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血
しおりを挟む実家を出て、一人暮らしを始めてから、まだ1週間も経っていませんでした。
女の一人暮らしだからって、奮発してオートロックのまぁまぁセキュリティのしっかりした家に住んでいました。
あの頃は、まだ荷解きが終わっておらず仕事が終わって帰宅してからも淡々と作業をしていました。
初めての一人暮らしだったので大量に物を持ち込んだ上に、おしゃれなお部屋にしたくてレイアウトもこだわりが強くて決まらなかったのです。
あと、思い出のアルバムとか本とか漫画とか出てくる度に眺めていたから、どんどん作業は遅くなっていきました。
その日も気がつけば作業を始めて5時間が経って、深夜2時になっていました。
いい加減寝ようかと思って、作業BGMに流していた音楽を止めると、なんだか外から大きめの物音がしていることに気がつきました。
どん!どん!どん!どん!どん!
いつから音がしていたのかわかりませんが、規則正しく物を打ちつける様な音がします。
深夜に道路工事でもしているのかな?って思ったんですが、その音しかしません。
気にせず、寝ようと布団に潜り込み目を瞑りました。
しかし、どん!どん!と音が気になって眠る事ができません。
私は、ベランダに出て外の様子を見ました。
ぐるりと外を見まわししますが、何も見当たりません。そもそも、音がする方向が違う気がします。
再び寝ようとチャレンジを試みるものの、とてもじゃないけどうるさくて眠る事ができませんでした。
冷静になり、音がする方向を探ってみました。
どうやら玄関から音がする様でした。
勇気を振り絞り、玄関のドアの覗き穴から周りを覗きました。隣の家との間の壁に人影が見えました。
はっきり見えませんが、小刻みに動いています。
気になった私は、チェーンをかけたままドアを少しずつ開けてその人の様子を見ました。
その人は、中肉中背の男の人で壁の方を向いて、一生懸命に頭を打ちつけていました。
床に溜まるほど血が流れていました。
頭は窪んでいるようでした。
そして、その窪んだ頭からも血がダラダラと流れ落ちていました。
男は、こちらに気がついたのか血だらけの顔を私の方に向けて、ニタリと笑いました。
勢いよくドアを閉めました。音は止みましたが、心配ですぐに警察に通報しました。
5分足らずで警察が到着。
外を確認してもらいましたが、壁に頭を打ちつけている人なんていなかった、と言われました。
床に血溜まりも無かったと言うのです。
私も確認すると、確かにどこにも血の跡は無かったです。
恐怖を覚えた私はすぐに、再び実家に戻るために、引っ越しました。
友人にその話をすると、幽霊でも見たんじゃない?と馬鹿にした口調で言われました。
確かに、血溜まりごと消えたので生身の人間ではなかったのかもしれません。
しかし、幽霊だからと言ってあの様な意味のない行動を繰り返すなんて…
今でも、血だらけの男の顔がフラッシュバックする事があります。
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