295 / 493
王宮動乱編
王宮異変 後日談その4
しおりを挟む
俺達はそのまま、行列組んで入場するものとばかり思ってた。
入場ゲートを前にして、案内役の兵に止められた。
「ここで一旦お待ちいただきます。……はい、予定通りに。はい、了解しました。……アラタ殿はお時間を頂きます。まずは……ライム殿、中へ」
「ライムダケ? ミンナハ?」
「まずは、ライム殿、どうぞその門をおくぐり下さい。中の係の者が席まで案内しますので。何の心配もいりません」
残念なことに、この兵の言うことに嘘がねぇ。
「ライム、行ってこい。でないと事が進まねぇ」
「……ウン、ワカッタ。ナニカアッタラカケツケルカラネ?」
「あぁ」
何やら場内で歓声が沸いている……のか?
いや、場内からは恐れの感情が感じ取れる。
多分ライムを見ての事だろう。
暴動が起きるってんなら構わんぜ?
まずは傍にいるこいつを殴り飛ばして中に駆けこむ。
ライムと合流したらすぐに俺の体に纏わりついてもらってここに戻ってここから脱出。
問題はないはずだ。
が……。
ライムが戻ってこないってのが問題だ。
……もっとも、その感情も収まったようだが。
「……了解です。テンちゃん……さん」
「さん、いらないよ? それよりライム、どうなったの?」
「え、えぇっと、テンちゃん……コホン。どうぞ中へ」
「え? 今度はアラタと一緒じゃないの?」
「テンちゃんお一人で大丈夫です」
ゲートの向こう側に消えていったテンちゃん。
そしてしばらくして感じ取れる、場内からの怯えの感情。
間違いなくテンちゃんを見た来場者からのものだな。
そして次に呼ばれたのはマッキー。
次はモーナー。
さらに、クリマーとゴーアが同時に場内に入っていった。
ミアーノ、ンーゴ、そしてサミー、コーティと一人ずつ呼ばれて入っていく。
コーティだけは歓迎されてるような感情が湧いたが、ほとんどがみんなを嫌うような感情が感じ取れた。
もっともその感情は、感じ取れてからすぐに消えたようだ。
いずれも、何やらシアンが演説した直後だったが。
「ではヨウミさん、中へ」
「うん……行ってくるね」
「今生の別れのような言い方してんじゃねぇよ」
笑いながら受け流してヨウミは場内に入って行った。
にしても、確かにシアンの奴、何か喋ってんだがなぁ。
よく聞こえねぇんだよな。
それに、入場したあいつらは、なんか気持ちが安定してるっぽい感じだし……。
「アラタさん。どうぞ、中へ」
「え? あ、俺の番か。って、俺しかいねぇから当然か」
……しまった。
マイクみたいなのを、どうやったら手にできるか考えてなかった。
※※※※※ ※※※※※
「彼の者は、父親である先代の王と、国教である慈勇教の大司祭によって、旗手として召喚された一人である!しかし先の報告のように、召喚した直後から差別を受け、謂れのない理由で犯罪者扱いされてしまった。前王を拘束、軟禁状態にしたのは、このままでは王家、王族は国民から信を得られないこと、そしてなにより人道上してはならないことを何のためらいもなく行ったためである!」
は?
俺が入場した途端、シアンの奴がマイクか何かを使ってそんなことを言い始めた。
その場内の地形は、どでかい楕円形。
客席はすり鉢状になっていた。
陸上競技とかサッカー場のような感じか?
シアンから見たら、縦長ってことだよな。
高さの一で言えば、その真ん中あたり。
所々に巨大なスクリーンが置いてあって、シアンの演説の様子がどの席からでもよく見えてそうだ。
そんな場内隅々に行き渡る音量。
いや、その声のでかさよりも……いきなりあいつ、何言いやがる?!
