293 / 493
王宮動乱編
王宮異変 後日談その2
しおりを挟む
シアンに手のひらの上で転がされてる気分なんだよな。
「でもさ、服装はそのままで問題なしって書いてるけど……」
「この時のためだけに一張羅とか用意するの、面倒だし。甘えさせてもらおう」
シアンの直筆の文章の追伸に書かれてた。
主役が直々にそう伝えてきたんだから、文句を言われる筋合いじゃない。
そもそも。
「テンちゃんもライムもンーゴも、基本的には普段から素っ裸なんだよな。……何だよ、その目は」
「いや、あの……ね、も少し言い方をさぁ」
「アラタ、あたしの色気に惑わされそうかなー?」
誰だよ、テンちゃんにそんなボケを植え付けた奴ぁ。
返事のしようがねえじゃねぇか。
「……テンちゃんの馬鹿っぷりも磨きかかってきたわよね」
「コーティ、あたしにもきつい事言うんだけどぉっ!」
自業自得じゃねぇか。
そもそも色気の話なんざ誰もしてねぇんだよ。
「つまり、全員それぞれ見合った礼服なんて、用意する気はねぇんだよ。その金、どこからも出てこねぇんだし」
「シアンに請求してもいいんじゃない?」
「普段着でいいってんなら、わざわざ服を用意するって発想もなかろ? こっちで勝手に用意した費用をそっちが出してくれるってこともあり得ねぇだろ」
「まぁ……それもそうなんだけど……」
なんか、ンーゴもテンちゃんが起こした騒ぎに混ざってんだが、構ってられんわ。
ライムは性別ないからスルーしてるっぽいが。
「でもさ、この式典で何かしたかったの? いつもなら、こんな面倒な事に首突っ込みたがらないじゃない。シアンのことも、なるべく遠ざけがちだったし」
「そう言えばそうですよね。それでも何かをするってときは、必ず何か理由があってのことだし」
マッキーもクリマーも的確な指摘してくるな。
「隠し事はあ、ダメだぞお」
「ソウダネ。ナイショニシテ、ロクナコトニナッテナイ」
「あー……そんなこと、前にも話ししてらったんじゃねぇかや?」
……俺も、なんかそんな覚えがある。ような気がする。
内緒にしときたかったんだが、仕方ねぇか?
「あー……しょうがねぇなぁ」
できればその時が来るまでは言いたくはなかったんだがな。
「あー……テンちゃんは、灰色の天馬、だな」
「え? あたし? そりゃ……うん。見れば分かるでしょ?」
あぁ。
見たまんまだからな。
「マッキーは、ダークエルフ」
「……間違っちゃいないけど、それが何?」
これも見たまんま。
「クリマーは、弟と共に、ドッペルゲンガー」
「え? え、えぇ……」
うん。
そうなんだよな。
「まずこの三人だ。それと、ンーゴ」
「オレガ、ドウカシタカ?」
うん。
どうかしたんだ。
「特に先の三人には共通点がある。そしてその共通点の延長にンーゴも入る。なんだか分かるか?」
「あたしは入ってないの?」
「ミッ」
「俺はあ?」
コーティもサミーも、ちょっと違うよな。
モーナーは……ここ限定でなら該当するか?
「おりゃあ入ってねぇのか? この四人にどんな共通点があるってんだいゃ?」
デリカシーが伴う問題だからなー。
「多分、だけど……嫌われてるってこと? 見たら縁起が悪いとか」
まさか正解がヨウミから出るとは。
まぁいいんだけどな。
「あぁ。そしてンーゴは、その見た目から驚かれ、恐れられる。そこから嫌われる傾向が強く思える」
「……偏見よね」
「でも……その偏見を払しょくできない現実もあります……」
「ひょっとしてアラタ、その式典であたし達を何とかしてあげるって?」
まぁそうなんだが、それだけじゃ馬鹿の返上は難しいぞ。
「ま、ミアーノもコーティもサミーもライムもモーナーも、一般の市民権をそこで得る、ってのが狙いだった。レアな種族であれば、討伐した時に出るアイテムもレア、なんて認識も何とかしたいしな」
偏見がなかったとしても、こいつらを傷つけたことで何かのアイテムを落とす、なんて噂話が出たらどうなる?
この店、地獄に変わるぞ?
