短い怖い話 （怖い話、ホラー、短編集）

夜中のトイレ

　子供の頃の話です。

　夏休みにおばあちゃんの家に一人でお泊まりに行ったんです。

　日中は、何事もなく過ごしていました。
　けれど、夕方になってトイレの電気がつかないことに気がつきました。電球が切れていたのです。
　
　すぐに替えがあったらよかったのでしょうが、あいにく無かったようで、それに田舎の家なのですぐに買いに行くこともできず、一晩は電気なしで過ごすことにしたのです。
　その代わりに、夜中にトイレに行きたくなる私の為に、おばあちゃんがドアの前に懐中電灯を置いておいてくれたんです。


　そして案の定、夜中になってトイレに行きたくなって目を覚ましました。

　小さな常夜灯が足元に有るだけの薄暗い廊下を通って、あまりの暗さに怯えながら、やっとトイレに辿り着きました。

　懐中電灯を持ってゆっくりドアを開けて、素早く用を足して、便器の横にある水道で手を洗ってトイレを出ようとしました。

　怖いので、ゆっくりドアを開けました。

　3センチほど、開いたくらいで外の様子を右目だけで覗きました。
　



　廊下の暗い照明に照らされて、黒っぽい男の顔が私の顔の目の前に現れました。

　男の左目と私の右目が向かい合ったのがわかりました。



　あまりの恐怖で声も出ませんでした。


　「ち、が、う、」


　男が唸るような声でポツポツと呟いた瞬間、私の意識は遠のきました。


　翌朝に、おばあちゃんがトイレの中で倒れていた私を見つけて救急車を呼んでくれました。

　私はひどい熱中症になっていたそうで、数日間入院しました。
　

　けれど、熱中症では無いと思うんです。
　きっと、あの男の顔を見たせいだって思っています。


　あれ以来、おばあちゃんちに行く事はあったものの、夜中にトイレに行くことはなかった為か2度と男の顔を見ることは有りませんでした。

　あと、ちがう、って言っていましたが何が違ったんですかね、、、