「それくらいのことをしてからでないと、この非例の詫びは受け入れてもらえないだろう、と判断した。もちろんそれでも受け入れてもらえないことも考えた。そして、それでも彼の者は、人の道から外れるどころか、この国の民から受け入れられなかった彼らに救いの手を差し伸べ、訪れた先々で目の当たりにした問題を解決のために彼らとともに取り組んでこられた。その人柄にほれ込み、私もまた、彼らの仲間になることを決めた!」
……俺が、あいつらに何かしてやろうってことより、このスピーチの方が間違いなく効率が……。
……そうか。
やられた。
してやられた。
シアンの奴、俺の思考を読んでやがったか?
そういうことだったか。
あいつらのことを一人ずつ、こんな紹介めいたことを言い続けてたのか。
これなら俺がどうこうするより、あいつら、市民権得やすくなるよな。
でもよぉ……つぅか……。
こんな言われ方したらさぁ……。
俺、気まぐれな行動しづらくならねぇか?
例えば転職したりとか……。
まぁ……いいけどよ……。
入場ゲートを前にして、案内役の兵に止められた。
「ここで一旦お待ちいただきます。……はい、予定通りに。はい、了解しました。……アラタ殿はお時間を頂きます。まずは……ライム殿、中へ」
「ライムダケ? ミンナハ?」
「まずは、ライム殿、どうぞその門をおくぐり下さい。中の係の者が席まで案内しますので。何の心配もいりません」
残念なことに、この兵の言うことに嘘がねぇ。
「ライム、行ってこい。でないと事が進まねぇ」
「……ウン、ワカッタ。ナニカアッタラカケツケルカラネ?」
「あぁ」
何やら場内で歓声が沸いている……のか?
いや、場内からは恐れの感情が感じ取れる。
多分ライムを見ての事だろう。
暴動が起きるってんなら構わんぜ?
まずは傍にいるこいつを殴り飛ばして中に駆けこむ。
ライムと合流したらすぐに俺の体に纏わりついてもらってここに戻ってここから脱出。
問題はないはずだ。
が……。
ライムが戻ってこないってのが問題だ。
……もっとも、その感情も収まったようだが。
「……了解です。テンちゃん……さん」
「さん、いらないよ? それよりライム、どうなったの?」
「え、えぇっと、テンちゃん……コホン。どうぞ中へ」
「え? 今度はアラタと一緒じゃないの?」
「テンちゃんお一人で大丈夫です」
ゲートの向こう側に消えていったテンちゃん。
そしてしばらくして感じ取れる、場内からの怯えの感情。
間違いなくテンちゃんを見た来場者からのものだな。
そして次に呼ばれたのはマッキー。
次はモーナー。
さらに、クリマーとゴーアが同時に場内に入っていった。
ミアーノ、ンーゴ、そしてサミー、コーティと一人ずつ呼ばれて入っていく。
コーティだけは歓迎されてるような感情が湧いたが、ほとんどがみんなを嫌うような感情が感じ取れた。
もっともその感情は、感じ取れてからすぐに消えたようだ。
いずれも、何やらシアンが演説した直後だったが。
「ではヨウミさん、中へ」
「うん……行ってくるね」
「今生の別れのような言い方してんじゃねぇよ」
笑いながら受け流してヨウミは場内に入って行った。
にしても、確かにシアンの奴、何か喋ってんだがなぁ。
よく聞こえねぇんだよな。
それに、入場したあいつらは、なんか気持ちが安定してるっぽい感じだし……。
「アラタさん。どうぞ、中へ」
「え? あ、俺の番か。って、俺しかいねぇから当然か」
……しまった。
マイクみたいなのを、どうやったら手にできるか考えてなかった。
※※※※※ ※※※※※
「彼の者は、父親である先代の王と、国教である慈勇教の大司祭によって、旗手として召喚された一人である!しかし先の報告のように、召喚した直後から差別を受け、謂れのない理由で犯罪者扱いされてしまった。前王を拘束、軟禁状態にしたのは、このままでは王家、王族は国民から信を得られないこと、そしてなにより人道上してはならないことを何のためらいもなく行ったためである!」
は?