こっちだって、やられっぱなしってわけにゃいかねぇ。
返り討ちにしたら、今度は仲間が敵討ちにやってくること間違いない。
それに、レアアイテムを落とすって噂の裏打ちになりかねない。
「みんな、珍しい種族だって言う。だからこそ、未知の部分もたくさんある。根も葉もない噂もたくさん出てくるだろうし、その噂によって日常が壊されることだってあり得る。大衆にそのことを訴えるには絶好のチャンスじゃねぇか」
「戴冠式の式典が、あたし達の主張の場に早変わり、ってことね?」
「シアンにい、申し訳ない気もするぞお」
「そういう時だけ仲間面するのも気が引けるがな。その機会をくれるくらい親密な間柄、ってな」
「借り、作りたくないんじゃなかったの?」
まったく、コーティは痛いところを突いてくる。
だが……。
「それだけの価値はある、と思う……」
「ほかに、そんな機会はないのかしら? アラタさんが私達にそう思ってくれるのはうれしいんだけど……」
「ないだろ。あるとしても、その間にこないだみたいな夜討ちとかに常に備えるってのも勘弁してほしいし」
まず俺は、穏やかな毎日を過ごしたい。
何かしょっちゅうトラブルが起きてる気がするんだよな。
トラブルがいつも身の回りに起きてるのが普通、っての、有り得ねぇから。
「それに、俺達はこんな普通の住民ですって言うアピールをするのに、普段の格好してなきゃ分かってもらえねぇだろ。おめかしした格好が普段の姿とかけ離れてたら、あの時の俺達と同一とみてくれねぇかもしれねぇじゃねぇか」
「……ソレモ、ソウダナ」
「あぁ。だからンーゴ、お前もそのままの格好で行くからな? 招待状にも、普段の格好のままでいいって書いてんだから。みんなもだぞ? 当然俺もこの格好で行く」
「いいのかなー」
いいんです。
おめかししても、その費用はどこからも出してくれません。
自腹も切りたくありません。
「でもさ、服装はそのままで問題なしって書いてるけど……」
「この時のためだけに一張羅とか用意するの、面倒だし。甘えさせてもらおう」
シアンの直筆の文章の追伸に書かれてた。
主役が直々にそう伝えてきたんだから、文句を言われる筋合いじゃない。
そもそも。
「テンちゃんもライムもンーゴも、基本的には普段から素っ裸なんだよな。……何だよ、その目は」
「いや、あの……ね、も少し言い方をさぁ」
「アラタ、あたしの色気に惑わされそうかなー?」
誰だよ、テンちゃんにそんなボケを植え付けた奴ぁ。
返事のしようがねえじゃねぇか。
「……テンちゃんの馬鹿っぷりも磨きかかってきたわよね」
「コーティ、あたしにもきつい事言うんだけどぉっ!」
自業自得じゃねぇか。
そもそも色気の話なんざ誰もしてねぇんだよ。
「つまり、全員それぞれ見合った礼服なんて、用意する気はねぇんだよ。その金、どこからも出てこねぇんだし」
「シアンに請求してもいいんじゃない?」
「普段着でいいってんなら、わざわざ服を用意するって発想もなかろ? こっちで勝手に用意した費用をそっちが出してくれるってこともあり得ねぇだろ」
「まぁ……それもそうなんだけど……」
なんか、ンーゴもテンちゃんが起こした騒ぎに混ざってんだが、構ってられんわ。
ライムは性別ないからスルーしてるっぽいが。
「でもさ、この式典で何かしたかったの? いつもなら、こんな面倒な事に首突っ込みたがらないじゃない。シアンのことも、なるべく遠ざけがちだったし」
「そう言えばそうですよね。それでも何かをするってときは、必ず何か理由があってのことだし」
マッキーもクリマーも的確な指摘してくるな。
「隠し事はあ、ダメだぞお」
「ソウダネ。ナイショニシテ、ロクナコトニナッテナイ」
「あー……そんなこと、前にも話ししてらったんじゃねぇかや?」
……俺も、なんかそんな覚えがある。ような気がする。
内緒にしときたかったんだが、仕方ねぇか?
「あー……しょうがねぇなぁ」
できればその時が来るまでは言いたくはなかったんだがな。
「あー……テンちゃんは、灰色の天馬、だな」
「え? あたし? そりゃ……うん。見れば分かるでしょ?」
あぁ。
見たまんまだからな。
「マッキーは、ダークエルフ」
「……間違っちゃいないけど、それが何?」
これも見たまんま。
「クリマーは、弟と共に、ドッペルゲンガー」
「え? え、えぇ……」
うん。
そうなんだよな。
「まずこの三人だ。それと、ンーゴ」
「オレガ、ドウカシタカ?」
うん。
どうかしたんだ。
「特に先の三人には共通点がある。そしてその共通点の延長にンーゴも入る。なんだか分かるか?」
「あたしは入ってないの?」
「ミッ」
「俺はあ?」
コーティもサミーも、ちょっと違うよな。
モーナーは……ここ限定でなら該当するか?
「おりゃあ入ってねぇのか? この四人にどんな共通点があるってんだいゃ?」
デリカシーが伴う問題だからなー。
「多分、だけど……嫌われてるってこと? 見たら縁起が悪いとか」
まさか正解がヨウミから出るとは。
まぁいいんだけどな。
「あぁ。そしてンーゴは、その見た目から驚かれ、恐れられる。そこから嫌われる傾向が強く思える」
「……偏見よね」
「でも……その偏見を払しょくできない現実もあります……」
「ひょっとしてアラタ、その式典であたし達を何とかしてあげるって?」
まぁそうなんだが、それだけじゃ馬鹿の返上は難しいぞ。
「ま、ミアーノもコーティもサミーもライムもモーナーも、一般の市民権をそこで得る、ってのが狙いだった。レアな種族であれば、討伐した時に出るアイテムもレア、なんて認識も何とかしたいしな」
偏見がなかったとしても、こいつらを傷つけたことで何かのアイテムを落とす、なんて噂話が出たらどうなる?
この店、地獄に変わるぞ?
こっちだって、やられっぱなしってわけにゃいかねぇ。
返り討ちにしたら、今度は仲間が敵討ちにやってくること間違いない。
それに、レアアイテムを落とすって噂の裏打ちになりかねない。
「みんな、珍しい種族だって言う。だからこそ、未知の部分もたくさんある。根も葉もない噂もたくさん出てくるだろうし、その噂によって日常が壊されることだってあり得る。大衆にそのことを訴えるには絶好のチャンスじゃねぇか」
「戴冠式の式典が、あたし達の主張の場に早変わり、ってことね?」
「シアンにい、申し訳ない気もするぞお」
「そういう時だけ仲間面するのも気が引けるがな。その機会をくれるくらい親密な間柄、ってな」
「借り、作りたくないんじゃなかったの?」
まったく、コーティは痛いところを突いてくる。
だが……。
「それだけの価値はある、と思う……」
「ほかに、そんな機会はないのかしら? アラタさんが私達にそう思ってくれるのはうれしいんだけど……」
「ないだろ。あるとしても、その間にこないだみたいな夜討ちとかに常に備えるってのも勘弁してほしいし」
まず俺は、穏やかな毎日を過ごしたい。
何かしょっちゅうトラブルが起きてる気がするんだよな。
トラブルがいつも身の回りに起きてるのが普通、っての、有り得ねぇから。
「それに、俺達はこんな普通の住民ですって言うアピールをするのに、普段の格好してなきゃ分かってもらえねぇだろ。おめかしした格好が普段の姿とかけ離れてたら、あの時の俺達と同一とみてくれねぇかもしれねぇじゃねぇか」
「……ソレモ、ソウダナ」
「あぁ。だからンーゴ、お前もそのままの格好で行くからな? 招待状にも、普段の格好のままでいいって書いてんだから。みんなもだぞ? 当然俺もこの格好で行く」
「いいのかなー」
いいんです。
おめかししても、その費用はどこからも出してくれません。
自腹も切りたくありません。
0
お気に入りに追加
1,586
あなたにおすすめの小説
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
追放されたテイマー半年後に従魔が最強になったのでまた冒険する
Miiya
ファンタジー
「テイマーって面白そうだったから入れてたけど使えんから出ていって。」と言われ1ヶ月間いたパーティーを追放されてしまったトーマ=タグス。仕方なく田舎にある実家に戻りそこで農作業と副業をしてなんとか稼いでいた。そんな暮らしも半年が経った後、たまたま飼っていたスライムと小鳥が最強になりもう一度冒険をすることにした。そしてテイマーとして覚醒した彼と追放したパーティーが出会い彼の本当の実力を知ることになる。
異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた
甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。
降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。
森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。
その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。
協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
踏み台(王女)にも事情はある
mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。
聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。
王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる