、ふぅ、んっ」
ライアンのキスも巧みだ。
ねっとりとしてざらざらした舌が彰の身体から力を奪っていくように、口腔内の粘膜を舐めていく。ライアンの舌が動く度に彰は口腔内に快感を感じて仕方なかった。彰に張り付くイソギンチャクも、ライアンのキスとタイミングを合わせるように彰の乳首と臍、後孔に刺激を加えていく。
ズチュ、ズチュ、チュウ、ズチュ・・・!
「んっ、んぅ、んっ」
身体がライアンのキスとイソギンチャクの刺激によって徐々に火照っていく。刺激に、彰は意識が快楽に持って行かれるのを感じた。彰の頬が火照っていく姿を見て、ロキは彰の耳元で囁いた。
「アルカシスが愛しているのは、ユダ」
「ーーっ!?」
腰を支えるロキが、彰の耳元で優しく囁く。耳元で囁いた言葉に、彰は先程ロキから聞いた話を思い出した。
『ユダは死んでしまったけど、アルカシスは今もユダを想い続けているんだ。だから、君と『命の契約』を結ぶつもりはなかった』
ロキの言葉を思い出した彰は、身体をガタガタと震わせる。彼のその反応を見て、ロキはさらに言葉を続けた。
「思い出した?ショウはあの後、ショックで寝込んでいたんだ。アルカシスと結ばれる事はないけど、僕も神の籍に名を連ねている。僕と夫婦になれば、君は神の伴侶となり、人間の寿命ではなく、一生生かされ僕に愛され続ける」
「んっ、うっ」
イソギンチャクの刺激が腰だけでなく、全身に流れ込んでくるようだ。
震える彰には、耳元で囁くロキの言葉がアルカシス以外にも自分を愛してくれている人がいるという、誘惑の言葉のように脳内に聴こえていた。
アルカシスと結ばれる事はなかった。
代わりに、ロキが自分を愛していると言ってくれている。このままロキに委ねてもいいかもしれない。
「んぅ、んっ・・・だ、ダメ」
彰は誘惑を祓うように頭を横に振る。
アルカシスの真意を聞くまでは、ロキの誘惑に堕ちてはいけないんだ。
誘惑を祓う彰を見て、やれやれとロキは嘆息する。オーディンは感心したようにほぉ、と言った。
「儚い印象のわりに頑固な子だな。なぜアルカシスにこだわる?既にロキから真実は教えてもらっただろ?」
オーディンに問われ、彰は彼から視線を逸らすように被りを振った。
「それ、じゃあ・・・何で・・・あの夜、アルカシス様は、俺を」
ーー淫魔界に連れて来たんだ。
ーーどうしてペットにしたんだ。
この二人に聞いたところで、答えが出るわけがないのは、彰も分かっていた。でも自分と契約を結ばないというなら、アルカシスはどうして自分を連れて来たんだ。
彼から真意を聞くまで、ロキに堕ちてはいけない。
彰は、ロキに反抗の態度を示すようにキッと彼を睨んだ。
それを見たロキは、腰を支えていた手を離すと、彰の頭上でパチパチと拍手をした。呆気に取られた彰はロキを見ると、彼はとても嬉しそうな表情をしている。
「すごい・・・!すごいじゃないかショウ!遂に僕に反抗したね!すごい!ねぇオーディン兄さん今の見た!?ショウが僕に反抗したんだよ!嬉しい・・・!人間の成長ってこんなに感動するんだ!」
突然一人で興奮してうっとりしているロキに、彰だけでなくオーディンもライアンも呆気に取られている。先程までキスをしていたライアンの口端から唾液がそのまま垂れている。
「逆になんでそんなに感動するんだ?お前」
話を振られたオーディンは引き気味ながらもロキに問う。彼は満面の笑みでオーディンに言った。
「だってショウが、だよ!兄さん考えてみてよ!今まで従順だった子が、突然反抗的な態度を取ったんだよ!もう僕感動だよ!」
「あ・・・そう」
興奮するロキにオーディンは興味ないとばかりに生返事をする。むしろ、ロキの思考を心配したくなった。
「もう僕に反抗的な態度を取るショウも可愛い!トール兄さんに必ず仲人を取ってもらって、僕と夫婦になるんだ」
それ以上の事をオーディンは言わなかった。正直、勝手にやってくれと言うのが興奮するロキを見て彼が思った事だ。
「ショウ!今からトール兄さんのところに行こう!僕たちの婚儀は時間がかかるけど、先にトール兄さんに妊娠できる身体になったか診てもらわないと」
ロキはそのままイソギンチャクを身体に貼り付けたままの彰を抱き上げると部屋を出ようとする。
「え!?待って!」
驚いた彰はロキから離れようともがくが彼は彰を解放しようとしない。
「待て、ロキ」
呼び止めたオーディンは、ロキに向かって服を投げた。呼ばれて止まったロキは、服を見てしまったと言わんばかりにあ!と声をあげた。
「しまった!僕としたことが、興奮してショウに服を着させるのを忘れていた!」
「トール兄さんのところに行くならまずは服を着せてやれ。いくら結界内でも裸では凍死する」
「ごめんごめん。ありがとうオーディン兄さん」
ライアンに服を着せながらオーディンはロキに言った。
オーディンに着せられるライアンは、服を見てぶぅと頬を膨らませる。
「これ僕に似合わない!ちょっとオーディン!トール様のところに行くのに何でこんなダサいやつ持って来たのさ!趣味悪いんだから!全く!」
「なんだよ・・・こないだはこれがいいって言ったじゃないか」
不満げに文句を言うライアンにオーディンは呆れてため息をついた。
ライアンが着せられたのは中世期の中国で実際着用された漢服という服で、足まで裾が伸びている。水色の羽織りには美しい鳳凰があしらわれ下は群青色の袴だ。ライアンの色素が薄い金色の髪には目立つ色だが主張しない色合いは儚げで美しく見える。
「だって僕はイギリス人だよ!東洋の服は似合わないの分かってるじゃん!オーディンてば酷い!」
文句を言うライアンの隣で、彰もロキに服を着せられていた。黒髪の長髪となった彰は、白を基調とした上品な漢服姿だ。白い羽織りは龍があしらわれ、下の袴には青色の腰紐が結ばれている。
「凄ーい!似合うよショウ!!黒髪と白い肌によく似合う!美しい!可愛い!まさに僕だけの姫!」
「い、いやっ、や、止めろよ・・・!」
漢服を着せられてぎこちない彰に、ロキを歓喜の悲鳴をあげて喜びを表現した。着替えた彰の周囲を回りだらしないところはないか、入念にチェックするロキに恥ずかしさを感じ遠慮がちに後ずさる。
「こら逃げない。本当に美しいしよく似合ってるんだからきちんと整えないと」
「嫌だって・・・!恥ずかしいからっ」
遠慮がちにロキから離れようとする彰を見て、ライアンは未だ不満げにオーディンに言った。
「ねぇ、オーディン。なんであの子あんなに似合ってるのさ」
「い、いやそんな事はない。ライアンも充分美しいじゃないか!」
ライアンの表情を見て不満がさらに高まった事を察したオーディンは、宥めるように言った。しかしライアンはオーディンのそれは通じず、バシッ!とオーディンの頬にビンタを叩き込んだ。
「もう、僕にお世辞を言うなんて酷い!オーディンのバカっ!」
* * *
4人は、張り付いたイソギンチャクを解除してもらうため、ロキと彰、オーディンとライアンは長兄トールのいる部屋へ向かっていた。ライアンに一発叩き込まれたビンタを受けた頬を撫でながら、オーディンは重いため息を吐いた。その姿を見て、ロキは憐れみを込めて彼の肩を叩いた。
「大丈夫?オーディン兄さん」
「もう100年の付き合いだ。これくらいは慣れた。だが似合うと思うんだけどな、俺は」
俺の趣味が本当に悪いのかと、オーディンはぶつぶつと独り言を言い出した。
「次はヴィクトリア型ドレスを用意した方がいいのか?いやライアンなら、エンパイア型か?」
「え、兄さん?」
「ロキ、お前ならどちらがいい?」
話しながら先に歩くライアンと彰の後ろ姿を見て、オーディンは真顔でロキに尋ねた。
オーディンの言うヴィクトリア型ドレスはウェディングドレスの王道スタイルだ。纏う姿から上品な美しさを窺わせる。対してエンパイア型ドレスは軽やかでシンプルだが、袖のないスタイルが多くこちらは妖艶な美しさを窺わせる。ライアンが袖のないスタイルのエンパイア型ドレスを纏う姿を想像したオーディンは悶々としてうーむと悩む。
「ライアンならエンパイア型か?袖のないスタイルはなかなかそそるが・・・」
「さっき僕に呆れたくせに、兄さんもかなり変態だよね」
「これでも100年夫婦をやっているからな。妄想するのはいつも一緒さ」
「うわぁ、スケベじゃん。どっちもどっちだね」
「何、お前も毎日そうなるさ。『魅惑の人』に拘らなければ、だがな」
後ろの二人がコソコソ話をしている姿をちらっと振り返って見たライアンは、彰を連れて先に進んでいた。
「あれほっといていいよ。いつもエロい事しかしないんだから」
二人から視線を逸らして進むライアンは、彰に言った。
「ショウも早くロキと結婚しちゃえばいいのに。ここは寒いけど、快適に暮らしていけるし、これから会うトール様もロキ様も、ついでにオーディンも優しいよ。子どもを産んでしまえば、余計な事なんて考えなくていいからさ」
「に、妊娠?」
ライアンの唐突な話に、彰はドキッとする。
「そうだよ。僕たちは彼等の子孫の神を出産するために選ばれたんだ。僕はもう二人産んだけど、二人とも元気に成長してるよ。ミシェル様はもう三十人くらいかな?もう大人になった子もいるしね」
ニコニコと語るライアンに彰はどこか恐ろしさを感じた。彼は、ロキとの子を産めばアルカシスの事を考える必要はないという。
このままここにいれば、いずれは自分もロキと夫婦になり、子どもを孕まされるだろう。でもこれは、自分が望んだ事じゃない。
アルカシスは、どうしているのか。
今頃城はどうなっているのか。
アレクセイと別れてしまったが彼は無事なのだろうか。
アルカシスは・・・自分を迎えに来てくれるだろうか。
4人は目の前に巨人な両開きの扉があるところで歩を止めた。背後を歩いていたロキとオーディンは扉へ向かう。ロキは彰に言った。
「ショウ、ここにトール兄さんが待ってくれているよ。今後も兄さんに会う機会があるから、次からは僕と一緒に行こうね」
二人の背後にいたロキとオーディンが扉を一押しする。ゆっくりと聞いていく扉から見えたのは、広いソファに寛ぐように座っている銀色の長い髪の男性だ。
しかも、彼はある人物とよく似ている。
彰はその男性を見て目を見開いたまま固まった。
まさか・・・。
「アルカシス、様?」
「ーーっ!?」
それを見て、彰は声にならない悲鳴を上げた。
目の前には胸と臍、下半身にイソギンチャクを装着したライアンがオーディンに背後から貫かれ、抽出の度に送られてくる刺激にわなないている。
「あっ、ああぁんっ!お、奥っ!く、ふぅ!」
ライアンのわななく嬌声にオーディンは彼の腰を両手で固定したまま、前後に動く腰のスピードを徐々に速めていく。ライアンは腰を穿たれる度、嬌声を上げるがオーディンの動きに合わせて短い嬌声と変わっていく。
「あ、あ、あ!あ、あっ、あ!くっ、来る・・・!」
「くっ、ふっ!」
ガッ!とオーディンはライアンの腰を強く穿った。するとライアンは背を仰け反らせ、歓喜の悲鳴を上げたまま絶頂に達した。
「ふぅ・・・あ」
絶頂に達したライアンは、唖然とする彰と目が合うと、疲労の表情を浮かべながらも優しく微笑んだ。
「起きた?君寝過ぎだよ」
汗ばんだ髪を軽くかき上げたライアンは、目の前で情事を見せつけられて唖然とする彰に近づくとチュッと軽く額にキスをする。
「えっと・・・」
彰は戸惑いながら、目の前のライアンとオーディンを見た。
ライアンの身体に貼り付いているイソギンチャクも手伝ってか、肩まで揃えられていたくすんだ金色の髪は情交で乱れ汗をかいた色白の肌に情欲を掻き立てられる感覚を彰は覚えた。その彼の後孔を貫くオーディンも、褐色の肌に乱れた黒髪を未造作にかき上げ二人からエロティックな雰囲気を醸し出している。
「寝過ぎだよ。どうしたのかと思ったよ」
乱れた姿のライアンは、首をゆっくり上下に動かして彰の姿を見つめて言った。
「君、かなりエロい・・・。そのイソギンチャク、すごく似合ってる・・・」
熱情を含んだライアンの声音に、彰は自分の姿を見て戸惑った。
先程まで着ていた寝具は脱がされ、両乳首、臍、下半身がイソギンチャクに密着している箇所があられもなく晒されている。身体はベッドで寝ていた筈なのに、いつの間にか四つん這いの体制を取らされている。
特に下半身に貼り付いたイソギンチャクはグチュングチュンと小さく蠢いていて、直接腰にゾクゾクと刺激が送られているのが分かる。
「うっ、んっ・・・」
イソギンチャクから送られて来る刺激に、彰は我慢できず四つん這いになった状態から崩れ落ちる。しかし直前で、がっしりと背後にいた誰かが彰の腰を抱えながら、彼の耳元で囁いた。
「ショウ、オーディン兄さんとライアン義理兄さんに欲情した?僕は君の腰をずっと抱えていたのに、気づいてくれなくて寂しいな?」
「ーーっ!?」
驚いて振り返った彰は、微笑むロキと目が合った。
その目に、彰は言い知れない恐怖を感じて背筋がゾクリとする。
「ロキ・・・」
「そんなに怖い物を見たような顔しないでよ。さすがにショックだなぁ」
身体を捻ってロキから離れようとするが、気づいたロキがすぐに彰の腰を両手で固定する。
「ショウどうしたの?さっきまで寝てたのに僕を見て突然逃げようなんて」
「離してくれっ!俺はっ」
ロキの手を振り払おうと彰は背後に手を回すが、彼に身体を抑えつけられながらベッドに覆い被さられた。
「ダメだよショウ。せっかく僕と夫婦になるんだから。僕から逃げようなんて、そんな事考えられないようにしてあげる」
「まっ、待って!いや、んっ、んぅ」
オーディンの雄を後孔に突き刺したまま、ライアンは彰の言葉を塞ぐようにキスをする。彼が離れると、透明な糸が二人の口の間を線が通り、消えていった。
「何嫌がってんのさ。素直に受け入れなよ?君は、ロキに選ばれたんだ。僕たちにとってはとても栄誉なんだよ?」
「ーーっ!?」
目の前のライアンの表情は、淫蕩に耽っており、彰はその表情を見て引き攣った。
自分も、いずれライアンのように蕩けた顔にされる。
快楽に呑まれれば、もう抗う思考も、反抗する思考もできなくなる。
「いっ、嫌っ・・・んっ、んっ、う」
ライアンから逃れようと彰は首を動かすが、両手で頭を押さえられる。
無理矢理キスをするライアンは、彰の口腔内に自らの舌を侵入させ、自らの唾液を彰の舌と絡めて唾液を混ぜ合わせていく。
チュル、チュル、チュウ
「んっ、んぅ、っ、ふぅ、んっ」
ライアンのキスも巧みだ。
ねっとりとしてざらざらした舌が彰の身体から力を奪っていくように、口腔内の粘膜を舐めていく。ライアンの舌が動く度に彰は口腔内に快感を感じて仕方なかった。彰に張り付くイソギンチャクも、ライアンのキスとタイミングを合わせるように彰の乳首と臍、後孔に刺激を加えていく。
ズチュ、ズチュ、チュウ、ズチュ・・・!
「んっ、んぅ、んっ」
身体がライアンのキスとイソギンチャクの刺激によって徐々に火照っていく。刺激に、彰は意識が快楽に持って行かれるのを感じた。彰の頬が火照っていく姿を見て、ロキは彰の耳元で囁いた。
「アルカシスが愛しているのは、ユダ」
「ーーっ!?」
腰を支えるロキが、彰の耳元で優しく囁く。耳元で囁いた言葉に、彰は先程ロキから聞いた話を思い出した。
『ユダは死んでしまったけど、アルカシスは今もユダを想い続けているんだ。だから、君と『命の契約』を結ぶつもりはなかった』
ロキの言葉を思い出した彰は、身体をガタガタと震わせる。彼のその反応を見て、ロキはさらに言葉を続けた。
「思い出した?ショウはあの後、ショックで寝込んでいたんだ。アルカシスと結ばれる事はないけど、僕も神の籍に名を連ねている。僕と夫婦になれば、君は神の伴侶となり、人間の寿命ではなく、一生生かされ僕に愛され続ける」
「んっ、うっ」
イソギンチャクの刺激が腰だけでなく、全身に流れ込んでくるようだ。
震える彰には、耳元で囁くロキの言葉がアルカシス以外にも自分を愛してくれている人がいるという、誘惑の言葉のように脳内に聴こえていた。
アルカシスと結ばれる事はなかった。
代わりに、ロキが自分を愛していると言ってくれている。このままロキに委ねてもいいかもしれない。
「んぅ、んっ・・・だ、ダメ」
彰は誘惑を祓うように頭を横に振る。
アルカシスの真意を聞くまでは、ロキの誘惑に堕ちてはいけないんだ。
誘惑を祓う彰を見て、やれやれとロキは嘆息する。オーディンは感心したようにほぉ、と言った。
「儚い印象のわりに頑固な子だな。なぜアルカシスにこだわる?既にロキから真実は教えてもらっただろ?」
オーディンに問われ、彰は彼から視線を逸らすように被りを振った。
「それ、じゃあ・・・何で・・・あの夜、アルカシス様は、俺を」
ーー淫魔界に連れて来たんだ。
ーーどうしてペットにしたんだ。
この二人に聞いたところで、答えが出るわけがないのは、彰も分かっていた。でも自分と契約を結ばないというなら、アルカシスはどうして自分を連れて来たんだ。
彼から真意を聞くまで、ロキに堕ちてはいけない。
彰は、ロキに反抗の態度を示すようにキッと彼を睨んだ。
それを見たロキは、腰を支えていた手を離すと、彰の頭上でパチパチと拍手をした。呆気に取られた彰はロキを見ると、彼はとても嬉しそうな表情をしている。
「すごい・・・!すごいじゃないかショウ!遂に僕に反抗したね!すごい!ねぇオーディン兄さん今の見た!?ショウが僕に反抗したんだよ!嬉しい・・・!人間の成長ってこんなに感動するんだ!」
突然一人で興奮してうっとりしているロキに、彰だけでなくオーディンもライアンも呆気に取られている。先程までキスをしていたライアンの口端から唾液がそのまま垂れている。
「逆になんでそんなに感動するんだ?お前」
話を振られたオーディンは引き気味ながらもロキに問う。彼は満面の笑みでオーディンに言った。
「だってショウが、だよ!兄さん考えてみてよ!今まで従順だった子が、突然反抗的な態度を取ったんだよ!もう僕感動だよ!」
「あ・・・そう」
興奮するロキにオーディンは興味ないとばかりに生返事をする。むしろ、ロキの思考を心配したくなった。
「もう僕に反抗的な態度を取るショウも可愛い!トール兄さんに必ず仲人を取ってもらって、僕と夫婦になるんだ」
それ以上の事をオーディンは言わなかった。正直、勝手にやってくれと言うのが興奮するロキを見て彼が思った事だ。
「ショウ!今からトール兄さんのところに行こう!僕たちの婚儀は時間がかかるけど、先にトール兄さんに妊娠できる身体になったか診てもらわないと」
ロキはそのままイソギンチャクを身体に貼り付けたままの彰を抱き上げると部屋を出ようとする。
「え!?待って!」
驚いた彰はロキから離れようともがくが彼は彰を解放しようとしない。
「待て、ロキ」
呼び止めたオーディンは、ロキに向かって服を投げた。呼ばれて止まったロキは、服を見てしまったと言わんばかりにあ!と声をあげた。
「しまった!僕としたことが、興奮してショウに服を着させるのを忘れていた!」
「トール兄さんのところに行くならまずは服を着せてやれ。いくら結界内でも裸では凍死する」
「ごめんごめん。ありがとうオーディン兄さん」
ライアンに服を着せながらオーディンはロキに言った。
オーディンに着せられるライアンは、服を見てぶぅと頬を膨らませる。
「これ僕に似合わない!ちょっとオーディン!トール様のところに行くのに何でこんなダサいやつ持って来たのさ!趣味悪いんだから!全く!」
「なんだよ・・・こないだはこれがいいって言ったじゃないか」
不満げに文句を言うライアンにオーディンは呆れてため息をついた。
ライアンが着せられたのは中世期の中国で実際着用された漢服という服で、足まで裾が伸びている。水色の羽織りには美しい鳳凰があしらわれ下は群青色の袴だ。ライアンの色素が薄い金色の髪には目立つ色だが主張しない色合いは儚げで美しく見える。
「だって僕はイギリス人だよ!東洋の服は似合わないの分かってるじゃん!オーディンてば酷い!」
文句を言うライアンの隣で、彰もロキに服を着せられていた。黒髪の長髪となった彰は、白を基調とした上品な漢服姿だ。白い羽織りは龍があしらわれ、下の袴には青色の腰紐が結ばれている。
「凄ーい!似合うよショウ!!黒髪と白い肌によく似合う!美しい!可愛い!まさに僕だけの姫!」
「い、いやっ、や、止めろよ・・・!」
漢服を着せられてぎこちない彰に、ロキを歓喜の悲鳴をあげて喜びを表現した。着替えた彰の周囲を回りだらしないところはないか、入念にチェックするロキに恥ずかしさを感じ遠慮がちに後ずさる。
「こら逃げない。本当に美しいしよく似合ってるんだからきちんと整えないと」