俺が入場した途端、シアンの奴がマイクか何かを使ってそんなことを言い始めた。
その場内の地形は、どでかい楕円形。
客席はすり鉢状になっていた。
陸上競技とかサッカー場のような感じか?
シアンから見たら、縦長ってことだよな。
高さの一で言えば、その真ん中あたり。
所々に巨大なスクリーンが置いてあって、シアンの演説の様子がどの席からでもよく見えてそうだ。
そんな場内隅々に行き渡る音量。
いや、その声のでかさよりも……いきなりあいつ、何言いやがる?!
「それくらいのことをしてからでないと、この非例の詫びは受け入れてもらえないだろう、と判断した。もちろんそれでも受け入れてもらえないことも考えた。そして、それでも彼の者は、人の道から外れるどころか、この国の民から受け入れられなかった彼らに救いの手を差し伸べ、訪れた先々で目の当たりにした問題を解決のために彼らとともに取り組んでこられた。その人柄にほれ込み、私もまた、彼らの仲間になることを決めた!」
……俺が、あいつらに何かしてやろうってことより、このスピーチの方が間違いなく効率が……。
……そうか。
やられた。
してやられた。
シアンの奴、俺の思考を読んでやがったか?
そういうことだったか。
あいつらのことを一人ずつ、こんな紹介めいたことを言い続けてたのか。
これなら俺がどうこうするより、あいつら、市民権得やすくなるよな。
でもよぉ……つぅか……。
こんな言われ方したらさぁ……。
俺、気まぐれな行動しづらくならねぇか?
例えば転職したりとか……。
まぁ……いいけどよ……。
0
お気に入りに追加
1,585
あなたにおすすめの小説
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。
帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。
しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。
自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。
※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。
※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。
〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜
・クリス(男・エルフ・570歳)
チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが……
・アキラ(男・人間・29歳)
杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が……
・ジャック(男・人間・34歳)
怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが……
・ランラン(女・人間・25歳)
優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は……
・シエナ(女・人間・28歳)
絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……
はずれスキル『模倣』で廃村スローライフ!
さとう
ファンタジー
異世界にクラス丸ごと召喚され、一人一つずつスキルを与えられたけど……俺、有馬慧(ありまけい)のスキルは『模倣』でした。おかげで、クラスのカースト上位連中が持つ『勇者』や『聖女』や『賢者』をコピーしまくったが……自分たちが活躍できないとの理由でカースト上位連中にハメられ、なんと追放されてしまう。
しかも、追放先はとっくの昔に滅んだ廃村……しかもしかも、せっかくコピーしたスキルは初期化されてしまった。
とりあえず、廃村でしばらく暮らすことを決意したのだが、俺に前に『女神の遣い』とかいう猫が現れこう言った。
『女神様、あんたに頼みたいことあるんだって』
これは……異世界召喚の真実を知った俺、有馬慧が送る廃村スローライフ。そして、魔王討伐とかやってるクラスメイトたちがいかに小さいことで騒いでいるのかを知る物語。
異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた
甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。
降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。
森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。
その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。
協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。
転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう!〜公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ〜
西園寺若葉
ファンタジー
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。
どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。
- カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました!
- アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました!
- この話はフィクションです。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
追放されたテイマー半年後に従魔が最強になったのでまた冒険する
Miiya
ファンタジー
「テイマーって面白そうだったから入れてたけど使えんから出ていって。」と言われ1ヶ月間いたパーティーを追放されてしまったトーマ=タグス。仕方なく田舎にある実家に戻りそこで農作業と副業をしてなんとか稼いでいた。そんな暮らしも半年が経った後、たまたま飼っていたスライムと小鳥が最強になりもう一度冒険をすることにした。そしてテイマーとして覚醒した彼と追放したパーティーが出会い彼の本当の実力を知ることになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる