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六◆偽りの過去
四
しおりを挟む◇◇◇
「帝――ッ!」
屯所へ戻った千早が帝の部屋に駆け付けると、そこには既に人だかりが出来ていた。部屋の戸は開いており、土方や山南、そして非番の幹部や平隊士たちが部屋の周りを取り囲んでいた。
「……佐倉」
中の様子を伺っていた土方が、千早に気付いて近づいてくる。彼は千早の前で立ち止まると、部屋の奥を親指で差して言った。
「中で山崎が様子を見ている。行ってやれ。人払いしてやるから」
「――っ」
それは思いもよらない言葉だった。土方は、千早と帝の二人きりにさせてくれると言っているのだ。
「だが、四半刻だけだ。四半刻したらあの男、引きずってでも俺の部屋に連れて来い」
「……っ」
それは有無を言わせない態度だった。
千早は言葉を詰まらせる。けれどすぐに頷いた。30分――それだけあれば十分だ。そもそも絶対に二人きりになんてさせて貰えないと思っていたのだから。
――その後土方は言葉通り、すぐさま隊士たちを解散させた。千早は土方に頭を下げて、その横を通り過ぎる。「感謝します」と、それだけを言い残して。
そんな千早の姿が部屋の中に消えたのを見届けて、土方は呟く。
「――山崎」
「――は」
刹那、土方の背後に姿を現したのは監察方兼、医者の山崎丞だった。千早と入れ替わりで部屋を出て来た山崎は、土方の背後で彼に向かって頭をたれる。
「いいか、あいつらの会話、一言も聞き漏らすんじゃねェぞ」
「――承知」
そうして次の瞬間には、土方の背後から姿を消す。
土方は山崎の気配が完全に消え去ったのを確認し――その場を後にした。
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