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王宮動乱編

王宮異変 後日談その3

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 戴冠式に、来賓として招待された。
 招待されたのは俺、ヨウミ。
 そしてライム、テンちゃん、マッキー、モーナー、クリマー、ミアーノ、ンーゴ、サミー、コーティ。
 俺の仲間達……ばかりじゃなく、人間でいうその人間関係じゃないようだが、クリマーの弟のゴーアも名指しで指名されてた。
 種族が違う。体形が違う。体格も違う。
 それでも丁重に対応してくれる宿を用意してくれた。
 王族ゆえ、だからかなぁ。
 前泊のために前日宿に到着して間もなく、久々にシアンの歓迎を受けた。

「王都にこんな大部屋がある宿があるなんて思わなかったなー」
「個室で別々にいるよりはいいんじゃないか、とね」

 離れ離れで監禁されていたことが、個室で宿泊する際に心の傷をえぐることを心配してくれたようだ。
 って、シアンもそんな扱い受けてたんだよな。
 まぁ……有り難いってば有り難いか。

「つか、俺達の一言目が宿の感想かよ。感情込めなくても、戴冠式おめでとうの一言くらいでてこねぇか? ヨウミ」
「アラタからそんな殊勝な言葉が出てくるとは思わなかったなー」
「性格、丸くなったわよねぇ。イジり甲斐、減っちゃったなー」
「尖ってるよりはいいと思うよ? そこまでのめり込んでないけど、ある意味商売人でしょ?」
「客相手に尖ってばかりでは、ちょっと問題ありますよね」
「俺の事なんかどうでもいいだろ」

 こいつらぁ……。
 話題の焦点はシアンだろうに。
 ……て、確かに何か、義理堅くなってるか? 俺。

「タイカンシキ、ヨクワカンナイケド、オメデト」
「オメデトウ」
「説明聞いて、王様になるってのは分かったけど……まぁおめでとうは言っとくわ」
「これから大変そうだなあ」

 仲間達の祝いの言葉が次々と出てくる。
 それはそうと。

「招待状に書かれてた通り、普段の格好のままで来たぞ? おめかしするよりはこっちの方が肩ひじ張らんで済むが、お前はそれでよかったのか?」

 ずーっと気になる一点がこれ。
 ところが……。

「むしろ、そうでなくては困るのだ。それに、アラタ達が入場するのは式典の途中からだからな」
「え? 来賓として呼ばれたのに?」
「うむ。なぜそうするかは……アラタ達にもこちらにも参賀する者達にも、今は内緒にしておこう。ただ、こちらには、そうする予定であることは既に伝えてある」

 この招待状には裏があるってことか。
 仲間内には、隠し事は禁止ってルールができちまったんだがな。

「この世界に来た時に、俺だけ爪はじきにされたんだがな。そしてお前が王となるその日に、招待受けて爪はじきか」
「いや、アラタ。これは君にとっても絶対に必要な事なのだ。君はこの世界の人として、そして日本大王国の国民として毎日を過ごすのだろう?」

 それは、こいつと初めて会った時から、いや、その前からそうすると決めていた。

「あの騒ぎは鎮火しつつあるが、未だにアラタを目の敵にしている商人ギルドの幹部が何人かいる。下らぬ噂を信じている者も少なくはない。王の名において、その流言の元が不明な噂を払拭するために、な」
「いや、それくらいは」
「いや、アラタ。これからは、こんな風に気軽に会うことが難しいかもしれない。そんなことはないかもしれないが、もしそうならアラタへの友情の証として」

 堅苦しいな。
 けど、前国王からの仕打ちの償いって言わないところは評価できるし、余計な言葉も不要だ。

「普通なら、そういうことは気遣いってもんだろうが、いいよ」
「……いいよ、とは?」
「明日はお前の指示通りに行動する。お前の新たな門出を祝する意味でもな」
「……あぁ、有り難う」

 しかし……こんな間抜けが国王になるって……コーティじゃないが大丈夫か? この国。

「けど一言、いいか?」
「何だ? アラタ」
「俺達が式典の最初から参加しないその理由は、俺達やそっちの人達とかに秘密っつってたが、今、俺らに、モロにその理由言ってんじゃねぇか」

 その演出のための、俺らへの入場規制なんだろ?
 秘密とか言いながら、自分からばらしてどうすんだ?

「あ」

 遅ぇよ。

「「「「「「「「「あ」」」」」」」」」

 いや、お前らも気付くの遅ぇよ。
 それはそうと、この式典の主役に俺がちょいと絡められるようなことがあれば、俺の企みもうまい具合に成功できるかもしれねぇかな?

 ※※※※※ ※※※※※

「式典、始まってるよね」
「何か、向こう側がざわついてるな。人の気配も、数えるのが面倒なくらい。向こうには……」

 案内図とかが見当たらないエントランスホール。
 城門の中の広場と同じくらいのスペースか?
 だとしたら、敷地の広さって……どれくらいなんだ……。
「向こう側は中庭になっており、式典の会場にもなっております」
「はぁ……」

 案内役の兵達の一人から説明を受けた。
 ご丁寧にどうも。

「それにしても、そろそろ一時間経つよ? まだ入れないの?」

 マッキーの不満を聞いて、ポケットにある通話機に思わず触った。
 が、連絡しても無駄なはずだ。
 あの時以来、シアンも、そして仲間達も取り上げられた通話機はそのまま処分されたらしい。
 だからこの通話機が通じる相手はヨウミのみ。
 もちろん他の通話機と通信可能だが、その相手の番号を俺は知らんからな。

「ん? この通話音誰のだ? 俺じゃねぇぞ?」
「あたしのでもない」

 俺のでもヨウミのでもなければ……。

「私だ。うむ。了解した。……みなさん、お待たせしました。式場に入ります。私が先導しますのでついてきてください」

 案内役の兵士の通話機からだった。
 随分待たせられたな。
 さて……。
 この式典をどうやって弄ってやろうかな。
 でも、相当広い式場いっぱいに俺の声を響き渡らせるには、マイクか何かが必要だよな。
 それを手にする自然な流れを考えるには……。
 時間、足りねぇ……。
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