「嫌だって・・・!恥ずかしいからっ」
遠慮がちにロキから離れようとする彰を見て、ライアンは未だ不満げにオーディンに言った。
「ねぇ、オーディン。なんであの子あんなに似合ってるのさ」
「い、いやそんな事はない。ライアンも充分美しいじゃないか!」
ライアンの表情を見て不満がさらに高まった事を察したオーディンは、宥めるように言った。しかしライアンはオーディンのそれは通じず、バシッ!とオーディンの頬にビンタを叩き込んだ。
「もう、僕にお世辞を言うなんて酷い!オーディンのバカっ!」
* * *
4人は、張り付いたイソギンチャクを解除してもらうため、ロキと彰、オーディンとライアンは長兄トールのいる部屋へ向かっていた。ライアンに一発叩き込まれたビンタを受けた頬を撫でながら、オーディンは重いため息を吐いた。その姿を見て、ロキは憐れみを込めて彼の肩を叩いた。
「大丈夫?オーディン兄さん」
「もう100年の付き合いだ。これくらいは慣れた。だが似合うと思うんだけどな、俺は」
俺の趣味が本当に悪いのかと、オーディンはぶつぶつと独り言を言い出した。
「次はヴィクトリア型ドレスを用意した方がいいのか?いやライアンなら、エンパイア型か?」
「え、兄さん?」
「ロキ、お前ならどちらがいい?」
話しながら先に歩くライアンと彰の後ろ姿を見て、オーディンは真顔でロキに尋ねた。
オーディンの言うヴィクトリア型ドレスはウェディングドレスの王道スタイルだ。纏う姿から上品な美しさを窺わせる。対してエンパイア型ドレスは軽やかでシンプルだが、袖のないスタイルが多くこちらは妖艶な美しさを窺わせる。ライアンが袖のないスタイルのエンパイア型ドレスを纏う姿を想像したオーディンは悶々としてうーむと悩む。
「ライアンならエンパイア型か?袖のないスタイルはなかなかそそるが・・・」
「さっき僕に呆れたくせに、兄さんもかなり変態だよね」
「これでも100年夫婦をやっているからな。妄想するのはいつも一緒さ」
「うわぁ、スケベじゃん。どっちもどっちだね」
「何、お前も毎日そうなるさ。『魅惑の人』に拘らなければ、だがな」
後ろの二人がコソコソ話をしている姿をちらっと振り返って見たライアンは、彰を連れて先に進んでいた。
「あれほっといていいよ。いつもエロい事しかしないんだから」
二人から視線を逸らして進むライアンは、彰に言った。
「ショウも早くロキと結婚しちゃえばいいのに。ここは寒いけど、快適に暮らしていけるし、これから会うトール様もロキ様も、ついでにオーディンも優しいよ。子どもを産んでしまえば、余計な事なんて考えなくていいからさ」
「に、妊娠?」
ライアンの唐突な話に、彰はドキッとする。
「そうだよ。僕たちは彼等の子孫の神を出産するために選ばれたんだ。僕はもう二人産んだけど、二人とも元気に成長してるよ。ミシェル様はもう三十人くらいかな?もう大人になった子もいるしね」
ニコニコと語るライアンに彰はどこか恐ろしさを感じた。彼は、ロキとの子を産めばアルカシスの事を考える必要はないという。
このままここにいれば、いずれは自分もロキと夫婦になり、子どもを孕まされるだろう。でもこれは、自分が望んだ事じゃない。
アルカシスは、どうしているのか。
今頃城はどうなっているのか。
アレクセイと別れてしまったが彼は無事なのだろうか。
アルカシスは・・・自分を迎えに来てくれるだろうか。
4人は目の前に巨人な両開きの扉があるところで歩を止めた。背後を歩いていたロキとオーディンは扉へ向かう。ロキは彰に言った。
「ショウ、ここにトール兄さんが待ってくれているよ。今後も兄さんに会う機会があるから、次からは僕と一緒に行こうね」
二人の背後にいたロキとオーディンが扉を一押しする。ゆっくりと聞いていく扉から見えたのは、広いソファに寛ぐように座っている銀色の長い髪の男性だ。
しかも、彼はある人物とよく似ている。
彰はその男性を見て目を見開いたまま固まった。
まさか・・・。
「アルカシス、様?」
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