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第一章
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あれから何とか落ち着きを取り戻し、事の経緯を説明した。
何度も詰まるおれの話を急かす事なく最後まで聞いてくれてマジでいい人。
「なるほど、つまり私はマシロ殿の実験体ということか」
「本当に申し訳ございません…」
ベッドに土下座したまま自分の自己中さに頭を上げられない。
「まあ褒められたことでは無いが、アイリーン様が誘導したようなものだしそれほどまでに追い詰められていたのも仕方がない。冷静な状態じゃなかったのも何となく感じていた。…てっきり私の想いに応えてくれたものだと」
「え?」
「いや、何でもない。しかし些か無謀だぞ。私以外の者だったら今頃取り返しのつかない事態になっていた」
「おっしゃる通りです…」
「もっと自分の身体を大事にしなさい」
「お父さん…っ!」
「お、お父さんはやめなさい…っ!」
そんな歳では…いや、大丈夫なはず…。と落ち込んでいる団長を今度はおれが慰める。
すみません、つい出来心で。
「…まあ、事情も分かったことだ。取り敢えず拘束を解いてくれないか?」
「はい!喜んで!」
急いで団長の後ろに回り目隠しをしている布を取ろうと…ん?
手の拘束をしている縄を見るも…あれ?
布や縄を弄るだけで一向にほどかないおれに団長が声を掛ける。
「どうかしたか?」
「あの…それが…」
おれは混乱した。だってどっちにも無いのだ。
「団長、結び目が…ありません」
「何…?、っ!なるほどそうか、やられたな…」
え?え?やられたって何が?これどうやって外したらいいの?
「恐らくそれは条件付けの魔具だ」
「条件付けの魔具?」
「主にスパイなどの尋問に使う魔具なんだが、拘束魔法が掛けられていてその時の開放条件を満たすと自然と外れる仕組みなんだ」
「開放条件…?じゃあ、自力で外せないんですか?」
「カール殿ほどの魔法に精通している者なら可能だろうが、生憎私は魔力こそあれ魔法は苦手なんだ」
「なんてこった」
おれは魔力すらないから論外だし、そうだ!
「おれ!アイリーン様に言って外して貰うよう頼んできます!」
ベッドから飛び降りてドアノブを捻って押す。が、なぜかびくともしない。
何度も何度もガチャガチャしていると音で気が付いたのか団長が声を掛けてくる。
「防音魔法は気が付いたが、まさか閉じ込められていたとは…。好き嫌いせず魔法も訓練しないと駄目だな」
私もまだまだだ、何て悠長な言葉に余裕を感じる。さすが歴戦の騎士。
「えーっ、じゃあどうします?出られないんじゃ、ずっとこのまま…」
「方法が全くないわけじゃない。言っただろう、これは条件付けの魔具。その条件さえ満たせば外れる」
条件か。
「付けられていそうな条件に心当たりは無いか?」
「そんないきなり聞かれても…あ」
え?もしや、いや、まさか。でもこれってアイリーン様が考えただろうし、そもそもその為に目隠しと手まで拘束したんだろうし…。いや、でもな…。
「心当たりがありそうだな」
「えっ、でも多分違うと思います!いや、絶対ちが…っ」
「違ったらまた別のものを試せばいい」
うぅ…いや、でも拘束されてるのは団長でおれのせいでこんな事になってるんだからおれに拒否権ないか…。でもなーこれじゃなかった時が悲惨過ぎるしなー…。
なかなか言い出さないおれを、言ってみろと促す団長に根負けして恐る恐る口にする。
「あのー、そもそも団長が拘束されてるのってー、おれが団長を襲いやすいように、だと思うんですー」
「そうだろうな」
「それでー、その…。アイリーン様の言う襲うって言うのが、あのー、ごにょごにょ…」
「ん?すまない、よく聞こえなかった」
「だから、あの、中にぃごにょごにょ…」
「マシロ殿、もっとはっきり言ってくれないか。間違っててもいいと言っただろう?」
ゔぅ~~~っ
「…だからぁ!おれの尻の中に団長の精液出してもらうまでなんですーっ!」
言った!言っちゃった!アイリーンこのやろう!
顔がカーッと熱くなるのがわかる。今なら顔面でお湯沸かせるよ…っ!!
まるで時が止まってしまったかのような沈黙に、ちらっと団長を見ると微動だにしてない。やべ、確実に引かれてるぞこれ。
だってさっき身体を大事にしろって言われたばっかりなのに、それしないと外れないし出られないなんて…。き、気まずい。
「あ、やっぱ違うかも…」
「マシロ殿はそのつもりで私にキスしてきたのか?」
「へぇ?」
「元々私とそこまでするつもりだった、で合っているか?」
「えぇ?あ、まあ…はい」
「そうか、………。」
「だ、団長…?」
再び黙り込んでしまった団長にドギマギする。
やっぱり自分が具体的に何をされそうになっていたのか聞いてショック受けてるのかな…。
そりゃこんだけ魔力持ちの男前でしかも騎士団長。
数多の女性から言い寄られることはあっても、こんなちんちくりんの魔力なし男にちんこ狙われたことなんて無かっただろう。
おれならトラウマものだ。
「おれ、窓から出られるかみて…」
「マシロ殿」
びくぅっ!!
低く平坦な声で名前を呼ばれた。
「な、なんでしょう」
「…試してみよう」
「た、試す、とは?」
「先ほどの条件。マシロ殿が嫌でなければ、試してみてくれないか?」
「えっ、正気ですか団長!?」
「…駄目だろうか?」
いや駄目じゃ無いけど…っ。
お伺いを立てる様に見てくる団長が、まるで大型犬の様に見える。目隠れてるけど。
いやマジで?おれから言い出したことではあるんだけどさ、それだけ拘束外したいってことか?男のケツを掘ってでも?これで外れる保証もないのに?いや、同じ立場にいないおれには判断出来ない。何より本人がそれでも試したいって言ってるんだから、おれに出来ることはひとつ。
「…駄目じゃ、ないです」
団長と協力して、今のピンチを乗り越えることだけだ。
そう、これはここから出るために必要な儀式。
無事にここから脱出して、アイリーン様に文句言ってやろう。
やり過ぎだぞ、と。
「やりましょう、団長!」
「よ、よろしく頼む…」
こうして、おれと団長の脱出作戦が開始されたのだった。
何度も詰まるおれの話を急かす事なく最後まで聞いてくれてマジでいい人。
「なるほど、つまり私はマシロ殿の実験体ということか」
「本当に申し訳ございません…」
ベッドに土下座したまま自分の自己中さに頭を上げられない。
「まあ褒められたことでは無いが、アイリーン様が誘導したようなものだしそれほどまでに追い詰められていたのも仕方がない。冷静な状態じゃなかったのも何となく感じていた。…てっきり私の想いに応えてくれたものだと」
「え?」
「いや、何でもない。しかし些か無謀だぞ。私以外の者だったら今頃取り返しのつかない事態になっていた」
「おっしゃる通りです…」
「もっと自分の身体を大事にしなさい」
「お父さん…っ!」
「お、お父さんはやめなさい…っ!」
そんな歳では…いや、大丈夫なはず…。と落ち込んでいる団長を今度はおれが慰める。
すみません、つい出来心で。
「…まあ、事情も分かったことだ。取り敢えず拘束を解いてくれないか?」
「はい!喜んで!」
急いで団長の後ろに回り目隠しをしている布を取ろうと…ん?
手の拘束をしている縄を見るも…あれ?
布や縄を弄るだけで一向にほどかないおれに団長が声を掛ける。
「どうかしたか?」
「あの…それが…」
おれは混乱した。だってどっちにも無いのだ。
「団長、結び目が…ありません」
「何…?、っ!なるほどそうか、やられたな…」
え?え?やられたって何が?これどうやって外したらいいの?
「恐らくそれは条件付けの魔具だ」
「条件付けの魔具?」
「主にスパイなどの尋問に使う魔具なんだが、拘束魔法が掛けられていてその時の開放条件を満たすと自然と外れる仕組みなんだ」
「開放条件…?じゃあ、自力で外せないんですか?」
「カール殿ほどの魔法に精通している者なら可能だろうが、生憎私は魔力こそあれ魔法は苦手なんだ」
「なんてこった」
おれは魔力すらないから論外だし、そうだ!
「おれ!アイリーン様に言って外して貰うよう頼んできます!」
ベッドから飛び降りてドアノブを捻って押す。が、なぜかびくともしない。
何度も何度もガチャガチャしていると音で気が付いたのか団長が声を掛けてくる。
「防音魔法は気が付いたが、まさか閉じ込められていたとは…。好き嫌いせず魔法も訓練しないと駄目だな」
私もまだまだだ、何て悠長な言葉に余裕を感じる。さすが歴戦の騎士。
「えーっ、じゃあどうします?出られないんじゃ、ずっとこのまま…」
「方法が全くないわけじゃない。言っただろう、これは条件付けの魔具。その条件さえ満たせば外れる」
条件か。
「付けられていそうな条件に心当たりは無いか?」
「そんないきなり聞かれても…あ」
え?もしや、いや、まさか。でもこれってアイリーン様が考えただろうし、そもそもその為に目隠しと手まで拘束したんだろうし…。いや、でもな…。
「心当たりがありそうだな」
「えっ、でも多分違うと思います!いや、絶対ちが…っ」
「違ったらまた別のものを試せばいい」
うぅ…いや、でも拘束されてるのは団長でおれのせいでこんな事になってるんだからおれに拒否権ないか…。でもなーこれじゃなかった時が悲惨過ぎるしなー…。
なかなか言い出さないおれを、言ってみろと促す団長に根負けして恐る恐る口にする。
「あのー、そもそも団長が拘束されてるのってー、おれが団長を襲いやすいように、だと思うんですー」
「そうだろうな」
「それでー、その…。アイリーン様の言う襲うって言うのが、あのー、ごにょごにょ…」
「ん?すまない、よく聞こえなかった」
「だから、あの、中にぃごにょごにょ…」
「マシロ殿、もっとはっきり言ってくれないか。間違っててもいいと言っただろう?」
ゔぅ~~~っ
「…だからぁ!おれの尻の中に団長の精液出してもらうまでなんですーっ!」
言った!言っちゃった!アイリーンこのやろう!
顔がカーッと熱くなるのがわかる。今なら顔面でお湯沸かせるよ…っ!!
まるで時が止まってしまったかのような沈黙に、ちらっと団長を見ると微動だにしてない。やべ、確実に引かれてるぞこれ。
だってさっき身体を大事にしろって言われたばっかりなのに、それしないと外れないし出られないなんて…。き、気まずい。
「あ、やっぱ違うかも…」
「マシロ殿はそのつもりで私にキスしてきたのか?」
「へぇ?」
「元々私とそこまでするつもりだった、で合っているか?」
「えぇ?あ、まあ…はい」
「そうか、………。」
「だ、団長…?」
再び黙り込んでしまった団長にドギマギする。
やっぱり自分が具体的に何をされそうになっていたのか聞いてショック受けてるのかな…。
そりゃこんだけ魔力持ちの男前でしかも騎士団長。
数多の女性から言い寄られることはあっても、こんなちんちくりんの魔力なし男にちんこ狙われたことなんて無かっただろう。
おれならトラウマものだ。
「おれ、窓から出られるかみて…」
「マシロ殿」
びくぅっ!!
低く平坦な声で名前を呼ばれた。
「な、なんでしょう」
「…試してみよう」
「た、試す、とは?」
「先ほどの条件。マシロ殿が嫌でなければ、試してみてくれないか?」
「えっ、正気ですか団長!?」
「…駄目だろうか?」
いや駄目じゃ無いけど…っ。
お伺いを立てる様に見てくる団長が、まるで大型犬の様に見える。目隠れてるけど。
いやマジで?おれから言い出したことではあるんだけどさ、それだけ拘束外したいってことか?男のケツを掘ってでも?これで外れる保証もないのに?いや、同じ立場にいないおれには判断出来ない。何より本人がそれでも試したいって言ってるんだから、おれに出来ることはひとつ。
「…駄目じゃ、ないです」
団長と協力して、今のピンチを乗り越えることだけだ。
そう、これはここから出るために必要な儀式。
無事にここから脱出して、アイリーン様に文句言ってやろう。
やり過ぎだぞ、と。
「やりましょう、団長!」
「よ、よろしく頼む…」
こうして、おれと団長の脱出作戦が開始されたのだった。
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